教えて!「中教審の『高校WG』って?」

 中央教育審議会の初等中等教育分科会「個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実に向けた学校教育の在り方に関する特別部会」に設置された「高等学校教育の在り方ワーキンググループ(WG)」が11月14日、初会合を開催しました。12月1日には、早くも第2回会合が予定されています。今後、何が話し合われるのでしょうか。

「中教審の『高校WG』って?」

 特別部会で示された高校WGの「主な検討事項」は、前回の本欄で紹介したところです。初会合では、これに加えて ①高校の存在意義とは何か。高校教育で必要な「共通性の確保」とは何で、どのような「多様性への対応」が必要か ②共通性の確保と多様性への対応について、高校教育を取り巻く状況を踏まえ、どのような課題があり、どのように対応していくべきか ③その他、高校教育のあるべき姿・現状の課題・講ずべき対応策等について――という「論点」も示されました。

 このうち「高校教育を取り巻く状況」には、▽産業構造や社会システムの「非連続的」とも言えるほどの急激な変化 ▽選挙権年齢や成年年齢の18歳への引き下げ ▽義務教育段階の不登校経験を有する生徒の増大、少子化の進行等――があると説明しています。

 「共通性と多様性」は、高校の新学習指導要領の大きな改訂ポイントだったはずです。これについてWGの主査に就いた荒瀬克己部会長(初中分科会長)は冒頭発言で「高校は高校生に対してどういう場所なのか、しっかり考えないといけない。今や共通性をどう担保するのかが非常に難しくなってきている。成年年齢の引き下げで『大きな子ども』から『小さな大人』を育てていくという意識の変革と、どういった学びを準備するかを、しっかりと考えていかなければならない」との考えを示しました。「非連続的」な変化の中で、共通性とは何かが改めて問われることになりそうです。

 先の論点で、共通性と多様性に関して「平成26〈2014〉年の中央教育審議会・初等中等教育分科会・高等学校教育部会の審議まとめ
での整理を踏まえ、強調すべき点・付け加えるべき点等」がないかどうかの検討を求めていることも注目されます。ここでいう高校教育部会は、民主連立政権の下で始まった高校授業料無償化措置を契機として11年11月、高校の在り方そのものを問い直すものとして設置され、自公政権に戻った後に審議まとめが出されました。そこでは高校教育の「コア」を構成する資質・能力として、従来の「確かな学力」「豊かな心」「健やかな体」はもちろん、「社会・職業への円滑な移行に必要な力・市民性」も位置付けています。新指導要領の基になった中教審答申(16年12月)でも、共通性については同部会の審議まとめを踏まえると注記していました。

 今回のWGでも、このコア論議が「共通性の議論の土台となる」(文部科学省事務局)といいます。その上で、社会の非連続的な変化を受けたキャリア教育の在り方や、成年年齢引き下げに伴う主権者教育=市民性(シチズンシップ)教育が問い直されることになるわけです。まさに高校の在り方を、根本的に検討することにつながるでしょう。

 文科省事務局は、高校WGにも、第11期中教審が2年間の任期を迎える23年2月をめどに論点整理を行うよう要請しました。義務教育も含めた学校制度改革の骨格は、ハイスピードで固まっていくことが予想されます。それも踏まえて第12期中教審の下で、指導要領の「次期改訂」(高校は2032年度入学生から全面実施の見込み)に向けた検討が始まるとみられます。

 ちなみに12月1日は「少子化が加速する地域における高校教育の在り方について」、同12日は「全日制・定時制・通信制の望ましい在り方について」をテーマとする予定です。高校WGの動向に、目が離せそうにありません。



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【profile】
渡辺敦司(わたなべ・あつし)●1964年北海道生まれ。1990年横浜国立大学教育学部教育学科卒業。同年日本教育新聞社入社、編集局記者として文部省、進路指導・高校教育改革など担当。98年よりフリーの教育ジャーナリスト。教育専門誌を中心に、教育行政から実践まで幅広く取材・執筆。近刊に『学習指導要領「次期改訂」をどうする―検証 教育課程改革―』(ジダイ社)。
教育ジャーナリスト渡辺敦司の一人社説 http://ejwatanabe.cocolog-nifty.com/blog/