教えて!「中教審『学校教育特別部会』のWGって?」

 中央教育審議会の初等中等教育分科会「個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実に向けた学校教育の在り方に関する特別部会」が10月3日、約8カ月ぶりに第2回会合を開催し、「義務教育」と「高等学校教育」の在り方という二つのワーキンググループ(作業部会、WG)の設置を決めました。高校WGはまだですが、義務教育の在り方WGは10月17日に初会合が開催されています。WG、さらには今後の特別部会は、何を狙っているのでしょうか。

「教えて!中教審『学校教育特別部会』のWGって?」

 特別部会は2月に初会合を開催し、「教科書・教材・ソフトウェアの在り方WG」の設置を決めて以降は休眠状態に入っていました。その間、教科書WGは5回の会合を重ね、特別部会の第2回会合に中間報告(論点整理)を提出しています。

 その教科書WGは、特別部会全体にとっては手始めのようなものかもしれません。GIGAスクール構想の実現により情報通信技術(ICT)が教室で「普段使い」された先の、まさに「学校教育の在り方」を再検討しようというものだからです。

 そんな意図を明快に示しているのが、中教審自身ではなく、内閣府の総合科学技術・イノベーション会議(CSTI(システィー))が岸田文雄議長(首相)の下で6月に正式決定した「Society 5.0の実現に向けた教育・人材育成に関する政策パッケージ」です。そこでは特別部会を、▽教育課程の在り方の見直し ▽学校の役割、教職員配置や勤務の在り方の見直し ▽子どもの状況に応じた多様な学びの場の確保 ▽教育支出の在り方の検討―と、多岐にわたる政策に関わるものと位置付けています。そもそも特別部会の設置自体が、CSTI教育・人材育成WGの中間まとめ(昨年12月)段階の提起に応じたものでした。

 特別部会で了承された高等学校教育の在り方WGの主な検討事項は、①高校教育の在り方について(「共通性」と「多様性」の観点からの検討) ②高校制度の望ましい在り方について(全日制・定時制・通信制の在り方、少子化が加速する地域における高等学校教育の在り方等) ③「スクールミッション」「スクールポリシー」を体現し、「社会に開かれた教育課程」「探究的な学び」を実現するための校内外の体制について ④文理横断的な教育、産業界と一体となった実践的な教育の推進について ⑤その他―となっています。

 総合的な探究の時間を例に考えてみましょう。現場では高大接続改革を契機に、全国の高校で盛んになったことを実感していることでしょう。生徒の資質・能力の伸長はもとより、進路にも好影響を与えていると手ごたえを感じている学校も少なくないと思います。しかし先生方にとっては、専門教科の学習指導や部活動指導などの上に総合探究の指導が加わって、ますます多忙になったのも実態ではないでしょうか。

 特別部会は、そうした課題を丸ごと解決しようとしていると言えそうです。1人1台端末を活用すれば、全・定・通の課程や、遠隔授業を含めた学校の垣根も超えた学習が当たり前になるかもしれません。探究学習には、地域や企業などの協力も欠かせません。一方で、それだけ指導する教員にも手がかかるのは確かです。公立高校の教職員定数改善計画は長らく策定されていませんが、総合探究も含めて新たな算定基準を検討する道筋さえ想定されます。生徒減による統廃合が進む中、地域に高校を残す方向につながる可能性も秘めています。

 そうした学校や教室の変化を、「次期学習指導要領改訂」(CSTI政策パッケージ)にも反映することが想定されています。とはいえ高校「新学習指導要領」の全面実施は今年度入学生から始まったばかりですし、特別部会でも教育課程の見直しに関する本格的な議論はまだ出ていません。一方で、義務教育の在り方WGでは文部科学省事務局から、来年2月をめどに論点整理をまとめるよう要請がありました。おそらく高等学校教育の在り方WGも同様の扱いになるでしょうから、その後に教育課程の論議も本格化するとみられます。今後の高校や次期改訂がどうなるか、現場も無関心ではいられません。
 


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【profile】
渡辺敦司(わたなべ・あつし)●1964年北海道生まれ。1990年横浜国立大学教育学部教育学科卒業。同年日本教育新聞社入社、編集局記者として文部省、進路指導・高校教育改革など担当。98年よりフリーの教育ジャーナリスト。教育専門誌を中心に、教育行政から実践まで幅広く取材・執筆。近刊に『学習指導要領「次期改訂」をどうする―検証 教育課程改革―』(ジダイ社)。
教育ジャーナリスト渡辺敦司の一人社説 http://ejwatanabe.cocolog-nifty.com/blog/

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