教えて!「大学の『再編・統合』はどうなるの?」

 盛山正仁文部科学相が、中央教育審議会に「急速な少子化が進行する中での将来社会を見据えた高等教育の在り方について」を諮問しました。25日には大学分科会も開催され、本格的な審議が始まります。大学の再編・統合を促進すると報じられていますが、本格的な「大学淘汰(とうた)の時代」が来るのでしょうか。地方の高校生にとっては地元の大学に撤退されると、経済的な事情から進学機会を諦めるようなケースが出ないかと心配になりますが…。

 

 主な大学入学年齢である18歳人口は、2018年に120万人を割っており、今後も減少傾向が続くことは確実です。これに対して大学・短大の総数は16~22年度、1110校台を維持し、公私立大学の数はわずかながら増加を続けてきました。一方で日本私立学校振興・共済事業団の23年度調査によると、4年制私立大学の53.3%(前年度比6.0ポイント増)と半数以上が定員割れになりました。24年度以降の募集停止を発表する大学も相次いでいます。

 文部科学省の推計によると、40年の大学入学者数は約51万人(外国人留学生を含む)になる見込みです。22年度の進学者数(約64万人)と比べると約13万人減、規模は8割に縮小する計算です。

 確かに中教審への諮問文では、大学の再編・統合に言及しています。ただし、実際の文章は「高等教育機関の機能強化等の観点からも、設置者の枠を超えた、高等教育機関間の連携、再編・統合の議論は避けることができない状況にあります」となっていることに、注意が必要です。

 この一文は、「今後の高等教育全体の適正な規模を視野に入れた、地域における質の高い高等教育へのアクセス確保の在り方」という審議事項の中に入っているものです。各地域で、国公立という設置者別や、大学・短大・高専・専門学校といった学校種別の枠を超えて連携することで、どの地域に住んでいても一定の高等教育を受けられる機会を維持するための「抜本的な構造改革」を検討するよう求めています。もちろん安易な経営をしてきた大学・短大には早期に撤退を判断してもらわなければなりませんが、ただ自然淘汰に任せればよいとは決して考えていないのです。

 実は18年11月の中教審「グランドデザイン答申」で、そうした方向性が既に示されていました。各地域で官民学を挙げて将来にわたる高等教育の分野と規模の在り方を議論した上で、既存の機関で役割分担して、地域に必要な人材を輩出してもらおう、という考え方です。

 いずれにしても、高等教育機会の流動性が高まることは必至です。まずは短大や専門学校に入学して4年制大学に編入するとか、途中で大学や学部を替えるとかいったことも、当たり前になるかもしれません。高校卒業後「どの上級学校に進学できるか」だけでなく、リスキリング(社会人の学び直し)まで含めたキャリア教育・進路指導が、今まで以上に不可欠となってくるでしょう。

 諮問のあった9月25日の中教審総会では、改めて高大接続や大学入学者選抜の在り方を議論するよう求める意見も出ていました。地域の高等教育の在り方を考えるには、高校関係者もステークホルダー(利害関係者)であることは間違いありません。各校のスクール・ミッション/ポリシーで育成した資質・能力を上級学校でどう伸ばしてもらうのか、そのための「入試接続」はもとより「教育接続」はどうあるべきかを、高校側も意見を積極的に出していく必要があるのではないでしょうか。

参考
【全国版】18歳人口予測、大学・短大・専門学校進学率、地元残留率の動向2022

【profile】
渡辺敦司(わたなべ・あつし)●1964年北海道生まれ。1990年横浜国立大学教育学部教育学科卒業。同年日本教育新聞社入社、編集局記者として文部省、進路指導・高校教育改革など担当。98年よりフリーの教育ジャーナリスト。教育専門誌を中心に、教育行政から実践まで幅広く取材・執筆。近刊に『学習指導要領「次期改訂」をどうする―検証 教育課程改革―』(ジダイ社)。
教育ジャーナリスト渡辺敦司の一人社説 http://ejwatanabe.cocolog-nifty.com/blog/