カレッジマネジメント Vol.195 Nov.-Dec.2015
都市部を目指す大学Ⅱ
リクルートが行う調査データ、国内外の先進事例、人材市場、専門家の解説などにより、「高等教育経営のサポート誌」としてタイムリーなテーマを発信しています。
編集長が語る 特集の見どころ
2010年のカレッジマネジメント163号で行った特集「都市部を目指す大学」には、大学だけでなく、地方自治体や地域活性化を促進する団体・企業からも、多くの反響をいただいた。
あれから5年。163号の表紙を飾った建設中の東京スカイツリー®は、すっかり東京のシンボルとして定着した。キャンパスの都市部への移転・再配置は、2018年以降に急速に進む18歳人口減少フェーズを前に、さらに加速しているように思える。
高度成長を背景とした人口ボーナス期に、多くの大学は拡大路線をとる一方で、工場等制限法の影響もあり、広大な敷地を必要とするキャンパスは郊外を目指すこととなった。しかし、1992年をピークに18歳人口は減少に転じた。2002年に規制改革の一環として、工場等制限法が廃止されると、それを契機に大学が都心部を目指すようになった。キャンパス移転・再配置の目的は、学生募集力の強化であったり、1・2年生と3・4年生で分断されていた教育を一貫させるためのものであったりと様々である。ただ、キャンパス移転・再配置の動向を見ていると一定の傾向があることが分かる。多くの大学は、文系学部を都市型キャンパスに集約する一方、理系学部やスポーツ系、医療系といった資格取得が仕事に直結する学部については郊外型に残している。違う見方をすると、資格取得を要件とせず、学習成果が明確でない文系学部については、交通の便の良い都市型キャンパスで魅力付けをして、来るべき人口減少に向け募集力強化のテコ入れを図るという見方もできる。
前回の特集時は首都圏のマーケットを中心に整理したが、今回は近畿圏、中京圏まで対象エリアを拡げてマーケットの整理を行った。また、今後どのような大学がキャンパス移転を計画しているのかについても、直接大学に確認をして、掲載してもよいという範囲で了承を頂き、取りまとめた。ご協力頂いた大学の皆様、この場を借りて御礼を申し上げたい。
キャンパスの移転・再配置には、莫大な資金が必要であり、時間もかかる。近年では、中期計画の大きな柱の一つであることに間違いはない。しかし、キャンパス移転・再配置をすれば募集力が恒常的に向上するわけではない。キャンパスの移転・再配置を契機に教育の中身をどう変えていくのか、それによってどのような人材を世に送り出すのか、そうした学習成果が明確にならなければ、根本的な解決にはならない。郊外に残ったキャンパスの活用や地域連携の在り方も大きな課題となる。大学マーケットや経営戦略を考えるうえで、5年ぶりのキャンパス移転特集がお役に立てれば幸いである。
特集 都市部を目指す大学Ⅱ
加速する、都市部へのキャンパス再配置
寺裏誠司 リクルート進学総研 客員研究員
事例[1] 拓殖大学
事例[2] 京都学園大学
事例[3] 愛知学院大学
寄稿
国立大学の第3期中期計画に向けて
「ミッションの再定義」を経て、「社会変革のエンジン」へ
吉田光成 文部科学省高等教育局国立大学法人支援課企画官