「通信制高校とは?」①通信制高校の歴史と変遷
- 通信制高校の在籍生徒数は増加を続け、現在では高校生全体のうち9.6%を占めている
- かつて生徒像の中心は勤労若年層や学び直しに取り組む成人であったが、近年では非対面・非同期の学び、個々のペースに合わせた学びが実現しやすい背景もあって、不登校経験者も多く在籍するように
【1】非対面・非同期の学びの広がり
少子化やテクノロジーの進化、そして何より「生きる力」の提唱も背景に、学校教育は従来の画一的な一斉授業から変化しつつあります。教師が生徒に向けて一方的に知識や答えを伝えるのではなく、教師は問いや考えるきっかけを投げかけ生徒は自ら考え、選択し、学んでいく――そんな学びのあり方が広がりを見せています。
学びへの、参加の仕方も多様化しています。物理的にその場にいなくともオンラインを通して参加する(非対面)、児童生徒のペースによって学びのタイミングが異なる・教師がリアルタイムで指導するばかりではない(非同期)、といったケースも少なくありません。例えば通信制高校で行われる学びは非対面・非同期の要素を多く内包しています。
その通信制高校ですが、在籍生徒数は増加の一途をたどり、2025年度には30万人を突破し、いまや10人に1人が通信制高校を選択する時代になりました。本稿では、こうした非対面・非同期の学びの先進領域ともいえる通信制高校での取り組みを例に、その学習システムや在籍生徒の実態、また今後の展望を見据えたカテゴライズの提案を行うことを目指します。
まずはその第一弾として、「通信制高校の歴史と変遷」を取り上げます。
【2】通信制高校の歴史的経緯
通信制高校というものを生徒や保護者の目線で語れば、毎日は登校する必要がなく(教科にもよるがスクーリングは年に数回)、オンラインツールも活用しながら自宅で取り組んだレポート(各単元に合わせた問題プリント)を提出し、学期ごとに学校で行われるテスト(単位認定試験)をクリアすれば単位を積み重ね卒業することができる学校、ということになるでしょう。しかし、通信制高校(正式名称は高等学校通信制課程)が成り立ち現在に至るまでには、それぞれの時代に込められた意図と変遷があります。
通信制高校は戦後まもなく、「教育の機会均等」を実現するための機関として発足しましたが、当初の実態は通信教育であって学校ではなく、高卒資格を得ることもできないものでした。受講生の多くは農家や商工業の子どもで、家事を手伝いながら学ぶ若者たちでした。その後の法改正等により、1960年過ぎまでには学習指導要領の適用や高卒資格の取得が実現し、現在の通信制高校に近い基盤が構築され、高等学校は全日制・定時制・通信制の3種に分かれる体制となったのです。
1940年代、戦後間もなく
- 「教育の機会均等」を実現するための機関として発足
- 「学校」ではなく、高卒資格を得ることもできず
1960年過ぎまでには…
- 学習指導要領の適用や高卒資格の取得が実現
- 現在の通信制高校に近い基盤が構築
- 高等学校は全日制・定時制・通信制の3種体制に
上記のように当初は勤労若年層を主な生徒としていた通信制高校ですが、近年では働きながら学ぶ生徒の割合が減少し、生徒像は多様化しています。特に、中学校までの期間に、学力不振や不登校といった、学校から遠ざかる経験を持つ生徒が増加したのです。なお、いわゆる“積極的不登校”(全日制高校に通学することもできる生徒があえて通信制高校に在籍することを選択するケース)の存在にも注目が集まりつつあります。
生徒たちのバックグラウンド
- かつて:働きながら通うケースが多い
(勤労する若年層、成人してからの学び直し 等) - 近年:学校から遠ざかった経験をもつケースが多い
(不登校、学力不振 等) - ここ最近は、全日制高校に通学することもできる生徒があえて通信制高校に在籍することを選択するケースも(現在または将来の「働く」を見据える等の、いわば“積極的不登校”)
【3】現在の学校数や生徒数
最新の統計によれば現在、国内に通信制高校及び通信制課程を置く高等学校は323校存在し、およそ30.5万人の生徒が在籍しています。高校生等の総数がおよそ317万人であることを考えれば、9.6%程度の高校生が通信制高校を選択しているといえます。なお、中学校卒業時に進学先として通信制高校を選ぶ生徒の割合は5%程度ともいわれますので、途中での転校や入学も相応に多いことがわかります。
生徒についての統計情報
- 通信制高校生徒数は30.5万人(全体317万人に占める割合は約9.6%)
(公立が6.2万人、私立(株式会社立含む)が24.3万人)
(生徒数は直近10年でおよそ1.7倍に(全体が▲12%減のなか))
- 通信制高校の数は323校(全国高等学校数4770に占める割合は約7%)
- 公立が75%、私立(株式会社立含む)が25%
- 公立は狭域多く、私立は広域多い
学校についての統計情報
ひとくちに通信制高校といっても設立母体や受け入れ地域は様々であり、設立母体には「公立」「私立(学校法人)」「私立(株式会社)」が、受け入れ地域には「狭域(1or2都道府県の生徒のみを受け入れ)」「広域(3都道府県以上の生徒を受け入れ)」が、それぞれ存在します。報道等でよく耳にするのは私立(学校法人)の「広域通信制」高校の話題が多いかもしれません。しかし通信制高校は私立広域通信制がすべてでない、ということは意識しておきたいところです。
本稿では、通信制高校の歴史と変遷について取り上げました。次回は、通信制高校に在籍する生徒の実像について取り上げることとします。
(参考文献)
手島 純 編著『改訂新版 通信制高校のすべて』
文部科学省 令和7年度通信制高等学校実態調査
文部科学省 令和7年度学校基本調査
取材・文/研究員 森崎 晃(2026/11/10)
