高大接続をどう進化させていくのか、ポスト『知の総和答申』を語り合う(カレッジマネジメント Vol.250 Oct.-Dec.2026)
小誌リクルート『カレッジマネジメント』は、本号が250号となる。創刊は1983年であり、44年目を迎えている。これまでご支援・ご協力いただいた皆様には、感謝の意をお伝えしたい。私は「大学経営はタンカーの舵取りのようなもの」だと考えている。急に舵を切ることは難しいが、舵を切るのが遅れてしまうと大きく航路を外れてしまうからである。だからこそ、大学や教育業界の変化にとどまらず、産学官言のできるだけ多くの関係者から情報収集し、産業構造、就業構造等、社会環境の変化を予測することが重要だと考えている。
小誌が創刊された1983年当時は、18歳人口は増加の一途をたどり、大学や学部を設置すれば学生が集まるのが当たり前の時代だった。1992年に18歳人口のピークを迎え、人口減少期に入っても、進学率の上昇により大学が淘汰されることはなく、大学数は増加してきた。そこはかとない危機感はあるものの、それがリアルなものとして実感されていたかというと、一昔前のレガシーもあり「大学は大丈夫」という気持ちがどこかにあったように思われる。ただ、小誌で紹介してきた事例を振り返ると、この期間に危機をリアルなものとして捉えてビジョンを定め、全学を挙げて改革を推進してきた大学が、現状の優位性を保てているように思う。
そして現在、これまで誰も経験したことのない人口減少社会を目前に控える一方で、上昇してきた大学進学率は既に6割に達している。AI等のテクノロジーの進展が産業構造・就業構造を劇的に変えようとしており、グローバル競争が激しくなる中、優秀な学生の国際的な争奪戦が想定されている。国内では、都市と地方の格差をどうしていくのかという難題にも直面している。高等教育機関は、業界内にとどまることなく、社会と連携しながら、こうした課題に教育・研究両面で対応していく必要がある。まさに、経営に課せられた課題は大きい。
このような大きな転換期を迎えた高等教育をどうしていったらよいのか、そう考えを巡らせていた時、筑波大学の永田学長から一本のお電話を頂いた。それは「知の総和答申の次を考えたい」というものだった。2010年代にスタートした高大接続改革を、将来を見据えてどのようにバージョンアップしていくのか、そのために入学者選抜はもう一段の改革が必要ではないか。そうした課題認識のもと、250号記念座談会として、永田学長と共に本座談会を起案していただいた東京工業大学(現東京科学大学)の三島元学長、そして2050年には全ての入学者を一般選抜以外で選抜すると宣言されている東北大学の冨永総長による鼎談が実現した。こうした問題提起を受けて、高大接続の送り出し側である高校の課題は何か、中高の接続はどうなのか、大学に対する要望は何かについて、カウンターパートとして座談会を実施した。それぞれの立場もありながら、未来志向での危機感が伝わってくる内容になっていると思う。
2040年には少子化がさらに進み、景気の状況に関係なく、働き手が足りなくなる「労働供給制約社会」が到来する。人口が減少する中でも、一人ひとりの価値を高めていくことで、国力を維持・向上させていこう—これが『知の総和答申』の考え方である。では、一人ひとりの質をどのように高めていったらよいのか、これがポスト『知の総和答申』の本質的な課題である。高校・大学・社会はこれまで「受験」「就活」で分断され、それらはその時々を“乗り切る”ものであり、接続という点ではコミュニケーションがうまく取れていなかったように思う。高校・大学・社会を分断することなく、質を高めていくためにはどうしたらよいのか。250号記念号の特集はそうした少し大きなテーマを掲げての座談会である。ぜひ、ご一読いただきたい。
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リクルート進学総研所長・カレッジマネジメント編集長
小林 浩
