カレッジマネジメント Vol.183  Nov.-Dec.2013

カレッジマネジメント Vol.183 Nov.-Dec.2013

寮内留学

リクルートが行う調査データ、国内外の先進事例、人材市場、専門家の解説などにより、「大学経営のサポート誌」としてタイムリーなテーマを発信しています。

編集長が語る 特集の見どころ

 リクルートホールディングスでは、毎年各領域のトレンドを予測する「トレンド発表会」を開催しています。2013年1月、進学領域のトレンドキーワードとして私が発表したのが「グローバル人材育成の場としての『寮内留学』」でした。その後、様々なメディアで取り上げていただきました。では、なぜ『寮内留学』が注目を集めたのでしょうか。

 グローバル化が叫ばれていますが、日本の若者の内向き志向は依然強く、海外へ留学する日本人学生の数は2004年をピークに減少の一途をたどっています。リクルート進学総研が大学入学直前の学生に聞いた調査でも、「留学意向なし」が「留学意向あり」を上回る結果となっています。では、なぜ若者は留学したいと思わないのでしょうか。調査からは、留学に対する3つの大きなハードルがあることがわかります。それは、(1)留学にかかる費用が高いという「経済的側面」、(2)英語でコミュニケーションとれるか不安という「語学に対する苦手意識」、(3)海外は治安が悪く危険、一人で生活するのが不安という「海外生活への不安」です。

 これらを解決するためには、これらのハードルを下げる必要があります。まずは留学にかかる奨学金制度の充実。次に英語教育の充実、「読む」「書く」だけではなく、「聞く」「話す」といった外国人とコミュニケーションできるスキルが身につく学習方法に変えていく必要があります。そして、海外生活への不安は、異文化理解の不足によるところも大きく、外国人との接点を増やし、その国の歴史や文化的背景を理解する必要があるでしょう。このような施策は、政府や大学が積極的に取り組む必要があるでしょう。

 それでも、いきなり海外に出るというのは、今どきの若者には高いハードルかもしれません。そこで、まずは外国人留学生と寮という場で一緒に過ごし、日常生活を送るなかから理解・共感を得、コミュニケーションの仕方を学び、海外への不安を興味へと変えていく。そうした『寮内留学』が、留学前のステップとしてグローバル人材育成の一つの可能性となるのではと考えています。大学全体を国際化するというのは、非常に難しいと思います。しかし、寮を国際交流の場にすることは、可能だと思います。

 最近、取材等で伺った大学で、国際学生寮を検討中というお話を伺ったり、相談を受ける機会が増えてきました。そこで、今回の特集では、増加している国際学生寮について、できるだけ全国の状況を整理することに努めました。実は、まだ公表はできないが計画中、という大学も少なくありませんでした。寮の価値が見直されています。もう一度、寮を経営戦略の一環として見直してみる時期に来ているのではないでしょうか。