カレッジマネジメント Vol.218 Sep.-Oct. 2019
進学ブランド力調査2019
編集長・小林浩が語る 特集の見どころ
定員厳格化が志願度ランキングにも影響
分野別ランキングで、大学の強みを見える化
進学ブランド力調査は、2008年に初めてリリースして以来、12回目を迎えた。本調査は、高校3年生になったばかりの大学進学希望者に、大学の知名度、興味度、志願度を聞くとともに、各大学のイメージを聞くものである。使用するデータは、指標化や係数化、総合化等をすることなく、高校生の回答をそのまま示した素のデータである。
また、進学校や一般入試受験者層だけでなく、大学進学希望者全般に聞いているため、ユニバーサル化や社会環境の変化が如実に表れることも本調査の興味深い点である。
調査結果を見ると、いくつか今年の特徴が見えてくる。まず、一つは私学志向が強まっていることである。全体的に関東は私学志向、東海は国公立志向、関西は景気等の影響によって変動する傾向があるが、今年は全エリアで私学志向が高まった。
二つ目は、大手大学の定員厳格化の影響である。各エリアの志願度ランキングを見ると、上位層に大きな変動は見られないものの、10位以降を見ると中堅大学が多くランキングしていることが分かる。文部科学省による定員厳格化政策が進むなかで、大手の総合大学中心に難易度が高まっており、中堅大学の志願度が上昇する結果となっていることが考えられる。
三つ目は、中長期の改革や広報戦略が、徐々にだが着実に高校生の大学の志願度に影響を与えているということである。大学改革は、メディア等に取り上げられることも多い。当然、高校生からも注目される。しかし、単年度の改革のみでは、話題づくりに終わりがちである。中長期のビジョンや理念に基づき、改革を継続的に行っているところが、結局は中長期的に志願度やイメージの向上等、ブランド力を高めていると考えられる。
また、今年は初めて学問分野別の志願度ランキングのリリースを行った。以前は、“この分野といえばこの大学”といった、いわゆる「看板学部」が存在した。しかし、偏差値による序列化や、予備校やメディアによる大学のグルーピングによって、学部の強みのようなものが失われてきたように思う。企業でも、企業全体を売り出す「コーポレート・ブランド戦略」と、特定商品に注力する「プロダクト・ブランド戦略」がある。例えば、前者はSONYやAppleであり、後者はウォークマン®やiPhone®である。大学の学部・学科は、企業でいえば商品ラインアップに当たるものであり、マーケティングとしては、このような考え方ができるのではないか。
全体の志願度は、定員規模の大きい総合大学が上位に来る傾向が強い。しかし、分野別のランキングでは、小規模であっても、その分野で人気を博する「カテゴリーキラー」が上位にランクインしており、興味深い結果となった。分野別ランキングを見ると、高校生から見てその分野が存在するかどうか、分かりやすく“見える化”されているかが最大のポイントであることが分かる。例えば、学部名称として分野名が入っており、パッと見て認識しやすい状態にあるかといったことである。いくら学科、コース、専攻でその分野が存在していてもHP等何回もクリックしないと分からないようでは、イマドキの高校生には浸透しないのである。
ブランド力というのは、「顧客が頭の中に浮かべるイメージの総和」であると言われている。各大学は、様々な形でメッセージを発信しているが、一体どれくらい高校生に伝わっているのか。そういった視点でこの調査結果をご覧いただきたい。
リクルート進学総研所長・リクルート『カレッジマネジメント』編集長 小林 浩
<特集>進学ブランド力調査2019
CASE 1 青山学院大学
CASE 2 関西大学
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CASE 3 安田女子大学
編集長の視点
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