With コロナ時代の推薦・AO入試にどう向き合うか
藤岡慎二(産業能率大学経営学部教授 兼(株)Prima Pinguino 代表)
●はじめに
今回は、単に推薦・AO入試対策についてのみならず、With コロナ時代においての新しい生活様式(ニューノーマル)における推薦・AO入試にどう向き合うかについて言及します。ご存知の通り、新型コロナウィルスによる感染症が日本中に拡大しました。最近は収束の兆しが見え始めていますが、第2波、第3波がいつくるか、戦々恐々としています。
教育現場では2月末からの休校による指導の滞り、様々な資格試験、そしてスポーツをはじめとしたイベントの中止などPRできる実績を積めない状況が続いています。
このような状況では、推薦・AO入試には臨めないと思いこむ生徒たちが散見されます。更に生徒たちを推薦・AO入試に向かわせることができないと思ってしまう先生方も多いと思います。
しかし、このコロナ禍の中でも一人でも多くの生徒たちに可能性の扉を開き、そして先生方のお手伝いができればと思い、これまで数多くの推薦・AO入試指導を行い、大学でも推薦・AO入試に向き合ってきた立場から、3年ぶりに筆を取りました。
※この記事では推薦・AO入試という言葉を使っています。ご存知の通り、今後は、「AO入試」→「総合型選抜」、「推薦入試」→「学校推薦型選抜」に変わりますが、まだ新しい言葉ゆえに馴染みがない先生方や保護者・生徒もいらっしゃるだろうということで、本稿では推薦・AO入試を使おうと思います。
●コロナ禍で入試において何が起きるのか?
コロナ禍をはじめとした事態が大学入試、特に推薦・AO入試において如何なる影響を及ぼすのか、改めて考えてみましょう。主に3点あると思います。①大会、コンクール、展覧会の延期・中止により出願書類や志望理由書、面接などでPRする実績を積むことができない。
推薦・AO 入試における志望理由書を含む出願書類や面接では自身のPRが必要となってきます。(一部は大会、コンクール、展覧会での受賞が出願条件になっています。)しかし、中止によりPRに必要な実績を積むことができず、入試において不利になってしまう事態になると生徒や保護者、先生方は危惧しています。今まで晴れ舞台を目指してきた高校生や支援されてきた保護者、先生方の無念の気持ちは想像するに耐えません。私自身もラグビー部でしたので、落胆する気持ちは痛いほど理解できます。
②休校期間中に生徒を指導できず、対策が遅れる。
3月から5月末までの休校期間中に生徒とコミュニケーションが取れず指導ができなかったことで 、対策において遅れを取っていると危惧している学校現場は多いのではないでしょうか。オンラインという手段もありますが、学校や家庭のICT環境未整備により指導もままならない現状があります。また第2波、第3波における入試日程の不透明さも心配されるでしょう。全国的に収束しつつあるコロナ禍ですが、局所的には第2波と思しき感染拡大もあり依然として、予断を許しません。今後の指導スケジュールにも影響するでしょう。
③地域連携や生徒たちの主体的な活動などができず、学びを深められない。
「主体的・対話的で深い学び」を総合的な探究の時間や地域連携活動などで実施している学校は多くあると思います。しかし、コロナ禍で地域や学校外での主体的な活動はおろか、教室内でのグループワークやディスカッションなどもできない事態になっています。これでは学びを深めることができないと心配する先生方の姿が散見されます。
この短期集中連載では、このような事態に如何に対応するべきなのか、対策や事例も含めてご紹介できればと思います。まずは、①大会、コンクール、展覧会の延期・中止により実績を積んだり、成績を出せない問題について考えます。
→【第1回 大会、コンクール、展覧会などでの実績・成績は必須なのか?】
→【第2回 努力のプロセス、その言語化とは】
→【第3回 志望理由書に必要な「5つの観点」】
【profile】
藤岡慎二(ふじおか・しんじ)●産業能率大学経営学部教授 兼(株)Prima Pinguino 代表。一般入試・AO入試双方の受験を経験し、慶應義塾大学SFC大学院を修了。入試経験を活かし2003年から推薦・AO入試対策を担当。17年間、様々な教材や指導メソッドを開発し、塾・予備校をはじめ全国の高校や都道府県の教育委員会で高校の先生方向けに研修や講演などを実施。2017年からは大学教員として評価する立場から推薦・AO入試に関わる。入試対策として指導する立場と大学側として評価する立場、2つの立場から大学入試のあり方や高校時代の過ごし方について研究・発信をしている。