カレッジマネジメント Vol.187  Jul.-Aug.2014

カレッジマネジメント Vol.187 Jul.-Aug.2014

インターンシップの教育効果

リクルートが行う調査データ、国内外の先進事例、人材市場、専門家の解説などにより、「大学経営のサポート誌」としてタイムリーなテーマを発信しています。

編集長が語る 特集の見どころ

 昨年の本誌180号特集「“学ぶ”と“働く”をつなぐ」では、編集部が想像していた以上の大きな反響をいただいた。厚生労働省の調査では、2010年3月に大学を卒業して就職した若者のうち、3人に1人(31.3%)が3年以内に退職している。

このなかには、就職後の仕事や組織とのミスマッチが原因で退職している若者が少なくないと考えられる。

 現在、就職活動をしている2015年卒の大卒求人倍率は、1.61と前年(1.28)を大きく上回り、景気の回復を受けて大学生の就職環境は改善してきている(P38参照)。景気回復の一方で、2016年卒からは、就職活動のスケジュールが後ろ倒しになることが決まっている。大学の教育研究の充実という点では、良い効果が期待できるものの、こと就職活動という点においては、短期決戦によるミスマッチの増加が危惧されている。多くの学生は、就職活動で初めて働くことを本気で考え、自分の適性と向き合うことになるからだ。

 そのため、ミスマッチの解消には、若年時から社会との接点を増やし、働くことのイメージを醸成することが重要である。欧米では、採用の仕組みが異なっているので単純な比較はできないが、インターンシップやコーオプ教育といった取り組みが盛んである。そこで、日本でも“学ぶ”と“働く”をつなぐ産学連携教育としてのインターンシップが、近年注目されている。大学教育に長期のインターシップを組み込み、成果を挙げる大学も出てきている。

 今回の特集は、長期のインターンシップに焦点を当て、その教育効果について考えてみた。長期のインターンシップに取り組んだ大学の課題とは何だったのか、インターンシップ先との連携や調整はどうだったのか、そして何よりその教育効果はどうだったのか。インターンシップは大学だけの取り組みでは成立しない。だからこそ、大学の戦略性、企画力、調整力が試される。また、日本でも学事暦を見直し、クオーター制を導入する大学が増えている。そうしたカリキュラムの柔軟性やギャップイヤーなどの取り組みは、長期インターンシップの導入には追い風となるだろう。インターンシップやPBLなど、社会との接点が増えることによって、学生の社会性が育まれ、学ぶ意欲の醸成や働く意欲の醸成が進むことを期待したい。