2025年の大学(カレッジマネジメント Vol.193 Jul.-Aug.2015)

2012年、本誌30周年記念号(175号)で、リクルートワークス研究所の2020年雇用環境予測に基づいて、『2020年、その時大学は』を特集し、大きな反響を頂いた。

それから3年、今回の特集では、ワークス研究所が2025年の雇用環境予測を行ったのに伴い、その時の社会環境、産業構造の変化に伴い、個人の働き方、そして大学のありようはどう変わるのかを考察してみた。2025年といえば、2020年東京オリンピックが開催された5年後である。景気の変動やグローバル化やICTの進展による社会変化がどのように進んでいるのか、変動要素は多く、予測は難しい。

 しかし、明白なのは、日本では人口減少・少子高齢化が進んでいるということだ。大学のターゲット層となる18歳人口は、いわゆる「2018年問題」以降減少していく。そのため、政府も2013年5月に発表した教育再生実行会議第三次提言「これからの大学教育等の在り方について」の中で、18歳人口が減少する前の平成29年(2017年)までを“大学改革集中実行期間” として、矢継ぎ早に改革を進めている。

 日本だけでなく、世界も大きく動いている。世界の留学生の総数は現在の450万人から、2025年には800万人にまで増加し、その多くはアジアで流動すると予測されている。日本の学生は、いとも簡単に国境を越えていく世界の若者達とどのように伍していくのか。また、「2011年にアメリカの小学校に入学した子どもたちの65%は大学卒業後、今は存在していない職業に就く」(キャシー・デビッドソン ニューヨーク市立大学大学院センター教授)との予測もある。グローバル化やICT化、産業構造の変化により、求められる人材像も変化してくる。

 そうしたことから、2014年12月には、高校と大学、それをつなぐ入学者選抜を一体的に変えていこうという、「新しい時代にふさわしい高大接続の実現に向けた高校教育、大学教育、大学入学者選抜の一体的改革について」が答申された。翌年1月には高大接続改革プランが発表され、「大臣が代わっても、政権が代わっても推進する」(下村文部科学大臣)という強い意思が示されている。まさに、今回の編集を行っている間にも、産業競争力会議において、安倍首相が職業教育を行う新たな高等教育機関を2019年を目途に創設することを発表した。

 未来は見えないし、正解もない。だからこそ、漫然と過ごすのではなく、知恵を働かせて主体的に未来を選択していくことが必要である。そうした未来への選択に向けて、この特集が少しでもお役に立てれば幸甚である。

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リクルート進学総研所長・カレッジマネジメント編集長

小林 浩

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