IR室の設置と今後の展望について/東洋大学
東洋大学は、11学部44学科、10研究科29専攻、学生数約3万人の大規模総合大学である。平成24年の創立125周年を機に、東洋大学は、グローバル化した時代にふさわしい教育活動の展開を目指し、建学の理念に関わる「哲学教育」、時代の要請に応える「国際化」、学生一人ひとりの真の自己実現を支える「キャリア教育」を3つの柱に据え、それらの一層の充実・強化をはかる教育改革に取り組んでいる。今後も、東洋大学が「選ばれる大学」として存続するためには、教育・研究の質、大学の管理運営水準を一層高度化し、PDCAサイクルを再構築し、更なる改革・改善を行う必要がある。大学の現状や各種情報の収集・調査分析・検証、それに基づく大学の政策形成は喫緊の課題であったことから、2013年9月、学長直轄組織として東洋大学IR室が設置された。
東洋大学のIR室は高等教育研究をベースに置き、国内外の高等教育の情報収集と、本学における教育・研究に関する諸情報の収集・分析を行っている。長期的な視野に基づき、教育・学習行動に関するインプット・プロセス・アウトカムを把握し、またこれら収集した情報を体系化し、分析結果を大学のガバナンス・資源配分にフィードバックすることを通じて、教育改善と教育改革につなげることを目標としている。
IR室は、以下の業務を行う。
- 本学における教育・研究に関する学内外の諸情報の収集・分析
- 学生の学修動向・教育の成果等に関する調査の実施及び分析
- 情報の提供による政策形成の支援
- その他、本学の教育・研究活動の活性化に関する事業の企画・推進
これらの業務を遂行するため、学長をIR室長とし、学長の直接的な指示命令系統のもとでIR室が動けるようにしている。また、その下に、教務部長、学生部長、自己点検・評価活動推進委員会委員長、IR室スタッフ等によるIR室運営委員会を組織し、教学執行部がIRの組織をサポートしていく体制を整えている(図)。この体制のもとで、学長室を中心に、大学評価支援室やFD推進支援室と連携しながら、これまで学内のシステムに構築されている入試・教務・学生生活・就職データ等と、各学部や事務局が個別に保有しているデータを、IR室にて体系的・経年的に収集し、特に学生の入学から卒業までの一貫した学修アウトカムの把握に努めていく。
東洋大学のIR室は、単なる提言機関としてではなく、学長直下のもと確実に政策を実行する支援機関として位置づけたことが大きな特徴といえる。具体的な活動は4つのフェーズに分け、第1フェーズでは情報の収集・分析、第2フェーズでは各部局の活動を評価する指標の開発、第3フェーズでは収集データの管理システムの構築、第4フェーズではIR人財養成機関としての大学院構想までをIR室の活動展望として定めている。
(劉 文君 東洋大学IR室 准教授)
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