【TOP INTERVIEW】力強い改革で「次世代研究大学」とD&Iの実現を目指す/立命館大学 学長 仲谷善雄


仲谷善雄

立命館大学 学長 仲谷善雄(なかたに よしお)
1958年生まれ
1981年 大阪大学人間科学部人間科学科 卒業
1981年 三菱電機株式会社入社
1989年 神戸大学 学術博士
1991年 米国スタンフォード大学言語情報研究センター(CSLI)客員研究員
2004年 立命館大学情報理工学部教授
2014年 立命館大学情報理工学部学部長
2018年 立命館大学副学長
2019年 立命館大学学長

「自由と清新」で社会に変革を与える

 本学は京都市に所在し、関西3府県に4つのキャンパス(朱雀、衣笠、びわこ・くさつ、大阪いばらき)を持つ、学生数3万3000人、大学院生3700人の総合大学です。

 西園寺 公望が1869年に開設した私塾「立命館」を創始とし、その精神を継いだ中川小十郎が1900年に設立した京都法政学校が前身で、2025年に創立125周年を迎えます。

 建学の精神「自由と清新」は、本学が自由な心で社会に変革を与える存在であるために、私が常に立ち返る出発点です。2019年に学長に就任し、コロナ禍を経て今年から2期目に入りました。大学では心理学を専攻し、卒業後は三菱電機で人工知能やヒューマンインターフェイスの研究に携わり、2004年に本学の情報理工学部の教員となりました。文理融合人材を自ら体現してきた経験を活かし、アフターコロナの今、本学が準備してきた改革を力強く推進していきます。

R2030が目指す「次世代研究大学」と「創発性人材」

 2020年度に策定した中期計画「学園ビジョンR2030『挑戦をもっと自由に』」では、目指す学園像に「ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)を実現する学園」を掲げました。私はこのD&Iが「建学の精神『自由と清新』のベースとなる一丁目一番地」だと常々言っています。自由と清新の間を媒介するのは多様性です。本学は学生の半分が関西エリア外から来る全国区の大学で、正規留学生2600人がキャンパスで学んでいる、この多様性をまずは一番大事に考えています。女子学生数は西日本で最多です。

 そしてR2030の重要な取り組みとして、①新たな価値を創造する「次世代研究大学」、②イノベーション・創発性人材を生み出す大学を打ち出しました。R2020までの、ピアラーニングで学びに寄り添う「学生の主体的な学びの支援」と「研究力の向上と強化」の延長線上にあり、さらにパワーアップをしたものです。

 ①の「次世代研究大学」では、科研費獲得件数で私大3位グループに位置する総合大学として、社会課題に取り組む文理融合研究チームを育てます。2008年からスタートした立命館グローバル・イノベーション研究機構(R-GIRO)では、開始以来60以上のチームが育ち、センター・オブ・イノベーションプログラム(COI)も獲得しています。

 先進研究拠点形成にむけて、本学の研究を牽引する中核研究者に、年間1000万円の研究環境整備費を含むテイラーメイド支援を行う、立命館先進研究アカデミー(RARA)を昨年立ち上げ、2年間で16人のフェローを選出しました。またリサーチライフサポート室及びD&I推進室の女性研究者支援により、6年間で女性研究者が105人増え、「ダイバーシティ研究環境実現イニシアティブ(特色型)」の事後評価において最高評価となるS評価を獲得しました。

 ②の創発性人材とは、論文にとどまらず、研究を社会実装できる人材です。2019年に立命館・社会起業家支援プラットフォーム(RIMIX)を立ち上げ、起業支援を行うとともに、10億円のファンドを創設して起業支援と投資を行っています。RIMIX事務局を運営するのは学園の総合企画部、起業・事業化推進室であり、総合学園として小学校から起業を意識する人材に育ってほしいという明確なメッセージを持っています。ピッチコンテストの1年目の総長賞は本学院生、2年目は本学学部生、3年目は附属高校の生徒で、3年目からは小学校も参加しています。現役附属高校生の社長が生まれ、新たな形を模索しています。

「次世代研究大学」を支えるタテ・ヨコのつながり

 「次世代研究大学」を実現するために、タテ・ヨコのつながりで研究の場を拡大していきます。タテのつながりとは、学園全体で「次世代探究学園」になることです。附属校の生徒はスーパーサイエンスハイスクール(SSH)やスーパーグローバルハイスクール(SGH)で探究学習に秀でています。国際会議で学会レベルの高度な研究成果を英語で発表できるレベルの子達がリーダーとなって牽引してくれているからこそ、5万人単位の大きさの学園が発展していくことができると考えています。そこで、ワクワクする探究型キャンパスを創るために、附属校からの進学率8割を目標としています。

 入試では、2023年度入試からAI学習システム「atama+」を活用した「学部指定単元AI学習プログラム(UNITE Program)」を導入しました。AIによって個別最適化されたカリキュラムで学部が指定する単元を効率的に学習でき、修得認定試験に合格すれば、AO選抜の出願資格が得られます。学部で学ぶために必要な能力を修得することで、入学者はより高い次元で学びを発展させ、4年間で探究力を養う環境作りができます。本学では、この入試を「修得主義に基づいた未来型の入試」として、今後も拡大していきたいと考えています。

 ヨコのつながりとは、世界の一流大学や研究機関との共同研究の拡大を意味し、R2020の目標「世界ランキング200位台を目指す」を堅持します。オーストラリア国立大学やアメリカン大学との共同プログラムも結びつきを強めるためです。留学生数はスーパーグローバル大学創成支援事業(SGU)の到達目標を達成見込みですが、D&Iの観点からも、今の倍の5000人は超えてほしいと思っています。

OICを「ソーシャルコネクティッド・キャンパス」へ

 本学のキャンパスはそれぞれ役割を持っています。衣笠キャンパスは人文社会系中心のキャンパス、びわこ・くさつキャンパス(BKC)は理工系を中心に文理融合の産学連携を試行するキャンパス、大阪いばらきキャンパス(OIC)はグローバル教養学部を置き、アジアのゲートウェイとしてグローバル化を推進するキャンパスです。

 そして2024年度には、BKCから情報理工学部を、衣笠から映像学部をOICに移転し、次世代の教育研究の下支えとなる情報技術とメディア表現を同じキャンパスに集めます。リアルとオンラインを高度に融合した、これまでとは異なる形で社会とつながりながら、世界の一流大学との共同研究や産学連携を推進する「ソーシャルコネクティッド・キャンパス」を形成します。OICを社会課題解決のために世界へ開かれたオープンな実験場と捉え、大学全体の牽引役に位置づける方針です。

 そして、D&Iと研究の高度化を強力に推進し、2030年には、建学の精神の新たな実現形としての、「次世代研究大学」となっていることを、最後に強調しておきたいと思います。

(文/能地泰代 撮影/米本満穂)


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