【TOP INTERVIEW】「社会での活躍」から逆算する実践的な教育/学校法人ロイヤル学園 理事長 斉藤真治氏


学校法人ロイヤル学園 理事長 斉藤真治氏

学校法人ロイヤル学園 理事長 斉藤真治氏(さいとう しんじ)氏
1977年生まれ。
2015年学校法人ロイヤル学園 理事長 就任。
大阪ベルェベル美容専門学校(2027年4月 大阪ベルェベルビューティ&ブライダル専門学校と合併予定)、
熊本ベルェベル美容専門学校、神戸ベルェベル美容専門学校等の3校を運営。
美容・ブライダル分野を中心とした専門教育に長年携わり、実学重視の教育改革と学校経営の高度化を推進してきた。
時代の産業構造や人材ニーズの変化を的確に捉え、学びの再編や学園改革を主導している。

西日本を拠点に美容・ブライダル業界へ人材を輩出

 ロイヤル学園は、大阪、神戸、熊本に4つの美容専門学校を有し、学生数約2,100人を擁する学校法人です。理美容チェーンの(株)ロイヤルを経営していた創業者が、自社の優秀な人材を育てようと1986年に大阪市に開校したベルェベル美容専門学校が始まりです。校名のベルェベルは、フランス語の造語で「美しく、より美しく」の名の通り、これまで40年の間に美容師、ビューティアドバイザー、エステティシャン、ネイリスト等の美容業界や、ウエディングプランナー、ブライダルスタイリスト等のブライダル業界に人材を輩出してきました。

卒業生の幸せを基準に業界特性にも対峙

 理事長に就任して約11年が経ちますが、就任直後に着手したのが学園理念の再定義です。それまでの「社会貢献」から、分かりやすい言葉で学園内で共有できる理念を作ろうとしました。ロイヤル学園とは何を目指すのか、学内の教職員全員でディスカッションして集めた言葉を整理したのが、現在の学園理念「ロイヤル学園に関わるすべての人へ教育を通じて感動を提供し、社会に貢献する。」です。

 さらに学校長・部課長・主任を対象に学園理念の勉強会を毎月実施しています。目的は組織風土の見直しと教育の質向上です。本学園は美容師出身者の多い組織で、大きな統制下で組織的に従事した方が少ないという業界特性があります。このため上司との関係性が原因で若手教員が離職し、教育の質が上がらないという課題がありました。勉強会を継続して実施することで、声の大きな一部の人の意見に流されそうになった時も、全員が学園理念に立ち戻ることができています。

 本学園の教育の特色とは「卒業生が現在幸せかどうかという基準で全てを決めている」の一言に尽きます。なかでも業界外への転職率を注視し、卒業1年後の離職率調査を毎年実施、公表しています。調査方法は、卒業生サポート課が卒業生全員にヒアリング調査を行い、①卒業して1社目で継続しているか、②離職して美容・ブライダル業界の他社にいるか、③異なる業界にいるか、の3項目に分けて聞いています。

 卒業生が離職している場合は、企業と卒業生の双方に定性調査を行い、企業側に問題があれば法令違反等の是正を求め、是正されなければ学園内の求人票には掲載しません。学生側に問題があるなら、それは教育に問題があるということなので、教育内容を改善するという試みを継続的に行ってきました。そして、7~8年前から関西において美容師の給与額が上がってきて、多店舗展開する企業も増え、職業として美容師を目指す人が増えてきました。

永く活躍できる美容師を育てるための実践教育

 本学園では、カリキュラムにルーブリックを採用し、項目ごとに育成する力の定義と目標達成を目指しています。美容学校が目指す教育の方向性は学校ごとに異なり、国家試験や就職等を目指す学校もあれば、われわれはその先の「どれだけ業界で働き続けられるか」で見ています。現場とのギャップをなくすため実践教育を重視し、「もっとこんなことを教えてほしかった」という卒業生からの声をもとに授業内容も適宜見直しています。美容学校によくある国家試験課題のワインディングコンテストには参加せず、サロンで使える実践的な教育に重点を置いています。

 実践教育の例として、美容科の「サロン実習」では、外部から講師を招き、カットやカラー、パーマ等、サロンで実際に使う技術を教えています。トータルビューティ科ではお客さまを招いてのメイクやエステやネイルの施術、コスメ商材の販売、ブライダルでは実際に婚礼のお手伝いをしています。

 さらに美容科を卒業後、スタイリストになるまでに平均2〜4年かかるサロンワークを1年間で学ぶプロフェッショナルアカデミー科(以下、プロ科)を設置しています。プロ科では、美容師国家資格を取得した学生が、プロサロンで教員の指導を受けながら、年間1人あたり約400人のお客さまに施術を提供しています。また、プロ科の卒業生は離職率が低いのも特徴です。

 高校生にも社会の目線でカリキュラムを組む本学園の教育が伝わっているようで、学生募集はおかげさまで好調です。保護者の方々に対しても、美容師は多額の学費をかけても辞めてしまうというイメージを払拭してもらうため、離職率調査の数字を示し、ミライを見据えた教育内容を説明することで、強い安心感を得ています。

教育を通じて社会の課題を解決する

 今後、3つの改革を計画しています。1つ目は、2027年4月に2つある大阪ベルェベル美容専門学校と大阪ベルェベルビューティ&ブライダル専門学校を合併し、西日本最大級の美容学校をスタートさせます。少子化が進むなか、時代の変化に対応したコース設定や定員計画を柔軟に対応できるように、経営の柔軟性を高めようと合併を決断しました。

 2つ目は(株)ミライロが主催する「ユニバーサルマナー検定」の美容サロン版を作ります。この検定は高齢者や障がい者等、多様な方への適切な応対の基礎知識を得る検定で、2024年の法改正により企業にも適切な対応が義務づけられました。本学園では資格も社会で役立つものを取得させたいので、2022年度以降の全学生・全教職員を対象に同検定を導入し、受講者の97%が満足と回答しています。いざという時に実際に行動に移せるのは検定を学んだ方だという話も聞いており、意義の大きさを実感しています。

 3つ目が通信制高校出身者への対応です。2025年時点で10人に1人が通信制高校に通うなか、「通信制高校卒業生アンケート調査」によると、高等教育機関進学後の退学率が高く、その後の追跡でも「仕事についていない」割合が高いという結果が出ています。ただでさえ労働力不足が危ぶまれる時代に、離脱した若者を救う取り組みを学園としてできないかと考えました。

 そこでまずは在学生向けとして、教室に入るのが困難な学生のよりどころとなる「学生相談室」を作ります。入学前の対応では、保護者の同意のもと「ブリッジスクール」に参加してもらい、スクールカウンセラー等と連携して社会的なリズムを整えてから昼間生になる制度を、2028年までには作りたいと考えています。

 教育業に携わっているなかで、こうした社会問題に必ず直面しますが、多くの人が見過ごしている現状があります。少しでも本学園が教育を通じて解決できることに取り組んでいきたいと考えています。


(文/能地泰代 撮影/杉浦倫和)



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