超統合データベースに基づいて開発したAIアドバイザー「OIDAI+」を学生生活の相談窓口に/追手門学院大学


学校法人追手門学院
CXデザイン局 基盤業務管理部長 辻本秀二 氏


 追手門学院大学が2026年3月にリリースしたAIアドバイザー「OIDAI+(オイダイ・プラス)」(以下OIDAI+)が話題だ。大学公式アプリ学内ポータル「OIDAIアプリ」内に新機能として搭載したもので、生成AIとの会話によって、履修、留学や就職等大学生活に関する情報をいつでも気軽に相談・問い合わせることができる。このOIDAI+は学生や教員にどのようなメリットをもたらすのか。そして目標とすることは何か。学校法人追手門学院のCXD事務局基盤業務管理部長として教学DXを推進し、OIDAI+の開発を主導する辻本秀二氏にお話を伺った。


追手門学院大学が進める教育DX関係図


学修支援ではなく「大学生活のパートナー」

 「次の学期の履修登録の相談に乗ってほしい」「次の学期の履修ということは、経営・マーケティング専攻3年の春学期の履修だね。今、興味を持っていることや力を付けたいと思っていることを教えてくれたら、おススメの授業を案内するよ」。これはOIDAI+のAIアドバイザーとの会話の一例だ。

 「留学したいけれど、英語力とお金のことが心配で相談に乗ってほしい」といった相談には、必要な英語力レベル、必要なコストや留学支援制度といった情報を学内データベースやお知らせ内容から提供してくれる。学生はOIDAI+から得た情報によって、英語力アップの目標をたて、担当課に留学の詳細な相談に行くという行動をとることができるだろう。

 AIを活用した大学アプリといえば、授業内容のアシストやキャリア相談のアプリを耳にすることが多いが、このOIDAI+は学生生活全般を対象に学生の自発性を支援するものだ。辻本氏はOIDAI+の開発の目的を次のように語る。

 「学内には様々な情報がありますが、埋もれて知られていない情報がたくさんあります。これまで積極的な学生しか拾えなかったような情報もあります。そういった情報をそれぞれの学生に個別最適化した形で提供していくことで、学生の機会損失を未然に防ぎ、大学生活を通じてより良い体験をしてもらうこと(CXの向上)を目指しました。どのように大学生活を送れば、自分がなりたい進路に向かっていけるのか、OIDAI+のAIに気軽に相談し、情報から気づきを得て、自分から一歩踏み出すきっかけにして欲しい」。

 AIの会話内容は一律的なものではなく、学生一人ひとりの学修状況等のデータベースにも紐づいているので、より具体的な相談が可能だ。さらに学生が自ら相談に来るのを待つだけでなく、AI側から「履修登録はできたか」「就職活動は進んでいるか」といった問いかけを行い、学生に行動や選択の気づきを促す役割も担っている。まさに大学生活のパートナー的な存在となるのがこのOIDAI+だ。

4年間のカスタマージャーニーを紐解く

 OIDAI+のような生成AIを活用した学内システムの要となるのは、整備された学内データだ。追手門学院大学は学内のあらゆるデータの統合に力を注いできた背景がある。各学生の入学から卒業までの様々なデータを統合し、「学修行動(履修状況や出席状況、LMSの学修ログ等)」や「学修成果(成績やアセスメントテスト結果等)」を集約した「超統合データベース」を構築してきた。超統合データベースは、大学運営の場面でデータの可視化を可能にし、事務職員のデータドリブンな意識醸成にも大きな役割を担っている。

 こうして時間をかけて整えられた学内データを学生に還元するために何ができるかを考え、そこから生まれたのがOIDAI+だと辻本氏は語る。「データは学生にとって一人ひとりの情報がつまった『最強の財産』です。このデータとAIを活用することで学生一人ひとりに個別最適化(パーソナライズ)された情報提供やアドバイスが可能になります。きめ細やかなサポートが学生の一歩踏み出すための勇気やヒントになり、学びや留学、課外活動などでの行動変容につながることを目標にしています」。

 こうした新しい仕組みは使い勝手のよさを追求することも重要だ。学生にとっていつどのような情報が必要になるのか。データをどのように整備すれば多くの学生の質問に答えられるようになるのか。こうした情報の整理も丁寧に行っている。

 「生成AIの回答の設計のために、学生が大学4年間でたどるカスタマージャーニーを一つひとつ紐解いていきました。入学直前直後、正課・正課外活動、進路選択、卒業直前といった段階に分け、その中をさらに細分化し、どのタイミングでどのような情報に基づきどのようなアシストが必要か、どのような問いかけをするべきか洗い出していきました」(辻本氏)。

 OIDAI+は教員にも大きな助けとなる。追手門学院大学では2010年からアカデミックアドバイザー制度として学生一人ひとりに担当教員がつき、学生生活におけるメンター的な役割を担っている。学生の履修登録から進路、休退学にいたるまで様々な相談を受けるが、相談内容によっては学内の専門部署に問い合わせをする必要もある。そこでOIDAI+を活用すれば、相談内容の基礎的な情報をロスタイムなく得ることができ、面談の場ではその情報をもとに、より深い会話が生まれることも期待できる。「アドバイザーの教員もより本質的な相談やアドバイスができるようになると考えています」(辻本氏)。

「第二の開学」がめざすAI・データ活用の未来

 OIDAI+の開発にあたっては、AIのハルシネーションといった課題にも正面から向き合っている。「開発時に学内からAI導入への懸念の声はありました。AIは安易な使用によっては、知識や論理的思考力等の獲得機会の逸失や、剽窃などの不正行為に繋がる恐れがあります。しかしOIDAI+とともにAIのリテラシーや付き合い方を学内に啓発していくことも大事だと考えています」(辻本氏)。

 今回の開発と並行して、追手門学院大学ではAI研究会を立ちあげ「生成AI時代の質の高い教育の提供」「対面での教育を主体とする大学のあり方の再定義」といった課題に取り組み、追手門学院大学としてのスタンスを考え続けていく体制を整えている。AIのない世界へ戻ることはないといわれているからこそ、積極的に関わっていくという姿勢だ。

 追手門学院大学は「第二の開学」を掲げ、2022年度から25年度にかけて文学部、国際学部、法学部、理工学部を新設し、茨木総持寺キャンパスを一新。世界標準となりつつある新たなLMSも始動した。大学独自に開発したOIDAIアプリやLMSを通じて蓄積されるデータをデータベースへ統合し、そのデータを生成AIも積極的に活用しながら学生の学びに還元するとともに、教職員による様々な政策形成に活用していく。こうした姿こそが、この数年の「OIDAIDX計画」がめざしてきた新たな大学の未来図に他ならない。今回のOIDAI+は高等教育におけるDXやAI活用といった流れに先手を打ち続け、学修者本位の目的を見据えてきた追手門学院大学だからこそ生まれたといえる。大学のデータ活用の理想的な答えのひとつであることは間違いない。


(文/木原昌子)





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