【Report】新たな社会価値の創り手たち

社会の最先端でイノベーションを担う、若きビジネスパーソン2名にインタビュー。
組織や社会で今、本当に求められる「アントレプレナーシップ」とは何か。
そのリアルな人物像から、未来を切り拓くヒントを探る。



答えがないことを考え抜き、地域の支援に奔走、
行政の最前線で課題の解決に臨む

中野区 まちづくり推進部 まちづくり事業課 大和町まちづくり担当 主任 能登谷 幸輝さん


 中野区まちづくり推進部に所属する能登谷さん。地方公務員が本当にすごいと思う職員を表彰する「地方公務員アワード2025」でネクストホープ賞に選ばれた。評価されたのは、社会課題が顕在化した「課題先進地域」における、移動スーパー誘致とコミュニティーづくり。

 「東京都中野区の大和町は最寄り駅から遠く、かつ近所にスーパー等日々の買い物ができる場所がない地域です。高齢者世帯が多いことから、買い物による外出機会の減少に伴い地域の交流も減っており、介護予防の観点からも何らかの対策が急務となっていました」

 複数のスーパーに電話を掛け移動スーパーの事業者を見つけられたものの、場所の確保に苦労した。大和町を縦断する中央通り沿いに、都が進める道路拡幅工事に伴い空地が点在していたことから、活用を交渉したものの、道路用地であることを理由に難色を示された。

 「諦めかけたものの、ここまで来たら最後までやり切りたいとあらゆる可能性を探る中で、UR都市機構が保有する木密地域の不燃化促進用地に着目。過去の事例から本用地にかかる固定資産税が公用利用で免除されることが分かり、無償で借りることができました」

 そして2024年10月より、週1回の移動スーパーの営業がスタート。多くの地域住民が利用し、買い物を楽しんでいる。用地内に設置したベンチでは、買い物客同士の交流も生まれている。「都やUR、そして部署の垣根を越え産業振興課や地域支えあい推進部等役所内の様々な部署に働きかけ、巻き込めたから実現できたこと。これからも色々な人と協働しながら課題解決に尽力したい」と話す。

課題解決のため積極的に手を挙げ行動する

 能登谷さんは、学生時代から課題や改善点を見つけると率先して手を挙げ、自ら実行してきた。大学では課題解決型の授業が多く、自ら考え行動する力や、周囲を巻き込む力等が身についたと話す。

 「行政の仕事の多くは、『答えがないものを考え抜く』ことであり、これら学生時代に身についた姿勢が活かせていると感じます。地域の課題は日々変化しますが、これからも一つひとつの課題に真摯に向き合い、より良い対応法を考え続けたいと思います」




失敗を糧に挑戦を繰り返し「連続社内起業家」に。
現在は新規事業支援と変革人材の育成に挑む

メンタリング株式会社 代表取締役 椿 奈緒子さん


 「シリアルイントレプレナー(連続社内起業家)」として、数々の新規事業立ち上げを経験してきた椿さん。高校時代に「将来は世界で羽ばたく人材になる」と決意し、英語以外の語学力を身につけるべく、大学でポルトガル語を学んだことが今のキャリアにつながった。

 「ブラジルに留学したり模擬国連委員会でブラジルを担当したりした経験から、『貧富の差をなくしたい』と思うように。新規事業を立ち上げて雇用を増やし、経済の力で社会を良くしたいと考えるようになりました」

 その思いは、総合商社を経て入社したサイバーエージェントで叶えられた。入社半年後に行われた新規事業コンテストに応募したところ、見事グランプリを受賞し、事業化を任されることとなったのだ。しかし、一人で突っ走りすぎてしまい周囲がついてこられず、1年で事業をクローズすることになった。

24歳の大きな失敗経験がキャリアの強みに

 ただ、この失敗経験が大きな糧となった。その後参画した、サイバーエージェントとサイボウズの合弁会社で手掛けた新規事業が成功。グループ会社のVOYAGE GROUPや、プライベートプロジェクト「パワーママプロジェクト」でも複数の事業を立ち上げた。その後、在日外国人向けサービスのYOLO JAPANに参画し、求人サービス事業等の立ち上げに成功。そして2020年、これらの経験をもとに新規事業支援業務を手掛けるメンタリング株式会社を設立し、今に至る。

 「事業環境の急激な変化を受け、変わらなければと危機感を持つ企業が増えています。新規事業は失敗がつきものでありスピード感も重要なので、新規事業を経験した人は、『変革人材』として活躍できる社員へと成長します。人材育成の観点からも、新規事業へのチャレンジはますます重要さを増すと考えています」

 これまでのキャリアを振り返り「たくさん失敗してきたことが私の強み」と話す。

 「早い段階で失敗を経験したことで学びが得られ、次の挑戦がしやすくなりました。失敗を繰り返す中で、スキルもイントレプレナーシップも磨かれたと感じます。この経験を活かし、これからは企業において自ら手を挙げられる変革人材を増やしていきたいですね」






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