リカレント教育最前線[14]JWUキャリアライフセンター/日本女子大学

創立者の理念の実現に向け、これまでの取り組みを統合。
女性の生涯にわたるキャリア支援の「ハブ」を目指す


JWUキャリアライフセンター所長 日本女子大学副学長 文学部教授 坂本清恵 氏


在学中から卒業後も継続的に教育・支援を受けられる新たな仕組みづくり

 「自分のキャリアについて考える女性が、生涯にわたって頼りにできる場所を作りたいのです」。そう話すのは、26年4月日本女子大学が開設した「JWUキャリアライフセンター」の所長を務める坂本清恵氏(同大学副学長・文学部教授)。同センターの母体となったのは在学生へのキャリア教育・キャリア支援を行ってきたキャリア支援課、及び、2007年に開講し、出産等によるブランク後の再就職や働く女性のキャリアの継続に役立つ学びを提供してきた履修証明プログラム「日本女子大学リカレント教育課程」である。

 「当面、JWUキャリアライフセンターがキャリア教育・キャリア支援を行う対象とするのは、在学生、卒業生、リカレント教育課程の在籍者、およびその修了生です。求人情報の提供やキャリアカウンセリング、インターンシップなどこれまで在学生を対象としてきたキャリア支援の対象を卒業生・修了生に広げていきます」(坂本氏)。

 「社会の変化は激しく、またキャリアの選択肢も多様化しています。今は個々の学生で情報が必要なタイミングも違えば、欲しい情報の内容も違う。ジョブ型雇用の一般化やキャリア(中途)採用の進展など新卒就職の意味づけも変わり、今後は、学生によっては、一番サポートが必要なタイミングが卒業後、というケースも増えてくるでしょう。その時に、そのニーズに応えられるような体制が必要になると考えました」(坂本氏)。

 主な取り組みとなるのは、①在学生へのキャリア教育・キャリア支援の強化、②卒業生・修了生との継続的な関係構築と支援の拡充、③社会との連携による新たな社会人向けプログラムの開発と提供、の3点だ。「在学生に対しては、現在の『JWUキャリア科目』(表1)について、卒業生や経済界など外部の意見を踏まえ体系的な整備・強化を図っていきます」(坂本氏)。現在の科目名からは、ワークキャリアにとどまらずライフキャリア全体への視点、ロールモデルの活用、多様なキャリアの選択肢の提示など、女性の生涯にわたる主体的なキャリア構築を目指していることが感じられる。それをどのように強化していくのだろうか。


JWU キャリアライフセンター 概念図


 「現在本学は、創立以来120年以上にわたり女子高等教育の中心となってきた『家政学部』の各専門領域を独立させ、それぞれでプロフェッショナルを育成していこうという学部学科再編に取り組んでいます。例えばインターンシップについても、最新のビジネス環境に対応して学部横断で取り組むメリットがある一方で、空間デザインの分野と生命科学の分野では必要なプログラムは異なってくる。それぞれ特定の業界に詳しい各学部の先生方と緊密な協力体制を構築し、これまで各学部に分散していた支援体制を統合します」(坂本氏)。

「幾歳になっても青年の様な旺な精神を」創立者の生涯学習の理念の実現に向けて

 卒業生へのキャリア教育・キャリア支援の拡充に関しては卒業生団体「一般社団法人日本女子大学教育文化振興 桜楓会」(以下「桜楓会」)との協力、そして「リカレント教育課程」で培ってきたノウハウが大きな力となる。

 「創立者である成瀬仁蔵は、『幾歳になっても青年の様な旺(さかん)な精神を持って、益々奮闘して境遇を開いて行く人』の育成を教育の目的としました。最初の卒業生から職業婦人として、生涯学ぶんだという強い意識を持っていたのです。ですから『桜楓会』も単なる同窓会、卒業生の団体ではなく、生涯学習やお互いのキャリア支援を行ってきました。ロールモデルとして在学生へのキャリア教育に参画してくれている卒業生もたくさんいらっしゃいます。本学の大きな強みですね」(坂本氏)。

 リカレント教育課程は、2007年、育児等で職場を離れている女性の再就職のための教育課程として文部科学省の事業に採択されたのが始まりだ。現在は「働く女性のためのライフロングキャリアコース」「次世代リーダーを目指す女性のためのDX人材育成コース」の2つのコースを提供。坂本氏は長年その責任者を務め、再就職先となる企業の開拓や学習内容のアップデートなどその発展に尽力してきた。

 「再就職支援を対象としたコースは2025年度をもって終了しましたが、一人ひとりのキャリア課題に寄り添い解決に寄与してきたノウハウを蓄積できたことは大きい。卒業生はもちろん、在学生にも活用していきます」(坂本氏)。



リカレント教育課程開講式の様子(2025年)


広く日本の女性のキャリア課題への対応を視野に、あえて「JWU」をセンター名に

 センターの名称に冠された「JWU」は日本女子大学(Japan Women's University)の略称。それは、在学生・卒業生にとどまらず、将来的には広く学外の社会人も対象としていくことを示しているという。

 「先駆けとして日本の女子高等教育を担ってきた本学だからこそ、女性の生涯にわたるキャリア教育・キャリア支援の『ハブ』となろう。センター名はその強い意志の表れです。現在は学内での周知につとめつつ、方針を策定しようという段階ですが、いずれは通信教育課程との連携や大学院レベルの履修証明プログラムの検討など、新たなプログラムの開発に取り組んでいきます」(坂本氏)。

 「私は長年リカレント教育課程に取り組んできて、社会人の学びをめぐる変化の速さ、振幅の大きさを肌身に感じて来ました。学生に対しても卒業生に対しても、今必要な学びを提供する必要はある。しかし一方で、それと同時に、あるいはそれを通じて、いかに『錆びない学び』、変化にかかわらず必要となる教育を提供していけるかが重要。それこそこのセンターの役割だと考えています」(坂本氏)。



(文/乾 喜一郎 リクルート進学総研特任研究員[社会人領域])


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