リカレント教育最前線[13]名商大ビジネススクール MBA単科(Executive Education)/名古屋商科大学
週末土日の2日間で1科目を完結。
国際品質を担保し、非学位プログラムをもう一つの将来の柱に


「土日は、経営者の視点に浸り込む」。
授業への集中を追求してたどり着いた「週末MBA」
DX戦略、ビジネス倫理、リーダーシップ…名商大ビジネススクールでは、約50種類にも上る科目を一科目から受講できる。締め切りはそれぞれの科目の開講日の約1カ月前に設定されており、受講希望者はオンラインでの申し込みをすませた後、送付された「ケース」を読み込んでから授業に臨む。
驚くのは、各科目が週末土日の2日間で完結すること。ビジネスパーソンのニーズにピンポイントで応えることができるため、近年は毎年のべ1200~1300人が受講しているという。その狙いと将来像について、学長の栗本博行氏、研究科長の岩澤 誠一郎氏に聞いた。
名商大ビジネススクールの開設は1990年。米・英・欧の3つの国際認証を持つ日本唯一(世界では約140校)のMBAだ。その特色は全ての授業において最新の事例を教材とした「ケースメソッド」を導入していること。経営者の視点を追体験し、その意思決定を自分ごととしてもらうことを目指す。
「各科目を週末で完結させるのは本科(学位課程)も同様です。大学院開設当初は平日夜間に開講していたのですが、残念な出来事がありました。授業中にもかかわらず仕事のメールをしていたり、トラブル対応の電話を掛けに廊下に出たりする受講生を多数見かけたのです。全く討議に集中できていない、何かが間違ってる、どうにかできないだろうか。そんな時、シカゴ大学などが提供している週末開講の事例を知り、導入に向けて調査を開始しました」(栗本氏)。
「土日の2日間は経営者の視点、いわば別世界にどっぷりと浸り込む。毎週15回来るよりもずっと集中できます。クラスのコミュニティもでき上がりやすいのですよ」(岩澤氏)。
「当初は並行して夜間も開講していたのですが、マーケットが答えを出してくれました。ある時、週末と夜間の受講生の比率が10:0になった科目が現れたのです。これは間違ってなかったと確信しました。本学は、本科も単科も、ケースメソッドが柱です。ここは妥協しません。背後にあるのは、授業に真剣に向き合い、討議に集中する文化です。教える側も、授業前の綿密な準備と、優れたファシリテーションが必要になる。週末完結型はその効果を最大限発揮するあり方なのです」(栗本氏)。

MBA単科の授業の品質は本科と同様
オンライン化で広がった受講者層
本科の場合は2週末4日間の対面科目が中心で、週末2日間のオンラインを中心としたMBA単科とはその点が異なる。一方で、授業の進め方、品質については同じく国際認証の評価対象であり、全く同質だと栗本氏はいう。
単科の受講者の平均年齢は40代と本科より少し高い。法人参加は15%程度で、ほとんどは自費。女性管理職経験者や育休中の女性を対象とした科目を開設していることもあり、女性比率は40%に達する。
受講生は、これからMBAを学ぼうとする層と、修了生や既に博士号を持つ者など最新の学びを重ねていこうとする層に大きく分かれる。前者に対しては「Pre MBA」という履修証明プログラムを用意しており、非大卒層もこの課程を修了することで大学院の受験資格を得ることができる。「PreMBAは、国際認証機関から意義深い取り組みとして高く評価されています」(栗本氏)。
コロナ禍を経て全ての科目をオンライン化したことで、新たな層も獲得した。「対面では通いにくい地方の方。そして、海外からの方が全体の1割近くに達しています」(栗本氏)。
MBA単科をもう一つの収益の柱に。
「ケースで考えるカルチャーを日本中に」
今後は、本科への導入としてだけではなく、単科自体を収益の柱としていきたいという。「本科の定員をどんどん増やすことはできません。なんといっても教室の限界がある。特に東京校は既に入学を1年ほど待っていただいている状態ですから」(岩澤氏)。
受講者が増え、オペレーション上も教学上も日々多くの課題が発生する。その解決に多くのリソースを割いているのも、将来の柱と考えているからだ。
「世界的には、非学位プログラムが収益の柱となっているビジネススクールはいくつもあります。とはいえ、まだまだ日本社会では非学位プログラムについては理解が進んでいない。これには時間がかかります。今では広く認知されている国内MBAも浸透まで20年かかりましたからね。
現在、修了生を対象とする『発展科目』を充実させたいと考えています。在学中は気にならなかったテーマ、例えば執行役員層のためのプログラムや、監査役になったときに役立つものなど、キャリアに応じたプログラムを開設したい。修了生が生涯を通じて学び続ける環境を提供したいのです」(栗本氏)。
どのような未来像を描いているのか。
「われわれは、ケースメソッド=NUCBというブランドを構築しようとしています。自分体験して面白いと思った経営者が自社のケースを書いて、会社の中でみんなで議論する、そんな文化が日本中に浸透したら楽しいでしょう?」(岩澤氏)。
「ケースに取り組むと、そこに描かれた課題がいつの間にか他人事ではなくなります。座学と違って、ケースの7時間はあっという間。この学びの文化を大学の外にも広げていきたい。私たちの野望ですね」(栗本氏)。

写真1 ビジネススクール(本科)の授業風景(写真は名古屋校)。「手が上がるのは教員が学生自身の思索を引き出す質問をしている証と考えます」(栗本氏)。

写真2 MBA 単科、オンラインでの授業風景
(文/乾 喜一郎 リクルート進学総研特任研究員[社会人領域])
【印刷用記事】
リカレント教育最前線[13]名商大ビジネススクール MBA単科(Executive Education)/名古屋商科大学
