県立高校、産業界等によるコンソーシアムを作り高校教育改革を推進/鳥取県教育委員会

 少子化のさらなる進行、産業構造の変化や社会課題の複雑化に伴う育成すべき資質・能力の変化、生徒の多様化等を受け、高校教育の改革が喫緊の課題である。2026年2月には文部科学省から「2040年に向けたN-E.X.T.ハイスクール構想」が公表され、さらなる改革が求められることとなった。

 こうした状況において、各自治体はどのような方針と計画で高校教育改革に取り組んでいるのか。近年の状況変化を受けて具体的な計画を立て、実行に移している教育委員会の構想をご紹介したい。

POINT
  • 「社会とつながり 体験する 選択できる 新しい学び」の創造とN-E.X.T.ハイスクール構想の推進のため、産業界や大学等、地域と連携した「高校改革推進コンソーシアム」を設置し、地域全体で人材育成を進める
  • 生徒数減少には、2026年度より5年間は学級数減で対応し、その後5年間は再編・統合も含めて検討する計画
  • 専門高校における専門性の高度化、総合選択制高校の設置等を推進

■お話を伺った方
鳥取県教育委員会
参事監(高校魅力化推進担当)
河﨑秀幸 氏


地域と連携し、地域全体で人材育成を推進

―鳥取県では、2026年度からの10年間で県立高校が目指す姿を示した「令和新時代の県⽴⾼等学校教育の在り⽅に関する基本⽅針」を2024年に策定し、学科ごとの特色化の方向性や高校の配置・整理・再編の考え方等を示されています(図)。その狙いや背景にある課題意識についてお聞かせください。

 本県の中学校卒業者数は、2027年春は約4900人を見込んでいますが、2035年春には約4000人、2041年春には3000人を切る見込みです。ただ、県立高校の数は24校と現状でも少なく、また、中山間地域が多い本県において高校は地域のコミュニティの核となっていることから、生徒数が大きく減ってくる段階までは学校数を減らすのではなく学級数減で対応していくというのが基本的な考えです。

 具体的には、2030年代に入ると中学校卒業者数の減少幅がかなり大きくなってくるため、2026年度からの10年間を5年ずつ前期と後期に分け、前期は学級数減で対応し、後期は再編・統合も含めて検討する方針です。

 加えて、2026年2月に文部科学省から「N-E.X.T.ハイスクール構想」が出されたため、その観点もふまえて各校の改革内容の検討を進めているところです。


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図 「令和新時代の県立高等学校教育の在り方に関する基本方針」概要
図 「令和新時代の県立高等学校教育の在り方に関する基本方針」概要


―基本方針では、県立高校が目指す姿を「社会とつながり 体験する 選択できる 新しい学び」を創造することとし、推進する学びを3つ示していらっしゃいます。これらを推進していくうえでどのようなことを重視されていますか。

 われわれが最も大事にしているのは、教員や地域、生徒、保護者の教育観や人材育成観の変容を促し、「地域全体で生徒を育てていかなければならない」という認識を広げていくことです。

 というのは、今後、人が減っていくなかでも新しい技術をどんどん取り入れていかなければならない状況においては、学校だけで完結することは難しく、産業界や大学等、地域の力を借りながらみんなで一緒になって子ども達を育てていく必要があるからです。

 そのためには、産業界や大学等との連携をカリキュラムのなかに組み込み、継続性を持ったものにしていかなければなりません。そこで、2026年4月に「N-E.X.T.ハイスクール構想」に基づく高等学校教育改革促進事業の改革先導拠点4校(当時は申請中)と、産業界、大学、県の各部局等で「高等学校教育改革推進コンソーシアム」を立ち上げ、地域を支える高度人材を育成するための教育改革について検討を進めています。

 さらに、コンソーシアムの下には「専門性高度化部会(工業分科会)(農林分科会)」「理数系人材育成部会」「地域連携・多様な学習ニーズ部会」という3つの部会を設けています。改革先導拠点校以外の全県立高校も希望する部会や分科会に所属し、改革先導拠点校の取り組み計画や産業界との連携のあり方等を参考にしてもらいながら、自校の今後の教育課程や地域との連携内容等を検討してもらっています。

 また、3つの方針で示した学びを進めていくうえでは、教員が生徒の学びを伴走的に支援し、自走的な学びへと誘うことも重要です。知識を伝達するだけでなく、探究的な学びや社会に開かれた教育課程を実践するためのコーディネーターとしての役割や、生徒に学びの楽しさを伝え、新たな学びへと向かうための興味や意欲を引き出す役割も果たすことができるよう、教員の研修の充実を図ることも記載しています。

専門学科の高度化、総合選択制高校の設置等を推進

―「令和新時代の県立高等学校教育の在り方に関する基本方針」の詳細について伺います。方針1で示されている「生徒一人一人の資質・能力や可能性を最大限伸ばす学び」の推進に当たり、どのようなことに注力される計画ですか。

 1つ挙げると、後期の計画のなかで普通科と専門高校を合わせた総合選択制の学校を作ることを公表しています。学科の垣根を越え、興味・関心に応じて他学科の科目を履修することができる高校です。

 現在は、複数の専門学科からなる総合選択制高校を3校設けていますが、大学入試が総合型選抜等、早期に、それも人物や学んできたことを重視して選抜していく方法にシフトしてきていることや、専門高校から大学に進学したいというニーズが高まっていることを受け、普通科で学びながらも専門的な学びができる選択肢や、専門的な学びに取り組む生徒が大学でさらに学ぶ道を選べる等、目指す進路を見据えてより専門性を一歩深めていけるような学校を作っていきたいと考えています。

―前期には、専門学科の整理と専門性の高度化を計画されています。どのような内容で計画されていますか。

 地域を担う人材を育成する観点で、専門学科は重要な役割を持つと考えています。本県では東部・中部・西部の3つの地区ごとに学校の配置を考えますが、専門性の高度化を図るうえでは人や設備の集約が必要という考えから、各地区の中で複数の工業高校に分散している学科を1校に集約します。なお、ほかの専門学科については、既に各地区で1校ずつに集約済です。そのうえで、現在、各校が2027年度の予算要求に向けて高度化のための具体的な計画を練っているところです。

―計画例として、「N-E.X.T.ハイスクール構想」の類型1(アドバンスト・エッセンシャルワーカー等育成支援)の改革先導拠点校に採択された鳥取工業高校(鳥取市)と倉吉農業高校(倉吉市)の取り組み計画を教えていただけますか。

 まず鳥取工業高校は、室内ドローン飛行場を設置し、操作だけでなくプログラミングやデータ分析等も含めた多様な視点でドローン技術に関する学びを進めていきます。全ての生徒が操作スキルを身につけることは前提として、企業の協力を得ながら、機械、電気、情報工学、建設工学の各学科に合わせたドローン技術の深い学習を行う計画です。

 併せて、産業界で実際に用いられている高度最新機器を入れたラボを整備し、産業界や地域の方々にも参画いただいて課題研究等に取り組む等、地域に必要な高度な人材を輩出していこうと計画しています。

 また、倉吉農業高校は、県内唯一の農業専門高校で、かつ、文部科学省が指定する農業経営者育成高校でもある学校です。同校では最先端の機器を導入したスマート農業の学びと、和牛牛舎の整備による畜産業の担い手育成に取り組みます。本県は和牛の飼育に力を入れているにもかかわらず同校の畜産の学びは乳牛が中心であったため、最新の設備を入れた和牛牛舎を建設して地域の方々にも開放し、持続可能な新しい和牛育成方法の地域開発拠点にしていく計画です。

―普通科高校等の魅力化についてはどのように進めていく計画ですか。

 専門学科と同様、学校ごとに育てたい生徒像とそのための取り組みや必要なもの等の計画を立てているところです。そうして各学校から出てきたアイデアを集約した際に、本県の次の高校魅力化のフレームができるのではないかと思っています。

―「N-E.X.T.ハイスクール構想」と高等学校教育改革促進事業の財源面での期待は大きいのでしょうか。

 そうですね。これまでも魅力化の方策を検討してきましたが、高校整備に関する県の予算がそれほど多くないために、各校がアイデアを出しても予算が計上されないことが多々ありました。

 それが、今回のN-E.X.T.ハイスクール構想によりやっと思い切った事業が可能になります。また、今後、計画されている国の交付金等も活用して改革先導拠点校以外の高校も思い切った事業が可能となることを期待しています。

文/浅田夕香(2026/10/9)