【TOP INTERVIEW】個性を尊重する少人数教育で変革の中心を担うプロフェッショナルな女性を育成/津田塾大学 学長 髙橋 裕子 氏
津田塾大学 学長 髙橋裕子(たかはし ゆうこ)氏
1980年 津田塾大学学芸学部英文学科卒業
1983年 University of Kansas, Graduate School, Dept. of History, M.A. in History
1984年 筑波大学大学院修士課程地域研究研究科(国際学修士)
1989年 University of Kansas, Graduate School, School of Education, Dept. of Educational Policy and Administration, Ph.D. in Education
1990年 桜美林大学国際学部専任講師
1997年 津田塾大学学芸学部英文学科(現英語英文学科)助教授
2004年 津田塾大学学芸学部英文学科教授(現在に至る)
2016年 津田塾大学学長、学校法人津田塾大学常務理事(いずれも現在に至る)
2025年 学校法人津田塾大学代表業務執行理事(現在に至る)
創設者 津田梅子の目指した女性教育とは
津田塾大学は、小平と千駄ヶ谷に2つのキャンパスを有し、学芸、総合政策の2学部、3研究科、約3400人の学生を擁する女子大学です。
創設者の津田梅子が「男性と協同して対等に力を発揮できる女性の育成」を目指し、1900年に創立した私塾「女子英学塾」が本学の前身です(1933年に「津田英学塾」へ改称)。当時の「英学」とは、語学に限らず文学、理学等を含む西洋の学問全般を指し、女性の英語教員養成と幅広い教養教育の提供を目指して創設されました。
本学は2020年の創立120周年に「Tsuda Vision 2030」を策定し、2025年に創立125周年を迎えました。「変革を担う、女性であること」をモットーに、ミッションステートメントとして「弱さを、気づきに。強さを、分かち合う力に。不安を、勇気に。逆境を、創造を灯す光に。」を掲げています。戦時中に英語が敵性語とされた時代には、理科を新設し、「津田英学塾」から「津田塾専門学校」へ改称を余儀なくされました。こうした歴史はまさに「逆境を、創造を灯す光に。」を象徴しており、本学の125年の歩みはまさにこのステートメントと共にありました。
現在はこのビジョンに基づき全体戦略や中期計画を策定・実行し、時代に即した研究の充実と着実な発展を進めています。
特長は「個性を尊重する少人数教育」
本学の教育理念は、「個性を重んじる少人数教育と高度な英語教育により、高い専門性と豊かな教養を身につけたオールラウンドな女性を育成する」です。創設者が開校式式辞で述べた言葉でもあり、現在も校名に「塾」を冠しているのは、一人ひとりの個性を尊重する少人数教育という特長を受け継いでいるからです。教員一人あたりの学生数は、卒論指導クラスで平均6人、4年セミナーでも平均10人と低く、一人ひとりの進捗や成長に目の行き届くサイズで教育を行っていることが私達の強みです。
また、「英語の津田」と言われる津田塾大学には、語学を生かして国際政治・思想・社会を幅広く学ぶ伝統があります。英語英文学科や、私立大学では最も古い歴史をもつ国際関係学科に限らず、国際機関や国際政治の分野で活躍する卒業生は、どの学科からも数多く輩出してきました。
在学中に春·夏の語学研修や1年間もしくは半期の協定校留学を経験する学生もいますが、それ以上に注目すべきは、卒業後に自らの力で海外大学の修士課程へ進学する学生が多く、卒業から数年後に推薦状の依頼が続々と届くことです。
卒業生の代表挨拶では、「4年間で学んだ最も大切なことは、生涯にわたって学び続ける姿勢」と話す学生が多く、「志の高い仲間に出会えて、この大学に来てよかった」と異口同音に語ります。そこには、独立独歩で群れず、一人で過ごす時間に否定的な眼差しを向けない、本学らしさが感じられます。一人ひとりの個性と挑戦を周囲の仲間が自然に応援する大学文化が醸成されています。
ウェルネス教育で女性をエンパワーメント
女性のエンパワーメントを中心に据え、生涯にわたる活躍の礎を築く全人教育ができるのも、女子大学ならではの強みです。本学では、女性の健康は男性とは違う点に注目し、1930年代後半からウェルネスにかかわる教育を行ってきました。現在は、大学共通科目のなかに「健康余暇科学」の科目群を置き、「ウェルネス·センター」と連携して授業を運営しています。学芸学部では「動きの教育」「健康教育」の科目を全員必修とし、選択科目でも、公衆衛生、ストレスマネジメント、女性の健康とキャリア等、実技を含めた授業が展開されています。
さらに、大学の中で女性がリーダーシップを発揮する姿を見せるために、本学では特に女性教員比率を高く維持しようと意識しています。私自身が本学在学中に、留学経験のある多くの女性教員達に出会えたことで、今の進路を選び取ることができたと思っています。そういう意味で、女子大学は次世代の若い女性達に、多様なロールモデルを見せることができるという魅力を持っているといえるでしょう。大学4年間で学生の自己肯定感をしっかりと育て、社会のアンコンシャスバイアスを打ち破って前進していく基盤を作ることこそ、女子大学が社会に貢献できる大きなプラス要素だと考えています。
新学部「国際数理データサイエンス学部(仮称)」設置構想
本学は、1948年に新制大学として認可後、翌1949年に数学科を設置して以来学芸学部のみでしたが、2017年には千駄ヶ谷キャンパスに女子大学初となる「総合政策学部」を開設しました。さらに2028年4月には、次なる改革として小平キャンパスに「国際数理データサイエンス学部(仮称)」の設置を構想しています。新学部は、長年にわたり理系分野で活躍する女性を輩出してきた数学科、情報科学科の強固な実績をベースに再編・発展させるもので、「共創人間科学コース」「国際情報科学コース」「数理科学コース」の1学科3コース制とする予定です。津田塾ならではの高度な英語力に加え、情報科学・数理・データサイエンスの確かな知識を強みとし、国内の様々な課題を発見・解決できるリーダーシップを備えた人材を育成します。また、文理融合の要素も備えており、特に「共創人間科学コース」では「人にとっての心地よさや楽しさ」という視点から、デバイスと人間との新たな関係性を構築する手法を学びます。学生には、自分の発想を生かせる学問の可能性を感じてほしいと思います。
学部再編によって、本学が目指す女性のキャリア形成や方向性をさらに強化することができます。現在、政府はプライム上場企業の女性役員比率を2030年までに30%以上とする目標を掲げていますが、まだ2割に満たないのが現状です。組織の中で意思決定に参画できる女性リーダーを増やしていくことは、本学に求められている使命といえるでしょう。今後も女性を勇気づけていく大学として、社会の変革の中心を担うプロフェッショナルな女性を育成していきたいと考えています。
(文/能地 泰代 撮影/平山 諭)
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