県立高校の再編整備と魅力化により少子化と学習ニーズの多様化に対応/新潟県教育委員会
少子化のさらなる進行、産業構造の変化や社会課題の複雑化に伴う育成すべき資質・能力の変化、生徒の多様化等を受け、高校教育の改革が喫緊の課題である。2026年2月には文部科学省から「2040年に向けた『N-E.X.T.ハイスクール構想』」が公表され、さらなる改革が求められることとなった。
こうした状況において、各自治体はどのような方針と計画で高校教育改革に取り組んでいるのか。近年の状況変化を受けて具体的な計画を立て、実行に移している教育委員会の構想をご紹介したい。
- 将来の生徒数減少を見据え、県立高校86校の再編整備を進め、2034年春までに64校とする見通し
- 単に学校数を減らすのではなく、再編後の学校はより魅力的で、生徒の学習ニーズに対応した選ばれる学校を作っていく
- 生徒のニーズに対応した新たな学校として、探究的な学びを重視した新しい普通科系学科、県外の生徒も学びたくなるような特色のある学校、複数の専門学科を持つ産業高校、生徒一人ひとりの状況に応じて多様な学び方ができる「セルフデザインハイスクール」等を設置予定
- 遠隔教育を推進し、全ての学校でニーズに応じた学びを受けられることを目指す

再編整備を進めながらより魅力的で選ばれる学校を作っていく
―新潟県では、2025年に新たな「県立高校の将来構想」を策定し、2025年度〜2034年度の10年間の高校の設置・再編方針等を示されました。その狙いや背景にある課題認識について教えてください。
今井:将来的な生徒数の減少と近年の高校教育を取り巻く状況の変化に対応し、県立高校の再編整備を進めながら生徒の多様な学習ニーズに対応すること、そして、生徒が「ここで学びたい」と思えるような魅力的な学校づくりを進めていくことが新しい構想の狙いです。
背景として最も大きいのは、将来的な生徒数の減少です。2026年春の本県の中学校卒業者数は約1万8000人ですが、15年後の2041年春には52%に相当する約9400人まで減少する見通しです。従って、再編整備はどうしても進めていかなければなりませんが、単に学校数を減らすのではなく、一定の学校規模を維持し、かつ、統合して残す学校についてはより魅力的で、より生徒のニーズに対応した選ばれる学校づくりをしていくことが大事な方針だと思っています。
併せて、高校教育を取り巻く状況の変化として、ICTを活用した学び方の変化や、学び自体が探究的な学びや協働的な学びを重視する方向に変化しています。また、近年は、全日制高校や定時制高校からの転学ではなく、中学校卒業段階で私立の広域通信制高校を進学先として選択する生徒が急増していることも挙げられます。
―新しい将来構想の概要を教えてください。
佐藤:2025年春時点で86校あった県立高校を2034年春までに64校にします。少子化の進行をふまえながら子ども達の教育環境の質を高めていくには再編を進めていかなければならないため、見通しとしての数字を示しています。
今井:そのうえで、生徒の多様なニーズに対応し、魅力的でより良い学校を作っていくために計画しているのが、次に挙げる学校の設置です。
- 探究的な学びを重視した新しい普通科系学科
- 県外の生徒も学びたくなるような特色のある学校
- 複数の専門学科を併せ持つ新しい専門高校である「産業高校」
- 生徒の多様なニーズに応えるため、生徒が自分の状況に合わせて学びの方法や場所を選択することができる、本県独自の「セルフデザインハイスクール」
加えて、遠隔教育の推進です。小規模校や離島・中山間地域でも多様な科目の選択を可能にする等の支援を目的として、遠隔教育配信センターを2026年4月に設置しました。
―それぞれについて教えてください。
今井:新しい普通科系学科は、まず、2026年4月に十日町高校(十日町市)にクロス探究科を設置しました。また、県外からも志願が期待できる学校として2027年4月に国際フロンティア高校(南魚沼市)を開校予定です。同校はケンブリッジ国際教育プログラムを導入することから「英語で学ぶ」という点が注目されがちですが、われわれとしては世界基準の探究的な授業プログラムであることを同時に重視しています。生徒が授業のテーマから自ら問いを立て、仲間と議論・協働しながらその問いの解決に向けて学びを深め、成果をプレゼンテーションする、このような授業スタイルを通じた学びが、本県における探究的な学びのパイロットケースとなることを期待しています。
―国内では国際バカロレア(以下、IB)を導入する高校が多いなか、ケンブリッジ国際教育プログラムを採用された理由はほかにもあるのでしょうか。
内川:科目単位で導入できる柔軟性と、世界的に見た導入校の多さ、そして、英語で学ぶ必然性の3つが理由です。IBはユニットベースでの導入が求められますし、IBの導入校は世界で約5800校であるのに対し、ケンブリッジは1万校を超えています。本県には英語科以外にも高い英語力を有する教員がいることから、導入可能と判断しました。
今井:付け加えると、国内でケンブリッジ国際教育プログラムを導入している公立高校はまだないため、「公立高校でケンブリッジの導入校」というのは新しい学校を作るにあたっての打ち出しとして魅力的であるという考えもありました。
生徒のニーズに対応するための「セルフデザインハイスクール」と「遠隔教育の推進」
―「セルフデザインハイスクール」は、どのような学校でしょうか。
今井:2つのタイプがあるのですが、ここではタイプⅠをご紹介します。タイプⅠは、定時制課程と通信制課程の垣根を越え、生徒が自分の状況に合わせて学びの方法や場所を選択できる柔軟な学びを実現する学校です(図1)。基本的な方向性としては、今よりも柔軟に定時制・通信制間の単位を修得できたり転籍が行えるような仕組みを構築していきたいと考えています。
通信制課程については、現状、私立の広域通信制高校に多様な生徒を受け入れていただいていますが、公立校としても教員の質の高さや施設設備等を生かして環境整備を進め、生徒の多様なニーズにしっかりと対応していくことが大事だと考えています。
図1 「セルフデザインハイスクール」のイメージ
―遠隔教育はどのように進めていく計画ですか。
今井:これまで、2021年度に遠隔教育の実証研究に着手し、2022年度には単位認定を伴う遠隔授業を学校間配信により始め、学校数やエリアを拡大してきました。
2026年4月に設置した遠隔教育配信センターには、11人の配信専門の教員を配置しています。これにより、例えば、地歴・公民や理科において教員が配置されていない科目がある小規模校に対して、配信センターに所属する当該科目を専門とする教員の授業の提供等が可能になります。2026年時点では、配信センターからのべ40科目、学校間配信で10科目、学校数で見ると20を超える学校で遠隔授業が行われています。目標は、全ての学校に受信機器を配置し、ニーズに応じた学びを受けられるようにすることです。
図2 遠隔教育推進体制のイメージ
―産業高校については、2029年度に工業高校1校と商業高校1校を統合し、工業系学科と商業系学科を併せ持つ高校1校の設置を予定されています。ほかにはどのような計画でしょうか。
今井:産業高校では、生徒が自分の所属する専門学科での深い学びを軸としながら、ほかの専門学科との横断的・協働的な学びを進めます。設置予定の1校のほかにも、各地域で複数の専門学科を持つ産業高校の設置を検討しています。
専門高校は、地域産業の担い手を育成する学校として地域社会や産業界から非常に大きな期待を受けていますから、われわれの責任として維持し、より一層生徒に魅力的に感じてもらう仕掛けが必要だと思っています。
その一つとして、国の「N-E.X.T.ハイスクール構想」に基づく高等学校教育改革促進事業の改革先導拠点として、まずは2つの専門高校の改革に力を入れる計画です。国の支援を活用しながら先端設備の導入や実習棟の改修を行い、より高度な、新しい工業、商業、農業の学びを実施し、各産業を引っ張っていける人材を育成したいと考えています。
―「N-E.X.T.ハイスクール構想」については、どのように受け止めていますか。
今井:われわれの「将来構想」で目指す学校づくりと基本的な方向性は一致していると考えています。ただ、グランドデザインは人材育成の視点がかなり強いので、その視点を「将来構想」に上乗せしてより意識しながら、県立高校のあり方や教育内容を考え、力を入れていかなければならないと思っています。
佐藤:国が示した3つの視点やそれにかかる3類型の支援は、われわれが進めようとしている学校づくりと方向性が一致するところがあると捉えています。財政支援も最大限活用しながら良い学校づくりができればと考えています。
文/浅田夕香(2026/9/10)
