【研究リポート】探究学習の現在地/下編:高校生調査から見る探究学習の現在地
研究員 鹿島 梓
本稿では、上中下編にわたり、「探究学習の現在地」の整理を試みる。
下編では、高校生調査から探究の現在地を明らかにしたい。
- 探究学習は広く普及し、高校生の自己評価は全体的にポジティブ
- 学外接点、学外からの評価、テーマ設定の主体性等のスコアにおいてエリアがアーバンを上回る。地域社会との距離感と挑戦する敷居の高低等が影響か
- 学習効果を高める鍵は「主体性」と「学外接点」
探究学習は広く普及し、高校生の自己評価は全体的にポジティブ
本稿で引用している調査は、リクルート進学総研で2026年3月に実施した「高校生の進路選択に関する調査2026」である。「総合的な探究の時間」の実施状況や影響について、高校生自身の認識・自覚する内容等をもとに明らかにした調査だ。まずは概要をおさらいしたい。
全体の84.4%の高校生が「総合的な探究の時間」の授業を受けており、高校生の自覚的にも、探究学習は広く普及していると言える。なお、「総合的な探究の時間」に具体的にどのような活動をしているか、例えば補習等に充てているケースも未だにあるのではと考えたが、調査報告書によれば授業形式は「プレゼンテーション」(60.2%)、「ディスカッション」(36.8%)といったアウトプット重視の傾向がある。次いで「インターネット調査」(32.8%)等となっており、概ね探究的な活動に使われていると見える。
また、全体の約6割(58.7%)の生徒が、探究学習を通じて学外の人との接点を持っている。教科学習と違い探究は実社会がフィールドなので、地域の大人等の学外リアリティ接点により成長する可能性が高いと言えるだろう。
探究学習に対する生徒の自己評価は「満足」「やや満足」が68.5%と全体的にポジティブであり、探究学習を通して「成長を感じた(72.9%)」「自分の人生や生活と関係があると感じた(70.8%)」「社会に役立つ学習だと感じた(71.3%)」となっている。
学外接点、学外からの評価、テーマ設定の主体性等のスコアにおいてエリアがアーバンを上回る
ここでは1つの観点として、スコアの「地域差」に注目したい。
調査項目は、大都市圏(出身高校の所在地エリアが「南関東」「東海」「関西」のいずれかに該当:n=2339、以降「アーバン」)と大都市圏以外(n=3090、以降「エリア」)でも集計をしている。そのなかで特に地域差が気になる項目をピックアップしたのが図表1である(詳細地域ごとの値はスペースの関係上割愛する)。
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図表1 アーバン・エリアの地域差がある項目ピックアップ
全体的な傾向として、地方の高校生のほうが探究学習を通じた成長実感や満足度が高い傾向が見られる。1つずつ見ていこう。
「学外の人との接点があった」と答えた生徒は、アーバンが53.7%に対してエリアが62.6%と高い。特に、北海道、北陸、中国・四国では65%を超える。そうした学外接点から「(何かしらの)評価をもらった」と答えた割合も、アーバン28.1%に対してエリアは37.2%と高い。単に地域の大人に探究関連のインタビュー等をしただけではなく、活動伴走または成果発表等の場にも学外の人が存在したと考えられる。こうした結果として、「取り組み状況」を見ても、「取り組めた」とする割合がアーバンに対してエリアが高い傾向が見られる。ただし、いずれも80%を超えている高い水準の比較ではある。
探究のテーマを「自分の興味関心から自分で選んだ」生徒の割合は、アーバンで49.2%、エリアで55.3%。特に北海道・東北で65%以上と突出して高い。興味関心をもとにしつつ先生や学校に相談して決めた人を含めると、アーバンは67.2%に対してエリアが74.4%まで上昇する。こうした内発的動機に支えられた探究活動を実施したと考える生徒がかなりの数に上るのは、探究の制度設計や趣旨を振り返っても、非常に明るい事実であろう。逆に指示されたなかから選んだ、あるいは指示された内容で実施した割合は、アーバン32.8%、エリア25.6%となる。
具体的な探究テーマについては図表2をご確認いただきたい。地域ごとの回答数にも留意が必要ではあるが、首都圏と関西を除く全ての地域で、最も高いシェアを占めたのが「地域活性化の方法」である。高校生にとっては、自分の興味関心を軸にテーマを設定する、となった際、自分が住む街の課題が身近であるためか、地域に直結するテーマが選ばれやすい傾向があるようだ。特に、北関東・甲信越(20.9%)、東海(20.2%)、中国(18.6%)、北海道(17.7%)等で高く、首都圏と関西以外の全てで全体平均(12.2%)を上回る。こうしたテーマ設定においては、大都市圏に比べて地方圏の方が当事者意識が持ちやすく、地域社会や地元企業と連携した体験的活動が行いやすい環境があり、それが高い満足度や成長実感につながっていると考えられる。一方、首都圏で最も高かったのは「文化や伝統の継承」(9.4%)、関西では「自然科学・実験研究」(8.9%)となった。
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図表2 具体的にどんなテーマを探究しましたか。(複数回答)
上記のような取り組み姿勢や環境の違いが、結果として生徒の満足度や成長実感にそのまま表れている。探究学習を通して「満足している」「成長を感じた」「社会に役立つ学習だと感じた」と答えた生徒の割合は、総じてアーバンよりエリアが高い結果となった。
地域社会との距離感と挑戦する敷居の高低が影響か
リクルートキャリアガイダンス459号(2026年7月発行号)に掲載された、青森大学社会学部石井重成准教授のインタビューを参考に供したい(※1)。一般社団法人地域・人材共創機構が2019年に発行したローカルキャリア白書によると、東京で働く人と人口数万人規模の地方都市で働く人の意識を比較したところ、「働きやすさ」「働きがい」の指標は両者に大きな違いはなかったが、「自分の仕事が周りに影響を与えているか」という問いに対しては、地方で働く人のほうが高い結果が出たという。石井氏はこの要因について、「地方という環境の特性による」ものとし、コミュニティーに占める一人の重み、即ち自分の役割の大きさと、人手不足が叫ばれるなか、圧倒的に「バッターボックスに立つ機会が多い」ことを挙げている。
こうした労働社会の状況は、そのまま探究学習における影響力や「まずやってみる」という機会にもつながるのではないか。コミュニティーがコンパクトだからこそ学外接点との距離も近く、そこから機会を得て手足を動かし、その反響を得、課題や打ち手を考え直したり調整したりするといったプロセスの回しやすさが、エリアにはあるとは言えないだろうか。
地方は選択肢が限られている、都市部のほうが何かと機会が多そうだ、というのは、就業でも教育でもよく言われるところだ。しかし探究学習という一点においては、地域社会との距離感や課題のリアリティの高さゆえか、地方の高校生のほうがより満足度・成長度の高い探究学習を実現できている現状の可能性が示唆される。逆に言えば、大都市圏の高校生は、情報量が多すぎるなかコミュニティー感覚が相対的に希薄で、情報を精査する自分なりのアンテナなしには満足度の高い探究が実現しづらいのかもしれない。あるいは、都市部ならではの探究学習のあり方は、地方のそれとは少々異なる性質を持つのかもしれない。
学習効果を高める鍵は「主体性」と「学外接点」
最後に、どのような条件が探究学習の満足度をより高めるのかについて考察したい(図表3)。
まず、テーマ設定の主体性である。テーマを「自分の興味関心から自分で選んだ」生徒(「満足・計」の81.2%、「不満・計」の49.5%)は、「先生や学校から指示された」生徒(同18.8%、50.5%)と比較して、満足度や成長実感が顕著に高い。
そして、学外との接点だ。学外の方との接触があった生徒(「満足・計」の64.7%、「不満・計」の50.3%)のほうが、接触がなかった生徒よりも満足度が高い傾向がある。なお、「満足」に絞ると、「学外の方と一緒に授業を進めた」という最も調整が困難な経験をした生徒が1576名中345名(21.9%)と、他の属性に比べて極めて高い(「やや満足」8.3%、「どちらとも言えない」4.6%、「やや不満」6.3%、「不満」6.5%)。また、「学外の方と一緒に授業を進めた」609名のうち、345名(56.7%)が「満足」しているということにもなる。普段関わりが薄いであろう学外の人と協働し、社会からのフィードバックを得ながら正解のない自己の問いを深めていくプロセスは、困難もあるかもしれないが、経験値という意味でも意義深く、刺激に満ちたものなのではないだろうか。
地方の高校生のほうが、「主体的なテーマ設定」「学外接点」において相対的にスコアが高く、ゆえに探究学習に対する成長実感や満足度が高い傾向が見られる。その理由は述べてきた通りだ。
特に「学外接点」については、「良い探究」の定義を有識者に伺うインタビュー企画でもよく話題になるところである。NPO法人カタリバの山田将平氏は、インタビューのなかで、「高校生は多様な大人との関わりや協働により自己肯定感や意欲が高まる傾向がある」と述べている(※3)。
以上、探究学習の現在地を見てきた。高校生の探究学習は既に広く行われており、生徒自身も成長を感じる良い機会となっている。地域差で見るとアーバンよりもエリアのほうが探究学習の成果が出ているように見受けられる。そしてその効果を最大化するためには、「生徒自身が興味のあるテーマを自分で選ぶこと」と、「学外の人と関わって探究を進めること」が非常に重要であると言える。いずれも高校教員やコーディネーター等の介在が不可欠な点ではないだろうか。
引用文献等
- リクルートキャリアガイダンス 459号(2026年7月20日発行)20P
記事 「地域を出るか、残るか」の二択を超えて ローカルキャリアという歩み方
https://souken.shingakunet.com/publication/career_g/2026/07/2026_cg459_07.pdf - 【interview】Will・Action・Reflectionで紡ぐマイプロジェクト
https://souken.shingakunet.com/higher/2026/06/post-3563.html
参考文献
ローカルキャリア白書 一般社団法人 地域・人材共創機構(2019年4月30日発行)

