【interview】Will・Action・Reflectionで紡ぐマイプロジェクト


本稿では探究学習の今とこれからについて有識者・実践者にインタビューし、質の高い良い探究とは何か、どのように実現できるのか、推進校の特徴は何か等を探る。

POINT
  • 「全国高校生マイプロジェクトアワード」の目的は探究評価ではなく探究の深化支援。自分の学びを深める仕組みや仕掛けが随所に見られる
  • カタリバが定義する「良い探究」は「Will(意志)」「Action(行動)」「Reflection(振り返り)」の3つのサイクルで成立する
  • 「良い探究」の先には、生徒自身の「ウェルビーイング」の実現があり、自らの人生を主体的に柔軟に切り開くキャリアレジリエンスが育つ
  • 多様な大人との関わりや協働により自己肯定感や意欲が高まる

認定NPO法人カタリバ

山田将平 氏

自らの意欲を出発点にしながら、課題を解決し、同時に自分自身も変わっていくような学び方やチャレンジが各地に広がることを目指し大学時代から活動。2015年からNPO法人カタリバに入職。「中高生の秘密基地」b-labのスタッフとして勤務後、マイプロジェクト事務局へ。
高校連携、自治体連携、企業連携などの立ち上げ業務を担当。2024年4月より事業責任者。
「『「探究」の現在地とこれから 高等学校 探究時代のキャリア教育と教科学習のデザイン』 (分担執筆・明治図書・2025年)」



―「全国高校生マイプロジェクトアワード」はどのように高校生の探究を支援しているのでしょうか。

 「全国高校生マイプロジェクトアワード」(以下、マイプロ)は、単なる優劣を競うコンテストではありません。その本質は「学びの祭典」であり、高校生が自らのプロジェクトやその過程における気づきや学びを言語化し、対話を通じてプロジェクトや自分自身の「その後」につなげる機会を提供することにあります。

 全体のプロセスは、エントリーから始まり、書類選考、地域Summit、そして全国Summitへと進みます(図1)。特筆すべきは、エントリー数約3500件に対し、2000件以上が書類選考を通過する点です。これは、「一人でも多くの高校生に、自分の言葉で発表し、対話する機会を届けたい」という非営利団体としての理念があるからです。


図1 2025年度マイプロジェクトアワードの構造と実績
図1 2025年度マイプロジェクトアワードの構造と実績

 選考基準においても「評価」という言葉を避け、「推薦の視点」という表現を用いています。具体的には、「主体性」「共生・協働」「振り返り・内省」「学び」という4つの観点が設定されています。特に「振り返り・内省」を重視しており、活動そのものを自分にとっての経験や価値に読み替える機会として利活用してもらうことで、たとえ選考を通過しなかったとしても、生徒にとってのプラスが生まれる可能性を残したいと考えて全体プロセスを設計しています。

 選考を目的としない「地域Summit」も重要なプロセスです。ここでは、勝ち負けを意識しすぎず、自分のその後につながるヒントを深めることができ、参加した高校生の多くが、他者の視点に触れることで新たな刺激や学ぶ意欲を得て、自分なりの一歩を踏み出しています。ある意味では、地域Summitでの発表対話こそが、最も大事にしているポイントでもあります。

―支援の立場から考える「良い探究」とは何でしょうか。

 「良い探究」の先には、生徒自身の「ウェルビーイング」の実現があるのではないかと考えています。それは、不確実な社会において「自分らしさ」を構成し続け、しなやかに生き抜くための土台を築くことです。

 この「土台」を形成する要素として、「Will(意志)」「Action(行動)」「Reflection(振り返り)」の3つのサイクルがあると考えます。通常の教科教育が「教科固有の見方・考え方」をベースにしていて、それは各自の興味関心を育むという意味もあります。それと同時に総合的な探究の時間において生徒自身の「Will」を大切にすることで、よりよい自己の生き方につながっていくのではないでしょうか。


図2 ウェルビーイングの土台となる要素
図2 ウェルビーイングの土台となる要素

 昨年度の調査から探究の実践を深めた高校生は「キャリアレジリエンス(キャリア上のリスクに対応する力)」が高い傾向があることが分かりました。未知の課題に直面し、他者と協力しながら試行錯誤する経験こそが、問題を解決するスキルや新規性への許容度を育むトレーニングとなるのです。

 地域別の傾向としては、地方では地域社会をフィールドにした「まちづくり」的なテーマも含むものが多く、都市部では多様なテーマが見られるといった、環境に応じた特徴も現れています。

―全国の多様な探究学習を支援するなかで、「良い探究」が創出される際の特徴はありますか。

 高校生が一歩踏み出すためには、日常の中に「応援される関係性」があるかどうかが重要です。プロボノで支援いただいているアクセンチュア株式会社さんとの共同調査結果として、周囲に何かしらのサポートをしてくれる大人が「いない」と答えた生徒の約6割が、探究において「何も進めることができていない」状況にあります。

 良い探究を創出している学校の特徴は、組織や仕組みとして「安心して話せる雰囲気」を醸成している点にあります。

 具体的には、まず多様な大人の関わりがあることです。教師や保護者、コーディネーターに後押しされる関係性があり、さらに地域社会の人といった「部外者の大人」が介在しフラットに接することで、生徒が一歩踏み出しやすくなる事例を聞いています。

 そして縦の繋がりの活用という観点も見逃せません。先輩が自らの探究の姿を見せ、後輩がそれを引き継いだり、憧れを抱いたりすることもポイントになるようです。思春期の心理として、大人の指導よりも同世代や少し年上の姿に触発される「化学反応」のほうが、主体性を引き出すトリガーになりやすい場合もあります。

―探究はこれからどうなっていくと思いますか。

 探究学習が全国的に普及する一方で、新たな歪みも生じています。その一つが、学校と地域の連携に関する難しさの問題です。「外に出すこと」「外に出ること」自体が目的化してしまうと、リアルに触れることの意味が半減するだけでなく、地域側の負担にもなってしまいます。こういった状況は改善していけるとよいのではないかと考えています。学校・地域側が共にどういう目的でどういう連携をするかのイメージを合わせられることがまず大切になるのではないでしょうか。

 探究学習を一部の意識の高い生徒だけのものにするのではなく、しなやかに人生を歩むための「普遍的な学び」として定着させるために、社会全体で高校生の挑戦を支えるエコシステムを構築する意味合いはあるのではないかと感じています。カタリバも、協働している学校や地域と共に実践知を積み上げていきます。


取材・文/研究員 鹿島 梓(2026/6/25)