社会実装も意識した課題研究を通じて社会課題の解決に挑戦できるイノベーター育成を目指す/山形県立米沢興譲館高等学校
【DATA】山形県立米沢興譲館高等学校
生徒数:586名(2026年4月7日時点)
学科:普通科、国際探究科(国際科)、理数探究科(理数科)

山形県立米沢興譲館高等学校(山形県米沢市)は、2026年度でスーパーサイエンスハイスクール(以下、SSH)指定18年目を迎えた高校だ。「未来に果敢に挑戦できる科学技術人材の育成」を目標に掲げる同校の科学教育について、2026年3月まで理数科主任・SSH事務局長を務めた髙橋 渉氏に伺った。
大学・地域と連携した体験的な学びを通じて社会課題を自分ごととして捉える
同校は普通科(入学定員120名)と探究科(同80名)からなり、2年次より普通科は文系と理系、探究科は国際探究科(国際科)と理数探究科(理数科)に分かれる。SSH第Ⅳ期の目標「社会課題を『自分ごと』として捉え、解決に向けて広い視野を持ち、果敢に挑戦できるサイエンス・イノベーターの育成」のもと、これら4つの科・系で共通して注力しているのが、課題研究を中心とした探究的な学びだ。
まず、1年次に学校設定科目「異分野融合サイエンス」(2単位)にて、9つのコース(図表1)から半期ごとに1コース、計2コースを生徒が選び、フィールドワークや外部講師による講義、東京探究研修等に取り組む。体験的な活動を通じて当該分野に関して視野を広げながら、社会課題を自分ごととして捉えていくプロセスだ。加えて、科目内で探究の考え方や手法、論理思考のフレームワーク、デザイン思考等を、また、学校設定科目「データサイエンス」(4単位)にて統計処理やグラフ作成、データ分析等の基礎も学んでいく。

そして2年次にはコースを1つ選び、1年次の活動を通じて興味・関心を持ったテーマについてグループないし個人で課題研究を行う(学校設定科目「スーパーサイエンスリサーチ」。普通科1単位、探究科2単位)。
これらの取り組みの要となるのが、全教員が9コースのいずれかを担当し指導を行う「ESDエキスパート制」である。1コースにつき教員4~6名でチームを組み、生徒の課題研究に伴走する。「多様な視点から助言できるように担当領域に対する教員達の知見に幅を持たせたチームを組むとともに、どのコースにもできる限り前年度の担当者を入れて指導の継続・蓄積ができるようにしています」と髙橋氏は説明する。
指導において重視しているのは「研究の実現可能性や社会実装の観点を伝えつつ、伴走的な視点で生徒の困り感を聞き、助言すること」(髙橋氏)とのことだ。その指導が実り、近年、特に自然科学系の研究において、高度な課題設定や、研究発表で社会実装に向けた展望を述べる生徒が増えてきているという。
科学系部活動等でより意欲ある生徒を支援
加えて、理数探究科では学校設定科目「サイエンスコミュニケーションⅠ・Ⅱ」「スーパーサイエンスⅠ・Ⅱ」を設け、さらなる科学教育に取り組んでいる(いずれも2・3年次に各1単位)。
「サイエンスコミュニケーション」では、より詳細なデータサイエンスや英語での研究発表・質疑応答を目指し、山形大学工学部の留学生をTAに迎えての表現力の研鑽等に取り組む。また、メールやオンライン会議ツールを用いた外部とのやりとりの作法等も学ぶ。
「スーパーサイエンス」では、2年次に同大学の研究室での実験講座や連携企業によるデータサイエンス講座、関西方面サイエンス研修、台湾海外研修旅行等でリアルな研究の現場に触れ、3年次は国際科学技術コンテスト水準の「ハイレベル科学実験・演習講座」等に取り組む。「『物理チャレンジ』『化学グランプリ』『日本生物学オリンピック』のいずれかに挑戦できるよう仕組みを整え、原則、参加を促しています」と髙橋氏は説明する。
さらに、科学分野の研究により多くの時間を割きたい生徒に向けて設けているのが、部活動「コアスーパーサイエンスクラブ」だ。顧問6名のもと約50名が研究に取り組み、外部団体との連携やコンテストへの参加等も積極的に行っている。また、部員は任意で2年次の1年間、大学と連携した「サイエンスリーダー育成塾」に入塾し、大学研究室での研究に取り組むことができる仕組みを整えている。

研究や社会での活動に生きるスキルが涵養されている
一連のカリキュラム、特に課題研究を通じて培われるものとして特に髙橋氏が指摘するのが、生徒の学ぶ意欲や自己効力感の高まりだ。「学科の枠を外した課題研究のグループ編成や、科学系だけでなく国際系や地域振興等、研究課題の幅広さが生徒達の刺激になっています。その結果、海外も含めた外部活動に参加する生徒や外部活動での受賞の増加、国公立大志望者における志望校合格率の向上といった成果も出てきています」と髙橋氏は話す。
加えて、例年、2・3年生の女子生徒の6割近く、そして、2・3年生全体では6.5割~7割近くが理系を志すことも同校の特徴であり、長年の取り組みの成果だ。「理工系分野で活躍する女性による講演会を毎年7月に実施し、毎年のSSH講演会でも2~3年に一度は女性講師を招いて女性のロールモデルを見せる等の取り組みを行っています。これらに加え、課題研究のステージ発表やポスターセッションで上級生の女子生徒が生き生きと発表している姿が、理工系分野や理数科目に関心を持つ下級生の女子生徒の理系選択を後押ししていると感じます」と髙橋氏は分析する。
科学教育のカリキュラムを確立し、一定の成果を上げている同校。今後の取り組みとして髙橋氏が挙げるキーワードは「地域との関わり」だ。「人口減や人材流出が進むこの地域において、地域外に出て行ったとしても地域との関わりや地域への意識を持ち続けられるような科学技術人材を育成していくことが、本校の役割だと考えています。地域の活性化に寄与するイノベーターやアントレプレナーが生まれる取り組みを考えていければ」とこれからを見据えている。
※所属・肩書は取材時点(2026年3月)のもの
(文/浅田夕香)
【印刷用記事】
社会実装も意識した課題研究を通じて社会課題の解決に挑戦できるイノベーター育成を目指す/山形県立米沢興譲館高等学校
