探究力とグローバル感覚を備え科学を通じて社会に貢献できる人材を育成/文京学院大学女子高等学校
【DATA】文京学院大学女子高等学校
生徒数:513名(2026年5月1日時点)
学科:普通科(理数キャリアコース、国際教養コース)

文京学院大学女子高等学校(東京都文京区)は、普通科に「理数キャリアコース」を設け、「国際性と探究力を備えた研究者」の育成を目指して科学教育に取り組んでいる。その詳細について、探究部 部長・岩川暢澄氏に伺った。
専門性発揮の土台として「探究力」を重視
同校は、中学校の入学定員を120名、高校からの入学定員を125名とする中高一貫校だ。高校1年次より理数キャリアコースと国際教養コースの2コースに分かれ、例年、2クラス60名程度が理数キャリアコースに進級・入学する。
理系キャリアコースで育成を目指す人材像を「国際性と探究力を備えた研究者」とする意図を、岩川氏は次のように説明する。
「本コースの生徒の進路意向は、理工学分野から看護・栄養分野まで幅広いのが特徴ですが、どの分野に進んだとしても、理系の専門知識を持って社会に関わる人として、探究力を養い、科学を通して社会に貢献できるようにという考えで教育活動を行っています」
その教育の核に据えているのが、探究活動だ。
「探究で最も重要な、主体的に行動して疑問を見つけ、それを解決するために試行錯誤すること、そして、活動に伴い海外も含めた外部と積極的に関わること。これらが将来、専門知識を活用して社会と関わっていく際に求められる力と考え、積極的に取り組んでいます」
綿密かつ多様な育成プログラムを構築
その言葉の通り、同コースの探究活動は、正課科目と課外プログラムを組み合わせて探究力を磨き、英語も用いながら外部と関わる機会を多く設けている(図表)。

まず、正課では3年間で計6単位、探究活動に取り組む科目を設定。1年次は「学際探究」(2単位)にて「疑問や課題を見つける」→「実験等をしながら情報収集する」→「得た情報を整理・分析する」→「結果をまとめ・発表する」という探究のサイクルを1段階ずつ経験する課題やミニ課題研究に取り組み、探究のサイクルを回す練習を重ねる。その中でデータの測定や統計的な処理・解析、プレゼンテーションやポスター作りの基礎等、研究や発表に必要な手法も学んでいく。また、外部の研究発表会に最低1回は見学に行くこととし、良い研究とは何かを知る機会としている。
そして2年次には、「理数探究」「総合的な探究の時間」(各1単位)にて各自でテーマを決め、研究に取り組む。その成果は日本語のポスターとプレゼンテーションにまとめ、2年次の終わりに校内の発表会で発表。外部の研究発表会で最低1回は発表することも課している。
さらに、3年次には研究内容を英語のポスターとプレゼンテーションにまとめ、タイの高校との科学交流プログラムにて発表。その後、論文ないしレポートを執筆し、3年次の終わりには研究内容を日本語と英語でそれぞれ100秒にまとめ、プレゼンテーションを行う。
この間、2年次には課題研究と並行して物理、化学、生物の実験演習を行い、年間8本程度、大学の基礎実験のレポートと同等の内容・フォーマットでのレポート作成に取り組み、研究内容を文章にまとめる技術も磨く。「こうして生徒達は、探究力に加え、自身の研究を要約して魅力的に相手に伝える方法をしっかりと学んでから卒業していきます」と岩川氏は説明する。
また、タイの高校との科学交流プログラムでは、例年、12~1月に理数キャリアーコースの2年生12名が提携先のプリンセス・チュラポーン科学高校ペッチャブリー校を訪問して英語で研究発表や交流を行うほか、6~7月には同校の生徒達を日本に招き、3年生が英語で研究発表を行う。
「タイの生徒達の来日時には、3学年全員が運営や受け入れに携わります。英語を用いて海外と関わる機会となっていますし、特に現地を訪問した12名は大学進学後の留学率が高く、プログラムをきっかけに研究職を志す生徒もいる等、将来の方向性を考える機会の一つになっているようです」
培った力は進路選択にも生かされる
目標とする「主体的に行動して疑問を見つけ、それを解決するために試行錯誤すること」のできる生徒の育成に手応えを得ている同校。加えて、岩川氏が強調するのが「探究を通じて社会に関わった生徒は、自分自身と社会を向き合わせることもできるようになる」ということだ。
「探究で培った情報を見分け、選別する力や疑問を持つ力をもとに、大学やその先で取り組みたいことの整理や、大学が発信する情報と自分の志向の合致度合いの判断等ができるようになり、大学・学部を納得して決められる生徒が増えています。本コースのプログラムや大学進学後の満足度も高く、結果、大学でも活躍している生徒が多く見られます」と岩川氏は話す。実際、生徒へのアンケートでは、「探究が入試に役立った」以上に、「進路検討において探究で培った力が役立った」という項目に肯定的回答をする生徒の割合が高いそうだ。
同コースのカリキュラムは、毎年、社会動向や生徒の傾向に応じて改善を図っているという。今後の取り組みの一つとして、岩川氏は「AIの活用に関する学びも取り入れ、探究に生かしていきたい」と話す。そして、変わらず重視したいこととして「自分自身で様々なことに疑問を持って行動できる生徒を育てること」を挙げる。「情報をまとめ、考察すること等の一部はAIが代替できる現状において、これからの社会で求められるのは、自分で疑問を持って行動できるようになることだと考えます。そのために、高校時代に多様な経験を積みながら、意思を持って取り組める何かを見つけられるような教育をしていきたい」と岩川氏。同校の科学教育のさらなる充実に期待が膨らむ。
(文/浅田夕香)
