「理科×工業」等のクロスカリキュラムを通じて理論と実践を往還できるSTEAM人材を育成/京都市立京都工学院高等学校
【DATA】京都市立京都工学院高等学校
生徒数:690名(2026年5月1日時点)
学科:フロンティア理数科、プロジェクト工学科(ものづくり分野系統、まちづくり分野系統)

京都市立京都工学院高等学校(京都府京都市)は、2016年に洛陽工業高校と伏見工業高校を統合・再編し、工学系人材の育成を目的に設立された専門高校だ。開校以来、「アイディアをカタチに」できる資質・能力を身につけ、ものづくりやまちづくりを通じて社会に貢献できる人材を育成するべく、STEAM教育やPBLに重点を置いた教育に取り組んでいる。そのさらなる充実のため、2023年度からはスーパーサイエンスハイスクールの指定も受けている同校の教育について、飯澤功氏と大下寛司氏に伺った。
理論と実践を往還するクロス授業を開発・実践
大学進学を目指す「フロンティア理数科」(入学定員60名)と、ものづくりやまちづくり分野の専門知識・技術を学び、就職・進学を目指す「プロジェクト工学科」(同180名)の2学科からなる同校。STEAM人材を「各分野を横断して俯瞰的に物事を捉え、理論と実践を往還しながら行動し、課題解決することができる理工系人材」と定義し、その資質・能力を育成するため、理科、数学、工業、情報等の科目を横断・再構築したクロスカリキュラムと、その実践となる探究活動「プロジェクトゼミ」に力を入れている。
「理論に強みを持つフロンティア理数科においては理論が実践の場でどのように応用されているのか、実践に強みを持つプロジェクト工学科においては実践の背景にある理論を知ることで、将来、新たな応用ができる突き抜けた人材になれるのではないかという仮説のもと、理論と実践を往還する授業づくりに取り組んでいます。また、学びに対するモチベーションを高めるうえでも、理論と実践のつながりを知ることは有効だと考えています」と飯澤氏はクロスカリキュラムの狙いを説明する。
具体的には、学校設定教科「STEAM」として、理科の各科目×工業、情報×物理・数学等の授業を開発(図表)。例えば、フロンティア理数科2年生を対象とした「地学×工業」のクロス授業では、堆積物が堆積岩となる過程で起こるセメント化作用について、実際にセメントペーストを製作・観察して現象をモデル化。併せて、日本の建築物における石灰岩の重要性も学ぶ。こうした科目を「理科基礎」や「情報」の代替科目としてフロンティア理数科では計11単位、プロジェクト工学科では計12単位必修としている。

そして、このクロス授業と並行して取り組むのが探究活動「プロジェクトゼミ」だ。まず、1年次の「プロジェクトZERO」(2単位)では、探究の基礎の学習として、工学的な実験のプロセスを学ぶ「STEAM チャレンジ」と、修学旅行先で探究サイクルを実践するという大きく2つの取り組みを行う。前者は、2025年度はフロンティア理数科で宇宙エレベーターロボット、プロジェクト工学科ものづくり分野系統で橋梁模型、まちづくり分野系統で紙製の飛行機を製作し、それぞれ、パラメーターを様々に変えて実験を実施。結果との因果関係を分析して現象に影響を与える直接的なパラメーターを特定し、現象の法則性を見いだした。後者は、修学旅行先で情報収集を行い、帰校後課題設定を行う形で、探究のサイクルを回す練習を行う。
こうして探究の基礎を学んだうえで、2年次の「プロジェクトゼミⅠ」(3単位)では、学科・分野を横断して6つのプロジェクト(宇宙・世界・日本・京都・学校・家)に分かれ、6~7名程度でチームを組んで課題を設定し探究活動を行う。さらに、プロジェクト工学科では、3年次の「プロジェクトゼミⅡ」(2単位)で所属分野・領域別に設定されたテーマのもと、チームを組んで課題を設定し、研究に取り組む。
生徒の「アイディアをカタチに」する行動が強化
これらの取り組みを経て、生徒達にはPBLのサイクルや、アイデアをもとに「まずは作ってみる」という軽やかさが培われるという。「探究活動以外でもPBLのサイクルを回すことができるようになりますし、共同研究先の大学の先生方からは、『まずは手を動かしてみることができるのが工学院の生徒の強みだ』とよく言われます」と大下氏。飯澤氏も、「フロンティア理数科の生徒であっても、頭で考えて『無理そうだからやめておこう』となることがなく、『まずはやってみて、ダメなら原因を分析して、改良できそうならしてみよう』という軽やかさが3年間で強化されます」と続ける。
また、学校評価アンケートにて「本校での学びは卒業後にも役立つ」という項目への肯定的な回答が9割を超えていることや、プロジェクト工学科における大学進学率の上昇等も、理論と実践の往還の効果と見ているという。
ビジョンや野心を持って挑戦できる人材育成を目指す
今後もクロスカリキュラムのブラッシュアップを続けていくという同校。今後の理工系人材育成のキーワードとして、飯澤氏は「挑戦」を挙げる。「変化のスピードが速い現代においては、『変化に対応する』という考え方では遅いと感じています。誰しもがビジョンを持ち、やりたいことや実現したい技術ありきで社会や組織を変えていく方法を設計し、実現させることで、組織、ひいては社会を変え、社会に貢献する。そのような人材を育てていくには、野心を持って挑戦していく気概を育てていくことが大事だと思っています」と飯澤氏。同校では、教育課程外での探究活動を希望する生徒に対し、場所と指導教員、必要経費を支援する「自主プロジェクト」という取り組みを行っている。「まずは、こうした仕組みを生徒がより活用できるようにしていきたい」と大下氏は続ける。
最後に、大学に望むこととして、飯澤氏は次の2点を挙げた。「1つは、入試で探究活動を評価する際、成果に限らず過程にも目を向けていただきたい。課題に対してどのように取り組んだのか、そして、そこから何を学んだのかというプロジェクト学習での学びに目を向ける選抜をしていただけるといいなと思います。もう1つは、高校で手を動かして探究に取り組んできた生徒が大学でも試行錯誤できるよう、ラボや工房等、手を動かせる環境をより多くの大学に整備していただきたいと思います」。
(文/浅田夕香)
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