自然科学と人文学の分野から環境にアプローチ 文理複眼による他者との共創でグローカルな課題を解決/成蹊大学 国際共創学部

成蹊大学は2026年4月、文理複眼をコンセプトの1つとして、
自然科学と人文学の両分野から自然環境・社会環境にアプローチする「国際共創学部」を開設。
学部長の藤原 均氏、学長室総合企画課長の上野剛司氏に文理横断教育の狙いを聞いた。


【DATA】成蹊大学
国際共創学部国際共創学科 定員150名
東京都武蔵野市

国際共創学部 学部長 藤原 均 氏、学長室総合企画課長 上野剛司 氏


ESDの伝統を礎に文理横断の国際系学部設置

 新学部設置の経緯について上野氏は、「2022年度に時を同じくして新たな学園長と学長が就任し、学園と大学のグローバル化推進の方針を強く打ち出したのが始まり」と話す。既存のグローバル教育プログラムの発展的な展開を検討するところから議論が始まり、その後、新学部の設置と新しいグローバル教育プログラムへの刷新の2つに枝分かれする形となった。

 国際系学部は既に他大学の多くで設置されてきたことから、成蹊ならではの強みや特徴を持ったユニークな学部にしようと議論を重ねた。成蹊学園/大学の起源である成蹊実務学校(1912年創立)や旧制成蹊高等学校(1925年開設)では、自然観察や体験型の学習を重視する等、成蹊学園全体でESD(持続可能な開発のための教育)に通じる教育が実施されてきた。現代社会に山積する課題の中には、ローカルとグローバルの両方の視点から問題の本質を捉える必要があること、科学・技術の知識のほかに政治や文化の理解が必要なものもあることから、従来の文系・理系の枠組みにとらわれない学びを実現し、ESDをさらに発展させることが成蹊ならではの教育になると考えた。

 新たなグリーン人材の育成を目指す新学部の設置計画は、「大学・高専機能強化支援事業」に選定されている。新学部の設置に向けた文科省事前相談の際には「学位分野が“理学関係”と“文学関係”の複合分野で1学部1学科をなす学部の例があまりないため不安もあった」(上野氏)と言うが、文理横断教育に対する追い風も手伝ってか、2025年8月に「届出による設置が可能」の判定を得た。

コンセプトは文理複眼をはじめとする3つの複眼思考

 国際共創学部では、国際共創学科(入学定員150名)の1学科の下に、「国際日本学専攻」(募集人員75名)、「環境サステナビリティ学専攻」(同75名)の2専攻を設けた。学びの特徴として、「文系と理系」「ローカルとグローバル」「理論と実践」の3つの複眼思考をコンセプトに据えた(図表1)。


図表1 3つの複眼思考のコンセプト


 藤原氏は学部名の“共創”に込めた想いを、「必ずしも文理両方の能力を持つ“何でもできる人”である必要はなく、文理複眼的な視点を持ち、自分の得意分野を生かしながら他者と協働して課題解決に貢献できる人を世に送り出したい」と話す。そのための「実践」の力を養うものとして、特にフィールドワークを重視している。

 上野氏によると、「この学部のポイントは、2学科構成ではなく1学科の下に2専攻を置き、共通のカリキュラムで学びつつも、専攻ごとに専門性を身につけられること」だという。主な専門科目を見ると(図表2)、成蹊の少人数教育を具現化する「ゼミナール科目」が1~4年次全てに配置されている。「基盤科目」の「共通文理」の必修科目では、(英語による)コミュニケーション力や文理共通のデータ分析の基礎力を磨く。「発展科目」では専門性を深めることを目的として国際日本学に関係したところでは「文化」、環境サステナビリティ学に関係したところでは「環境」、両専攻に共通する領域として「地理・地域」の科目を配置している」(藤原氏)。


図表 2 科目区分と専攻別必要単位数


 「フィールド・実践科目」も科目区分として明確に設定。キャンパスのある武蔵野市や東京近郊はもとより、北海道帯広市などとの連携協定による国内フィールドワークや、国際協力機構(JICA)との連携に基づく海外フィールドワーク等、科目も多彩だ。

 卒業生の活躍の場としては、民間企業のグローバル部門・サステナビリティ推進部門をはじめ、国際機関や国・地方自治体での国際交流・環境保全・防災関連部門、日本語教師、地域作りの団体等を想定している。また、さらに専門性を深めるために国内外の大学の大学院へ進学することも進路の1つと思われる。

多様な学生の獲得目指す独自入試

 国際共創学部の一般選抜(大学入学共通テスト利用を除く)には、A方式(3教科型学部個別入試)とE方式(2教科型全学部統一入試)がある(図表3)。藤原氏は、「E方式は全学部共通問題で、かつ、2教科型なので受験しやすく、他学部との併願もできる入試。A方式は3教科の独自入試で、国語、外国語は必須だが、残り1科目については、地理歴史・公民・数学の各教科に設定された5科目の中から1科目を選択できるようにした」と特徴を説明する。さらに「環境サステナビリティ学専攻を志望する場合、数学が得意ならE方式、そうでないなら数学を選択しないA方式と、いろいろな選択肢を作り、できるだけ多様な人に来てもらえる入試を設計した」と続ける。


図表3 一般選抜(大学入学共通テスト利用を除く)の教科


 一方上野氏は、「一般論ではあるが、文理横断教育を掲げる多くの大学・学部では、数学などの理系科目をどのように入試とカリキュラムの双方で設定するか、多様な学生の受け入れと入学後の学修との両立が難しい側面もあるのではないか」と指摘する。そのうえで「国際共創学部では入試段階で過度に絞り込むのではなく、入学後の基礎教育と段階的なカリキュラム設計により、“入学後に育てる”方針をとっている」と語る。

 藤原氏も「受験生からは理系科目への不安を問われることは多いが、入学後の履修状況を見ると国際日本学専攻の学生でも数学科目を履修している。基礎から無理なく接続できる科目配置や、社会課題と結びつけて学ばせる工夫などにより、『できるかどうか』ではなく『必要だから学ぶ』という意識で選択している学生が多い。こうした設計により、文理の枠を超えた学びが実現できていると実感している」と話す。

 なお、国際共創学部の初年度(2026年度)の一般選抜志願倍率は37.1倍と、滑り出しは好調だ。

 最後に藤原氏は、「成蹊で一番小さい学部だが、『成蹊の国際共創学部ってすごいよね』と思ってもらえるような学部を目指したい。既存の学びの枠組みとは違ったところで、自分の好きなことを見つけて没頭してみたい、そういう学生にぜひ来てもらいたい」と意欲を示した。


(文/能地泰代)





【印刷用記事】
自然科学と人文学の分野から環境にアプローチ 文理複眼による他者との共創でグローカルな課題を解決/成蹊大学 国際共創学部