企業のヒアリングからカリキュラムを独自設計 女子大の強みを生かしたアプローチで求められる人材を育成/昭和女子大学 総合情報学部

【DATA】昭和女子大学 総合情報学部
データサイエンス学科 定員60名
デジタルイノベーション学科 定員50名
東京都世田谷区

昭和女子大学 総合情報学部 学部長
山中 健太郎 氏


女子学生に潜むデータサイエンスへの高い学習意欲

 昭和女子大学は2026年4月に7つ目の学部となる「総合情報学部」を開設した。文系の女子大学として本格的なデータサイエンス系学部設置という先導的な挑戦だ。総合情報学部にはデータサイエンス学科とデジタルイノベーション学科の2学科を設置。データサイエンス学科はAIや統計学を活用してデータを分析・予測し意思決定を実践する。デジタルイノベーション学科はICTやコンピュータサイエンスの知識を駆使して新たな価値の提案・実装を担う。文系女子大の理系学部が担う役割と意義を、総合情報学部学部長の山中 健太郎氏に聞いた。

 実は昭和女子大学では2022年度から全学部生を対象に「データサイエンス副専攻プログラム」を開始している。当初は学生にどれほどの需要があるか未知数だったが、前期、後期で開催された入門講座にはそれぞれ約300名が登録したという。

 「日本語日本文学科など、一見情報科学とは関連が薄そうな学科の学生も積極的に履修していました。最終的に毎年30名ほどの学生がPythonを用いた高度なプログラミング演習のレベルまで進み、データサイエンス系への学生の興味の高さに手ごたえを得ました」と山中氏は語る。この副専攻での実績が需要の証明となり、理系学部設置へと踏み出す大きな推進力となった。

産業界のリアルな声から導き出された「2学科体制」の決断

 実は、当初の新学科設置は「データサイエンス学科」のみの構想だったという。しかし新学部を設計するにあたり、山中氏ら準備委員会のメンバーは、DXを推進する企業を中心に多数の企業へ直接ヒアリングを実施。そこで見えてきたのは、企業のビジネスとエンジニアを繋ぎ、提案から実装までを主導できる「橋渡し役」が圧倒的に不足しているという現場の切実な課題だ。

 「大企業以外では、自社内でゼロからデジタル人材を育成する余裕がない。現場のビジネス課題を理解しITエンジニアに対して適切にシステム要件を落とし込める人材がいないという声が非常に多かった」(山中氏)

 この産業界のリアルな声を受け、急遽「デジタルイノベーション学科」の追加設置を決断した。

 2026年4月の入学志願者はともに定員を超えた。この2学科体制は受験生の多様なニーズも見事に捉えていることがわかる。

「デジタル技術×ソフトスキル×ドメイン知識」の三位一体教育

 昭和女子大学は総合情報学部の学びとして「デジタル技術」「ソフトスキル」「ドメイン知識」を掛け合わせた独自の文理融合カリキュラムを構築している。 特筆すべきは、1年次から必修化されている「ソフトスキル」の育成だ。論理的思考力、プロジェクト・マネジメント、チームビルディングなど、対人関係や組織を動かすヒューマンスキルを実践的に学ぶ。多様な意見を調整しチームをまとめてプロジェクトを推進する力こそが、理系分野における女性の大きな強みになると山中氏は強調する。さらに2年次からは、デジタル技術を「どの分野で生かすか」という「ドメイン知識」として、同大がこれまでの学部で実績のある「ビジネス」「健康」「心理」の3領域を設定。ビジネス分野ではマーケティングに加え、近年データ活用が急務となっている人事領域(ピープルアナリティクス)など組織の人的資源開発にも焦点を当てる。健康分野では、従業員の健康増進を図り生産性向上に繋げる「健康経営」の実践例やデータを利活用する手法を広く学ぶ。そして心理分野では、行動心理を分析し、コミュニケーション支援に応用する力を養う。これらを総合的に学び、4年次の「キャップストーン・プロジェクト」で実践的な社会課題の解決策へと昇華させる仕組みだ。


昭和女子大学 総合情報学部の文理融合カリキュラム


「数学の壁」を超える支援と、最新の教育環境を備えた新校舎

 文系の学生を理系分野へ導くにあたり、最大の障壁となるのが「数学への苦手意識」だろう。同大は、あえて入試科目において数学を必須とせず、志願者の裾野を大きく広げた。そのうえで、入学後に少人数クラスで高校数学の基礎から丁寧に学び直す質保証の体制を整えている。

 「実生活やドメインの専門領域で数学的知識がどう生きるのかを実感させながら段階的に教えることで、学生のモチベーションを維持していきたい」(山中氏)

 こうした教育を強力に後押しするため、総合情報学部の拠点となる新校舎「10号館」が完成。昭和女子大学の卒業生で世界的建築家の永山祐子氏が設計を手がけたこの校舎には、映像・デザイン・デジタル表現を実践的に学ぶ「デジタルスタジオ」や、学生同士の対話や協働を促す「ラーニングコモンズ」が設置されている。


昭和女子大学 「デジタルスタジオ」


持続可能な理系人材の輩出へ

 こうした同大の明確なビジョンに対する産業界の期待は高まっているようだ。学内の企業向け説明会では、学部発足前にも拘わらず、30社以上の企業が列をなし、企業からは、「専門性と創造性を備えたデジタル人材が育つことを楽しみにしている」といった期待の声が聞かれたという。

 「総合情報学部でデータやデジタル技術を学ぶだけでなく、それを社会のどこでどう使うかを考え、実行できる人材になってほしい。そして、学ぶことの面白さを実感し、さらに大学院などで深く研究したいと思う学生が出てくることも期待しています」(山中氏)

 社会のニーズを的確に捉え、女子大ならではの既存の強みを生かしながらデータサイエンス人材を育成する。昭和女子大学の総合情報学部2学科は、女子大の新しい未来を切り開くか。注目が集まっている。


(文/木原昌子)





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