地学地就の教育(カレッジマネジメント Vol.199 Jul.-Aug.2016)
一般的に、若者が地域間で移動するのは、「進学」「就職」「結婚」というライフイベント時が多いと言われている。特に大学進学の場面では、地元の大学に進みたいが、学びたい分野がない、あるいは卒業後の就職が心配という高校生の声を聞くことも少なくない。
政府が力を入れる地方創生の動きは2013年に「地(知)の拠点整備事業(COC)」として始まり、2015年には大学が地方公共団体や企業等と一緒になってその地域に必要な人材を育成することを支援する「地(知)の拠点大学による地方創生推進事業(COC+)」に発展した。全国で42件が採択され、様々な取り組みが始まっている。
国立大学も2016年からの第3期中期計画では、運営交付金の3つの重点支援枠が設定され、「主として地域に貢献する大学」「海外の大学と伍して教育・研究を行う大学」「特色ある専門分野に力を入れる大学」のいずれかに大学自らが手を上げる形となった。そのなかで、国立大学全86校のうち55校、全体の約3分の2が「主として地域に貢献する大学」に手を挙げた。こうした動きを見てみると、地方創生の起点として、大学が果たす役割への期待が大きいことが分かる。
個人的には、地方大学が生き残るには二つの道があると考えている。一つは、強力な個性を活かして全国から学生を集める大学である。そして、もう一つは地域の産業構造や人材ニーズに対応し、その地域で必要とされる人材を育成する大学である。今号の特集では、後者に注目した。これを地域で学び、地域に就職する「地学地就の教育」と呼び、戦略的に取り組んでいる大学の事例をリポートした。
また、地域の人材ニーズに合致した学部・学科の再編を行う大学が増えてきている。しかし、地域によって学問分野に偏りがあるように感じたため、どの地域にどの学問系統が集中し、不足しているかを進学総研が所有するデータに基づいて整理し、考察を加えてみた。本来であれば、これに地域の人材ニーズを掛け合わせて分析していきたいとことではあるが、このデータだけでも、ある程度地域ごとに過当競争(レッドオーシャン)になっている分野系統、白地(ブルーオーシャン)となっている分野系統を可視化できたのではないかと感じている。今後、各大学で学部・学科の再編を考える際の一助になれば幸いである。
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リクルート進学総研所長・カレッジマネジメント編集長
小林 浩