法人130周年、大学75周年に向けて「志」を明確化/神戸学院大学


画像 神戸学院大学キャンパス



神戸学院大学 学長 中村氏


グランドデザイン答申が契機に

 兵庫県神戸市に2つのキャンパスを置き、文理10学部を設けている私立総合大学の神戸学院大学は、2023年1月、2040年を見据えた長期ビジョン「KOBE GAKUIN INNOVATIVE VISION 2040-Leading to the Future『未来と繫がる改革ビジョン2040-人と、地域と、世界と繫がるために-』」(以下「改革ビジョン2040」)を公表した。

 改革ビジョン2040の策定プロジェクトが始まったのは2020年だったと、中村学長は振り返る。

 「当時の私は現代社会学部の学部長で、策定プロジェクトに直接関わってはいませんでした。しかし、関係者から聞いたところでは、きっかけの一つは中央教育審議会が2018年にとりまとめた『2040年に向けた高等教育のグランドデザイン』だったようです。2040年は学校法人創立130周年、大学創立75周年という節目とほぼ重なる時期でもあり、このタイミングに合わせて未来の神戸学院大学像を打ち出そうとする気運が、学内で盛り上がっていました。そして2020年に新型コロナウイルスの感染拡大が始まり、『神戸学院大学の志』を明確にする必要性はさらに高まったのです。そこで当時の学長だった佐藤雅美先生が主導し、改革ビジョン2040に関する議論が始まりました」

若手を中心としたグループで自由闊達に議論

 改革ビジョン2040に関する議論は、学長、副学長、事務局長で構成される「学長室会議」で開始された。そして2021年5月、田中康介副学長(経営学部教授)が座長を務めるワーキンググループが発足。教員からは副学長を含めた6人、職員からも6人が参加した。

 「参加メンバーは、当時の佐藤雅美前学長の指名によっており、各学部・各部署の代表を集めたわけではありませんでした。学内のさまざまな知見を生かしながらも、大学の将来を全学的見地から議論してもらうという意図で、比較的若手のメンバーで構成されていました。特に職員は、2040年の本学を担うであろう30~40代が中心になっていました。

 当時の議事録を読むと、皆が神戸学院大学の未来について熱心に、そして自由闊達に議論していた様子が伝わってきます。これは、メンバーを若手中心にした効果が表れたゆえかもしれません」

 ワーキンググループでは、18歳人口の動向や技術の進歩、長寿化などの社会変化を織り込みつつ議論を進めた。そして1年弱に渡って作業を続けて2022年3月に最終答申をまとめ、インフォーマルな会議体である「学部長懇談会」に提出したという。

 「まずは学部長たちから非公式な反応を集め、その後で各学部の教授会や各部局で議論する時間を設けて意見を集約してもらいました。私が学長に就任したのはこの時期です。そして6月、学部長や事務の役職者が参加している『総合企画会議』に提出し、若干の修正を加えた上で改革ビジョン2040の内容を決定しました。

 本学では、経営に関する案件は総合企画会議、教育に関する案件は教授陣によって構成される『評議会』で議論します。改革ビジョン2040は総合企画会議のみで決定する案件なので、通常なら教授会等での検討を求めることはしません。しかし、策定には全学の同意を得たいと考え、あえてこのような手続きを取りました」

中期行動計画と連動したグランドミッションも策定

 今回策定されたのは、神戸学院大学はどうありたいのか、どのようになっていくべきなのか、課せられた使命は何であり、それらにどのような姿勢で取り組んでいくのかを言語化した改革ビジョン2040だけではない。それらを実現するための全学的戦略である「神戸学院大学グランドミッション」(以下「グランドミッション」)も、ワンセットで作られた。

 改革ビジョン2040とグランドミッションの位置づけは図の通り。それぞれが、学校法人全体の理念や神戸学院大学の理念と、5年おきに立てられている中期行動計画とをつなぐ役割を果たしている。

 なお、グランドミッションは「教育ミッション」「学生支援ミッション」「研究ミッション」「社会貢献ミッション」「大学運営ミッション」に分かれている。この5分野は、中期行動計画の体裁と揃えたそうだ。

 「中期行動計画では、教育、学生支援、研究、社会貢献、大学運営の5分野それぞれに細かな行動計画を立案。そして、各項目について年度ごとに5段階評価を行い、その結果を自己点検・評価結果として公開しています。

 グランドミッションと中期行動計画の体裁を揃えたのは、せっかくのビジョンやミッションをただのスローガンに終わらせたくなかったからです。中期行動計画の取り組みと連動させることで、各学部や各部局に、グランドミッションを『自分ごと』として捉えてもらうのが私たちの狙いでした」


図 KOBE GAKUIN INNOVATIVE VISION 2040 ─ Leading to the Future『未来と繫がる改革ビジョン2040 ─人と、地域と、世界と繫がるために─』


長期ビジョンは行動の原点となる存在

 全部で32あるグランドミッションのうち、最初に掲げられているのが「文理融合」である。文理・学部の枠組みを超えた人材を育てることで、総合大学としての強みを発揮しようと考えているのだ。

 「本学では約5年前から、『専門職連携教育』という取り組みを始めています。これは、総合リハビリテーション学部や薬学部、栄養学部、心理学部といった保健医療福祉分野にかかわる学部横断型専門職育成プログラムであり、地域の医療ケア・サービスの質を高めようとするものです。こうした学部の枠組みを飛び越えた教育は、今後もさらに強化する方針で、副専攻や共通教育などの仕組みを導入・拡充しようと検討中です。文理の枠を超えた知識を持つ人材を育てることで、未来に起こりうる課題の解決に資する人材を育てていきたいですね」

 改革ビジョン2040やグランドミッションは神戸学院大学の基盤になっていると、中村氏は考えている。

 「社会が変化するスピードは速くなる一方です。今後も技術革新や社会の変化に伴い、改革ビジョン2040やグランドミッションに変更を加えなければならないケースは十分に考えられます。ただ、大きな変化が起きても、自分たちが立ち戻れる場所があるのとないのとでは大差があると思うのです。改革ビジョン2040やグランドミッションは、本学にとって『礎石』のようなもの。ここを起点にすることで、日々の行動計画を実行する際に迷わず動けるようになるはずです」



(文/白谷輝英)


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