2040年4つの課題と大学の可能性
【theme01】労働市場におけるジェンダー不均衡
2015年、女性活躍推進法が制定されて久しい。男女共同参画社会の実現に向け、「社会のあらゆる分野において、2020年までに、指導的地位に女性が占める割合が、少なくとも30%程度になるよう期待する」ことを目標として、企業のみならず社会全体に向けた政策的な働きかけもなされているものの、国際社会を見れば、日本の女性の働きやすさはOECD主要国の中でも相対的に依然として極めて低い結果のままだ。特に課題として指摘されるのが、今まさに人材の活躍が叫ばれている理系分野における、「ジェンダーの不均衡」という現実だ。デジタルをはじめ、今最も活躍の場が広がる理系分野において、2040年、女性が真に生き生きと活躍し能力を発揮するためには、今一度意識を高めていく必要がある。
【theme02】地方の衰退
人口減少と高齢化により、地方の企業活動が停滞し産業が衰退、経済がさらに縮小し地域の活力が失われていく現象は、場所による差はありつつも進行の一途を辿っている。労働供給不足と東京をはじめとする大都市圏への人材流出、地方都市のスポンジ化や集落機能の持続性の低下、防災面のリスク増大等、課題は山積だ。政府は、「活力ある日本社会」を維持するため、「稼ぐ地域をつくるとともに、安心して働けるようにする」「地方とのつながりを築き、地方への新しいひとの流れをつくる」ことを戦略として明示している。各地方都市が衰退や消滅への道を辿ることがないよう、体力があるうちに、独自の強みを見極めイノベーションを追求することが不可欠と言えるだろう。
【theme03】地球環境の危機
2023年の夏は酷暑であった。地球規模で見た温暖化の進捗は、様々な地域で水害や山火事等、想定外の規模の災害を引き起こし、地球沸騰化時代というキーワードも登場した。国際社会はこうした状況に歯止めをかけるべく、企業や自治体を中心に脱炭素へのシフトを進めている。日本も2050年までにカーボンニュートラルを実現することに経済成長を重ねるシナリオ「グリーン成長戦略」を描いており、投資の世界では財務リターンを前提としたESG投資が当たり前になりつつある。一方で急務なのが人材育成だ。デジタルに並ぶグリーンという新たな成長分野をけん引する人材を、どのように育てていくのかが継続的な課題となりそうである。
【theme04】日本の地球環境の危機 国際競争力低下
少子高齢化が進行する日本。労働人口の減少はGDPの減少に直結し、もともとイノベーション不足が叫ばれるなか、新課程の探究やアントレプレナーシップ教育が初等中等教育で開始されたとはいえ、競争力低下に対する即効性ある処方箋にはなりにくいのが現状だ。特に成長分野を中心に、若手研究者の厚みをどのように拡大していくのかが喫緊の課題である。全国に数多ある大学がそれぞれに強みある研究や社会価値創出を最大化していくことができなければ、あるいは大学を中核とした地域の独自性創出を担うことができなければ、国際競争力以前に地域競争力が今以上に損なわれ、大学を含めた地域衰退にもつながりかねない。
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