「2027年に女子学生比率30%」を掲げ、 広く社会で活躍する工学系女子を輩出する/芝浦工業大学


芝浦工業大学 副学長 磐田氏


 2027年に「女子学生比率30%」「女性教員比率30%」の達成を目標に掲げ、様々な取り組みを行っている芝浦工業大学(以下、芝浦工大)。2023年時点で女子学生比率は19.8%、女性教員比率は19.2%と達成に向けて着実に歩みを進めている。これまでどのような取り組みを行い、今後何を強化していくのか、副学長で男女共同参画推進室長も務める磐田朋子氏に伺った。

社会で使われる技術の開発に女性目線は必須

 「女子学生比率30%」「女性教員比率30%」は、創立100周年を迎える2027年にアジア工科系大学のトップ10に入るという目的に基づき、2016年に宣言された長期ビジョン「Centennial SIT Action」における取り組み課題の1つである「多様性の受容」のKPIとして設定された目標だ(図1)。

 この目標を掲げた背景の一つには、建学の精神「社会に学び社会に貢献する技術者の育成」があると磐田副学長は話す。「良い技術を開発しても、世の中で使われなければ意味がない。そのためには、利用者目線に立って技術開発やシステムの全体を考える必要があり、人口の半分を占める女性の目線は必須。にも拘わらず、日本の研究者に占める女性の割合は2割に満たず、その多くが建築やデザイン、医学系の研究者であるため、工学系の研究者をより多く輩出していくために意欲的な目標を設定している」と磐田副学長。長期ビジョンの策定を牽引した村上雅人前学長の「国際的に見て日本の工学系の女性の比率の低さは異常」との考えから目標設定がなされ、女子学生増による裾野の拡大と、工学系の研究を担う女性として、また、女子学生が将来像を描くためのロールモデルとしての女性教員増の両輪で取り組みが進められてきたという。


図1  女性学生比率(%)年、教員の女性比率(%)


女子特別入試、女子校との連携協定等を推進

 女性教員を増やす施策として取り組んでいるのは、教員公募時に選考において評価が同等と認められる場合は積極的に女性を採用することを明示し、面接対象者に必ず女性を含めて選考を行うことだ。

 また、女子学生比率を上げるための取り組みとしては、女子生徒を対象とした入試方式「理工系女子特別入試」、女子校との連携協定締結、女子高校生を1週間研究室に受け入れる「サマーインターンシップ」、女子生徒を対象とした「ミニオープンキャンパス」、学部・大学院への進学者を対象とした奨学金や給付等を行っている(写真)。

 なかでも理工系女子特別入試は、他大学に先駆けて2017年度入試より女子学生が極めて少なかった機械系と電気系の学科に導入し、一定の効果を得たことから工学部全体に広げ、2023年度入試からは全学で実施。64名の枠にのべ98名が志願し、63名が入学した。2024年度入試ではさらに志願者増が期待できるとのことだ。

 また、2022年から実施しているサマーインターンシップには、連携協定を結んでいる女子校2校から29名の女子生徒が参加。好評を得たため2023年も実施したところ、6つの女子校から60名近くが参加した。

 こうした取り組みと女子学生比率の伸びの関係について、磐田副学長は「女性人気の高い建築やデザイン系の学科が呼び水となっている面がありつつも、これまでの多面的な取り組みが少しずつ実を結んでいるのではないか」と分析する。また、「女性教員が増えて社会的な露出が生じていることも認知度上昇につながっているのでは」と続ける。


写真 女子高校生限定ミニオープンキャンパス、女子高校生サマーインターンシップ


女子校との連携協定締結をさらに強化

 2027年まであと4年、今後注力していく取り組みとして、連携協定を結ぶ女子校を増やすことが挙げられるという。「中学・高校への出張授業や女子児童を対象とした一般公開プログラム等も行っているが、それだけでは漠然としているため、われわれが来て頂きたいと思っている高校の生徒さんにできるだけ本学について理解したうえで受験・入学して頂けるようにしていきたい」と磐田副学長は話す。女子校からの問い合わせも多いそうで「まずはサマーインターンシップへの参加を促す等して段階的に関係を構築し、長くパートナーになり得ると判断できた高校と連携協定を結んでいきたい」とのことだ。また、連携協定を結んだ女子校にサマーインターンシップへの参加を出願条件とする特別入試を設け、高大接続や高校の探究学習への協力を行うことも検討しているという。

 加えて、各学部・学科のカリキュラムの中でも中学・高校と共同でプロジェクトを行う科目が年々増えているそうで、「プロジェクトを通じて、女子校に限らず様々な学校に本学について知ってもらうことも進めていきたい」と話す。

 他方で、女性教員比率については、「元々絶対数が少ない中、人材の取り合いが起こっているため、目標達成には苦戦しそう」と磐田副学長は予測する。今、打ち手の一つとして検討しているのは、海外の女性教員の招聘・採用だという。また、大学として力を入れ始めている工学分野で活躍する技術者の修士・博士号取得を支援する大学院リカレント教育の取り組みに対して「何らかの形で女性教員増加の種になれば」と期待を寄せる。

 大学はもとより、社会全体で今後さらに工学系の女性を増やしていくために必要なことは何か。磐田副学長は「工学の裾野の広さを、中学校段階等もう少し早い段階で認識してもらえるようになれば」と話す。「工業大学や工学というと製造業がイメージされがちだが、実際はもっと裾野が広く、企業等を評価・マネジメントするようなコンサルティングの仕事もあれば、商社等では工学系の知識を生かしたサービスや取引を行う仕事もある」と続ける。実際、近年の芝浦工大の女子学生の就職先は、建設コンサルやプラントエンジニアリング等、マネジメント系の業種等にも広がっているとのことで、「本学としても工学に含まれる分野は広いということを発信していければ」と話す。多方面にわたる取り組みが実を結び、理系女性の比率がさらに上がることを期待したい。



(文/浅田夕香)


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