学部・学科トレンド2026 社会動向から明暗が分かれる単独分野のトレンド 多様化する改革パターン
リクルート『カレッジマネジメント』編集部
リクルート進学総研研究員
鹿島 梓
経済環境や雇用情勢あるいは政治動向等、社会の様々な要因が受験生の志望分野や進学観に作用し、学部・学科の「ライフサイクル」は大きく変化する。本誌では1992年以降その動きを把握し、定期的にマーケットトレンドを俯瞰してきた。本分析は「リクルート入試実態調査」の学科別集計データを基にしており、受験生の志願動向をもとに募集におけるトレンドを分析している。
前々回の2019年はグローバル化や第四次産業革命といった大きな社会変化が、特に複合分野のトレンドに影響を与えていた。前回の2022年は、連携や融合といった現在にも続く流れは志願トレンドにはまだ反映されておらず、受験生の志願志向が社会変化に追いついていない様子が垣間見えた。
高等教育は各校が見据える社会のニーズに応じた教育を開発し、高校までの学習で育まれた資質・能力をシームレスに育て、社会で活躍できる人材を育成するべく奮闘している。しかし、通常3年程度は検討期間を要する学部・学科設置に対し、近年の産業動向や社会変化のスピード感が速く、検討段階と設置後完成年度に至る段階で人材ニーズが変容していることをどのように包含して設計するのか。国はスピーディーな改革を促す様々な施策を展開し、それらを活用して改革を行う例も増えているが、今回の調査ではそうした積極的な挑戦が、必ずしも奏功しているとは言えない実情も見えてきた。また、学部・学科設置に拘らず基礎教育や横断教育における改革、社会連携や高大連携等、教育改革のオプションが多様化(図表1)するにつれ、学部・学科のトレンドのみで見えることは限られてきている。改革でターゲットとする領域のスピード感やスキルセットとしての汎用性を鑑み、学部・学科設置ではなく共通教育で全学的改革を行うケースも増えてきた。こうした前提を整理したうえでデータを見ていきたい。
これまでの学部・学科トレンド分析のサマリ
2013年 179号
大都市圏とローカル圏で異なるマーケットトレンド
- 大都市圏とローカル圏ではトレンドの傾向が異なる
都市部人気:日本文化学、言語学、教養学、美術、文芸学、政治・経済学、経営学、メディア学
ローカル人気:考古学、地球・宇宙学、保健衛生学 等 - リーマンショックによる不況等社会変化がトレンドに与える影響が大きく、学部・学科は長期トレンドと独自性の両輪で開発する必要がある
- 大学改革に着手しその成果が表れ、社会的評価を得るまでには20年かかるのが通説
2015年 190号
アベノミクス・東京五輪の影響でトレンドに変化の兆し
- 単独分野では減少でも複合分野として開発し新たなマーケットを創り出しているケースが増加
- 少子高齢化をベースにした新たな「社会課題解決型」の学部・学科開発が進む
←背景:先端科学技術、グローバル化の進展、労働力の減少、社会福祉コスト増大
→短期ではなく長期レンジでトレンドを俯瞰しつつ、社会課題解決系、かつ競合に差別化できる独自性を持つ学部・学科を開発する必要性が増大
2017年 205号
グローバル化と技術革新の新たな波がトレンドに色濃く影響
- 単独分野の志願者動向
2008年リーマンショック→資格志向の高まり
2012年安倍内閣発足→アベノミクスによる景気回復を見込み2016年には社会科学系が復活/第四次産業革命への期待から工学系やオリンピック需要に沸く土木建設関係が人気 - 複合分野では、第四次産業革命に向けた動きとして、IoT、ビッグデータ、人工知能(AI)、ロボット技術に関連する学科系統に注目が集まる
- 今後のマーケット動向→ ICT/ デジタル等の技術革新領域の人材育成、国際領域は「英語『を』学ぶ」から「英語『で』学ぶ」へ、2020年に向けたスポーツ領域の振興
- 文理融合領域は国公立が中心:多様な学問領域を包含し、カリキュラム上、従来の文理の枠組みに明確に分割できないもの、混在しているもの
2019年 216号
「複合化」が進む学部・学科改編
- 複合分野の定員比率が約3割まで増加
複合分野志願者上位に占める新増設の比率が低く、既存領域として存在していたものが社会ニーズの変化等に呼応して注目されているケースが多く、掛け合わせで頻出したのは情報系 - 複合分野では日本文学×外国文学(2015-2018年で9018名増)、システム・制御工学×情報工学×通信工学(6679名増)、情報学×情報工学(6671名増)、経営学×情報学(5987名増)等、いずれも設置数に占める新増設の比率が低く、既存領域として存在していたものが社会ニーズの変化等に呼応して注目されているほか、上位5位中3つの複合で情報系が登場しており、第四次産業革命の影響も大きい
2022年 232号
連携・融合という社会のトレンドは志願トレンドにはまだ反映されず、やや時差あり
- コロナ禍でほぼ全ての単独分野で減少、2019-2021年で増加したのは7分野のみと全体的に停滞
- 複合分野の比率は増えず、7:3のまま
- メガトレンドと称した分野のサイクル図は「定員が少ないが志願者は激増」という推移を辿っており、新増設数が追い付いていない状況か
- ただしこうした分野は、学部・学科を新たに設置するよりも、既存の学部・学科をグローバルにしたりデジタルと組み合わせたりする動きのほうが盛んであり、系統で切り取った志願者トレンドだけで状況を考察することは年々困難に
【第1章】単独分野のマーケットトレンド
本調査では、全体5194学科のうち、リクルート独自の78分野に当てはまった3480学科を「単独分野」、複数の分野が融合しており78分野に当てはまらなかった1714学科を「複合分野」と定義している。まずは単独分野の学科系統から見ていこう。図表2は単独78分野について、「志願者数×募集定員数」の推移を1992年から段階的に追ったグラフである。
言うまでもないことだが、募集定員数の増加は大学として投資している分野であることを、志願者数の増加は受験生人気が高い分野であることを示す。前回分析からの増減において、特筆すべきものをピックアップしてお伝えしたい。
社会科学系・国際系が拡大する一方、人文系が縮小
まず、社会科学系である(図表2-4)。特に経済学・経営学における募集定員と志願者の増加が大きい。次に国際系(図表2-10)は、語学(外国語)以外の3分野で募集定員・志願者ともに増加。コロナ禍で激減していた系統だが、概ね2018年の水準に戻している。コロナ禍からの需要回復、インバウンド好調等も背景にあろう。なお、現在初等中等教育における次期学習指導要領改訂でも、生成AI利用を前提とした時代に言語習得や授業設計はどうあるべきかという大きな論点が議論されている。大学における同様の論点にも注目したい。
一方で苦しいのが家政・生活系(図表2-5)及び人間・心理・教育・福祉系(図表2-8)だ。家政・生活系は系統の募集定員が8695名→ 7978名(717名減少)、志願者が4万406名→2万6906名(1万3500名減少)と、単独マーケット自体が大きく縮小している。特に栄養・食物学と生活科学で減少幅が著しいが、これは人気低迷というほかに、家政系の設置の主である女子大の改革において、食農系や建築系への改組のリソースとなっているケースが多そうだ。
人間・心理・教育・福祉系は、特に保育・児童学で募集定員が7248名→ 6666名(582名減少)、志願者が2万2960名→ 1万2533名(1万427名減少)となったほか、福祉学で同様に8022名→7534名(488名減少)、3万3482名→2万6590名(6892名減少)と減少が大きい。かつては国家資格等で盤石なイメージが強かったこうした領域も、昨今の「教師はブラックでやりがい搾取」等の報道、介護現場におけるニュース等から、激務でありながらDXも働き方改革も進んでおらず、薄給でタイパが悪いといったイメージが受験生についてしまっていることが大きそうだ。
なお、減少傾向にある系統は、特にその大学における経営戦略との整合性を鑑み、その定員を減少させ新設学部・学科に割り振る動きが散見される。
好調な理学系、分野ごとに状況が異なる工学系、医学好調は地域枠の影響か
いわゆる理系系統についても見ておこう。理学系に当たる数学・物理学・化学系統(図表2-3)では物理学が募集定員・志願者ともに好調だ。生物系(図表2-6)は系統全体で、募集定員は1万1367名→1万2355名(988名増加)、志願者は9万6332名→12万4807名(2万8475名増加)と大きく拡大。全分野で数を増やしているが、特に志願者における生命科学が3万8718名→5万741名(1万2023名増加)、及び獣医・畜産学が1万4253名→2万3001名(8748名増加)とインパクトが大きい。
スポーツ・健康・医療系(図表2-11)を見ると、系統全体の募集定員は7万2753名→7万8165 名(5412名増加)と拡大したが、志願者は45万9189名→44万4812名(1万4377名減少)と規模が縮小した。定員増や新規設置等の大学側の動きほどは、志願者が動かなかった形だ。特にギャップが大きかったのは看護学、リハビリテーション学、医療技術学といったコメディカル領域。一方で志願者を大きく増やしたのは医学(専門課程)という結果になった。これは、不透明な時代にあって確実性を重視する傾向だけでなく、将来地域医療に従事しようとする志願者に向けた選抜枠である地域枠(都道府県奨学金貸与枠と連動しているものも多い)の存在が大きそうだ。文部科学省医学教育課資料「令和6年度大学医学部における地域枠等の導入状況」(令和6年12月)によると、2007年度には導入20大学・173名だった地域枠は、2024年度には導入71大学・1808名にも増加。医学部総定員の20%程度にまで拡大している。
工学・建築・技術系(図表2-12)では、分野により状況が大きく異なっている。まず、2008年頃から増加トレンドにあった情報工学が、募集定員は3794名→4136名(342名増加)と増加しているものの、志願者は7万3919名→6万251名(1万3668名減少)と減少に転じた。ほか、募集定員・志願者ともに減少したのは、機械工学、通信工学、電気工学、電子工学、土木工学、経営工学である。
一方で急増とも言える増加を見せたのがシステム・制御工学である。募集定員は749名→1052名(303名増加)、志願者は3468名→ 8373名(4905名増加)となった。ドローンや自動運転等が注目されロボットに関連する学問に人気が出たとも考えられるが、機械工学や電気工学・電子工学等が不調であることから、分野人気というより工学内の分散とみるほうが正しそうである。ほか、募集定員・志願者ともに増加したのは、航空・船舶・自動車工学、建築学である。建築学は近年女子大の家政学(住居系)からの改組が相次いでおり、情報学系と並んで女子大の理工学系参画ではよく見かける系統になりつつある。
図表3では参考までに、図表2の78分野の「募集定員」「志願者数」について、2021年と比較した2025年の増減を一覧化した。図表1で示した改革の多様化に加え、社会動向のスピードの速さから次にどうなるかが読みづらく、現時点では上向いているように見える分野も1年後にはどうなっているか分からないのが実態であり、従来の分析のようにプロダクト・ライフサイクルに当てはめて考えることは現実的でない。あくまでこの4年間の動向として捉えていただきたい。
社会科学系好調、成長分野への期待からか理系も好調、国家資格系は不調
ここからは過去10年間(2016-2025年)に焦点を当ててデータを見ていきたい。学科ライフサイクルはその分野の募集力だけではなく、社会情勢を多分に反映する。単独分野の志願者増減について、3年ごとに区切ってランキングにしたのが図表4だ。今回調査対象の2022-2025年に加え、対比のため過去のデータ(2016-2018年、2019-2021年)を横に配置した。
2016-2018年は、アベノミクスによる景気回復時期に当たり、就職状況の改善で社会学系統に人気が集まっていた。2019-2021年はコロナ禍が直撃し、各校の入試方式多様化や大規模校の定員厳格化政策等を背景にした併願増加による延べ志願者数増加というそれまでの募集戦略がストップ。受験生は地元回帰志向から大都市総合大学を敬遠し併願数が減少、移動を伴わない超安全志向といった変化に大学側は対応せざるを得なくなり、7系統を除き全系統で志願者が減少する結果となった。そして2022-2025年。コロナ禍からの回復から2016年頃の状況に戻りつつ、経済学を筆頭に社会科学系と、国の成長分野への投資からかいわゆる理系分野が存在感を示す結果となっている。減少を見ると、前回トレンドを捉えた動きと思われた情報工学が減少の筆頭となり、2位以降は国家資格による人気系統である看護・栄養・保育士・リハビリテーション等が並ぶ。近年の第二新卒市場の活況、終身雇用から転職前提の価値観への変化等から、固定した業界への専門性がそうした汎用性に相反するものと捉えられている可能性もありそうだ。
【第2章】複合分野のマーケットトレンド
関連分野同士の組み合せが多く情報系は複合化が進む
単独分野と複合分野の比率について、定員・志願者、及び学科数の推移を図表5に示した。どの観点でも、近年は概ね単独7対複合3で推移している。
図表6で複合分野における志願者増加ランキングを確認したい。上位20位のうち、単独分野での志願者数が減少している分野を複合化したケースが13系統に及ぶ。単独分野で減少しているうち一定数は単独から複合への移行による減少と見てよさそうだ。
2022-2025年で志願者増加1位は社会学×コミュニケーション学×マスコミ学×メディア学という、隣接・関連する分野複合のケース。設置数は4件だが志願者は1万5431名増加と大きい。志願者増加20位の中で設置数において最多は11位のスポーツ学×健康科学で37件。うち新増設は4件であり、既存分野での志願者獲得が好調な様子だ。
一方、新増設が多かったのは12位の数学×経済学×経営学×商学×情報工学で、18設置中11件が新増設だ。これは統計学・機械学習・市場視点・ビジネス戦略を統合した、いわゆるデータサイエンス系統である。
【第3章】新増設のマーケットトレンド
新しく学部・学科を作っても必ずしも集まらない
最後に、新増設・改組マーケットについて確認したい。
まず、私大の新増設設置状況を見ていこう。図表7は、2000年以降の認可・届出件数と志願倍率の推移を示している。周知の通り、2004年の届出制度導入以降、全体の8割を届出が占める状況が続く。設置件数で見ると2019~2022年頃のコロナ禍と重なった抑制期を経て、2023年頃からは増加傾向にある。
なお、日本私立学校振興・共済事業団「令和7(2025)年度私立大学・短期大学等入学志願動向」によると、2025年度定員充足率が100%未満の大学は316校で集計全体594校の53.2%。前年は354校(59.2%)だったため改善はしているものの、5~6割の大学は定員未充足が近年常態化している。規模別で見ると、定員区分500-600人のレイヤーと、800-1000人のレイヤーで、それぞれ定員数と志願者数が両方減少する一方、1000-1500人、1500-3000人、3000人-の中・大規模レイヤーでは定員数も志願者数も増加。特に3000人-レイヤーでは志願者数が15万人以上増加している状態だ。つまり、集まっているのは大規模校である。
こうした状況で2025年に新設された学科の入学定員充足率は94.9%で、2024年度の81.1%より13.8pt改善している(※1)とはいえ、依然として100%を下回る。普通にやっても定員が充足しづらい環境において、状況を打破すべく苦労して設置しても定員が充足しない前提で、こうしたスキームを抱える算段をどのように立てるのか。経営判断の難易度は高い。
次に、人気のある分野を見ておきたい。図表8・9は、単独分野・複合分野それぞれにおいて、新増設の累計設置数(2016-2025)をランキングにしたものである。単独分野では、前回分析同様、医療系が上位3位を占める。国家資格取得を軸にしている以上、ある意味複合しようがない領域でもある。しかし、2020年前後で急増したリハビリテーション学は、2025年は設置がなかった。看護学・医療技術学も減少傾向にある。
複合分野では、1位は教育学×保育・児童学、2位はスポーツ学×健康科学と、関連分野での複合型新増設が上位だ。同率2位の数学×経済学×経営学×商学×情報工学は、図表6でも述べた通り、データサイエンス系の学部・学科設置である。情報系は特に、データ特化型の人材を育成する以外に、どのような専門分野と組み合わせて学科としての特色を出すかという観点でも近年複合することが多いようだ。
図表1で示した通り、昨今の教育改革は、学部・学科の増設だけではなく、募集区分でない共通教育や副専攻等の改革、自校に閉じない横断・連携等、多様なオプションが存在する。2018年の「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン(答申)」でも社会ニーズ対応・大学教育の質保証の観点から、大学間連携・統合の必要性がうたわれている。よって、新しい人材育成を学部・学科に閉じず全学的に展開する動きや、自校のみで閉じず他大学や企業連携等によって行う流れが、今後どの程度加速するのかを見ていく必要がある。そうした流れが加速すれば、当然学部・学科の動きだけではトレンドをつかみづらくなってくる。既に中等教育は「社会に開かれた教育課程」の理念のもと、特に探究学習において、こうした動きが増えてきているのは周知の通りである。
前回分析で見た通り、社会動向や産業構造の変容の動きが激しく、高校生の進学観の変容がそれに必ずしも追いついていない現状において、こうした複雑化する教育改革が果たしてどの程度志願マーケットに影響してくるのかは未知数だ。高等教育が社会のニーズを反映したものである必要性は当然だが、その一方で、大人が見ている社会変化による人材ニーズは、高校生にとってそのまま魅力的なものとして映るとは限らない。社会における必要性を挙げるデータが無数にあるデータサイエンス系の人材育成のために、データサイエンス学部を作っても、必ず集まるわけでもない。社会のニーズの高さと若者の志願状況。身の回りの大人が就いていない仕事と、自分の知る範囲。このギャップを埋めることを含め、分野や職種自体のPRを積極的にしていかなければならない。募集広報が担うものは大きい。
今回はこうした動きの兆しを踏まえつつ、新増設領域における現在のトレンドを以下3つの観点で提示し、対応する事例をP.24からご紹介したい。
新増設領域における3つのトレンド
①国の政策誘導による成長分野の人材育成
まず、国による政策誘導でもある、成長分野の人材育成だ。近年の新増設動向を見るうえで外せない「成長分野をけん引する大学・高専の機能強化に向けた基金による継続的支援」(以下、支援事業)がその筆頭であろう。支援事業の採択は情報系統が大多数でいわゆる工学系は少ないのが実態だが、ほかにも半導体、環境・グリーン、AI等がそれに当たる。高市内閣においても日本成長戦略本部で戦略的に官民投資を集中させる成長17分野が提示されており、こうした流れは今後も続くと予想される。高度先端科学分野になればなるほど、研究大学の研究機関か企業連携や他大学連携等での育成がメインであるが、本特集では大学の学部・学科としての展開事例を取材した。
また、成長分野における人材育成で忘れてはならないのは、専門職大学・短大制度の存在だ。2017年の学校教育法改正により55年ぶりに誕生した新たな学校種だが、制度設計当初、「開設が期待される分野」として、「情報、観光、農業、医療・保健、クールジャパン分野(マンガ、アニメ、ゲーム、ファッション、食等)」が例示されている。
2019年に初年度設置校が開学、現在8年目を迎えたが、募集状況は二極化し、全体としては芳しくない。2025年までの設置大学20校31学科の初年度充足率は公表値で平均0.77、短大2校(設置は3校)は0.52と、いずれも定員充足がまず課題となっている。各校を取材すると、新設校としての認知以上に、制度認知が不十分であることが高校の進路指導において壁となり、「専門学校との違い」「通常の四大との違い」といった点で説明負担が高く、教育の内容云々まで認知が及ばないという話は枚挙に遑がない。
専門職大学制度は「質の高い実践的な職業教育を行う大学」として設計され、産業界の最新トレンドを反映した授業や、卒業に必要な単位のうち1/3以上を実技・実習で構成する必要がある等、意欲的な教育設計が特徴である。近年の新増設の募集動向が二極化しているとはいえ、こうした学校種が募集で苦戦するということは、高校の進路指導や保護者等の意識と大学教育の距離がそれなりに離れているという現実を表しているようにも思われる(※2)。
②地域資源を最大活用した地域特産教育
次に、地域資源を最大活用した“地域特産教育”の展開だ。地元産業や自治体と協働し、その地域ならではの人材育成スキームを模索する動きで、地方大学の生き残り戦略であり、高校の魅力化が進むなかでの高大接続、探究との親和性も高い道筋と言えるだろう。校種を問わず、地域に特化した強い個性は、結果的に中途半端な汎用化よりずっと優れた全国募集のコンテンツにもなり、募集力向上を見込むことができる。マーケットを見ながらどこまで特化型に振り切れるか、その見極めが鍵となる。
佐賀県のコスメティック構想に呼応して人材育成を行う佐賀大学コスメティックサイエンス学環、燕三条という金属加工産業の集積地との連携のもとイノベーティブテクノロジストを育成する三条市立大学、但馬・城崎温泉という観光資源や文化資源に芸術を組み合わせて地域活性を担う人材を育成する芸術文化観光専門職大学、「奇跡の田舎」と称される徳島県神山町で「テクノロジー×デザインで人間の未来を変える学校」をコンセプトに開学した神山まるごと高専のように、自治体の戦略や地域産業と連動・協働して人材育成を行う動きは各所に存在する。若者が地域に出ていくことで地域は活性化し、学生は具体的なフィードバックを得る。小誌や進学総研サイトで取材した例も多いが、本特集では新たな事例をご紹介する。
③共創・横断・学際・連携系の動き
最後に、前述した共創・横断・連携の動きである。大学間連携は、大学単体では難しい領域展開や教育設計が可能になる一方、連携の価値を最大化する体制の組み方等に困難が多い。国際連携は留学や相互交流における連携のみならず、ジョイントディグリーやデュアルディグリーといった展開もある。大学内での学部・学科等連携においては、学群制や工学部領域で少しずつ増えている課程制等、分野間の壁を低くして横断連携しやすくする動きもある。
こうした動きの1つである学部等連係課程について触れておきたい。2018年の「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン」での学位プログラムの柔軟化の提言を受けて、2019年大学設置基準改正により制度化された学部等連係課程は、学内で既存の複数学部が連携して人員等教育リソースを提供し合い、学部横断的な「学位プログラム」を柔軟に構築できるように設計された制度である。2021年の岐阜大学社会システム経営学環を皮切りに、毎年一定数が設置されている。本特集でもこの制度を利用した事例をご紹介する。
成長分野や学際分野への改組をしやすくするべく講じられた本制度だが、こちらも専門職大学制度同様「学部と何が違うのか」「似た内容なら学部と名前がついているほうがよいのではないか」と、そもそもの制度認知が進まず、募集には苦戦する大学が多い。また、届出改組を念頭に置いていることもあり、その大学が既に持つリソースの組み合せで新規層の取り込みには至っていないケースが多い。初年度充足率について、そもそも公表がないケースも多いが、公表されている平均でも0.64と、極めて厳しい数値になっている。連携の最適解は未だ見えない。
- 日本私立学校振興・共済事業団私立大学等における新増設・改組の現状まとめ(入学定員の充足状況_2025年度)
https://souken.shingakunet.com/higher/2026/02/post-3525.html - 専門学校の学修成果(考察)
https://souken.shingakunet.com/higher/2024/09/post-3430.html




















