新たなデザイン・アートの知の創造と創造性により社会に変革を起こす人材の育成を目指す/立命館大学 デザイン・アート学部

【DATA】立命館大学 デザイン・アート学部 デザイン・アート学科
入学定員:180名
京都府京都市(衣笠キャンパス)

デザイン・アート学部 教授・副学部長 八重樫 文 氏


 立命館大学(以下、立命館)は、2026年4月に新たにデザイン・アート学部を開設した。美的感性を基盤にデザインとアートの知を高度に統合し新しいデザイン・アートの知を育むこと、そして、創造性によって社会に新たな価値を生み出し変革を起こす人材の育成を目指して設置された学部である。国が重点を置くイノベーション創出⼈材の育成にも資するであろう同学部の詳細について、同学部教授・副学部長の八重樫 文氏に伺った。

社会と立命館の課題をふまえた新学部開設

 同学部の設置背景として、八重樫氏は社会的な背景と立命館における背景の2点を挙げる。

 「現在の社会では、AIの進展のなかで人間の役割や人間らしさが改めて問われています。とりわけ、人間の感性や創造性とは何かを捉え直す必要があると感じています。一方で本学に目を向けると、総合大学でありながら、芸術分野が独立した学部としては存在していませんでした」。

 これらの議論が学校法人立命館の「学園ビジョンR2030」(2018年発表)策定時に行われ、「これからの人間のあり方を考えるには、既存の学術知の枠組みだけでは十分とは言えず、そこに芸術的・創造的な観点がますます重要になってくるのではないか」(八重樫氏)等の考えから、学部設置に向けた検討が進められたという。「建学の精神である『自由と清新』のもとで、本学が挑戦すべき新たな領域としての意義を問いながら、かなり現実的な事業計画を策定することで検討を進めてきました」と八重樫氏は振り返る。

美的感性を基盤に創造性を発揮し社会に変革を起こす人材を育成

 「総合⼤学だからこそできるデザイン・アートの知の創造」をうたい、その基盤に「美的感性」を置いたのは、先述した背景に加え、昨今のデザインやデザイン学を取り巻く課題をふまえてのことだ。

 「既存の芸術系学部の多くはデザイン系とアート系に分かれていて、学生はどちらかしか選べない状況です。また、総合大学のなかで総合的な人材育成を行ううえで、そして、AI時代における人間性を捉え、創造性によって社会に変革を起こす人材を育成するうえでは、デザインとアートを不可分に学ぶことが必要と考えました」と八重樫氏。「この10年で、デザインの考え方は広く社会に普及しましたが、その過程で美的感性やセンスは切り離されてきました。そのため、誰もがデザインに関われる一方で、その価値判断や責任の所在が曖昧になり、良いものが生まれにくい状況があると感じています。そこを正面から引き受け、美的感性を基盤に様々な場で創造性を発揮し社会に変革をもたらす人材を輩出していきます」と続ける。

 この考えを同学部は「クリエイティブ・トランスフォーメーション(CX):社会生活にクリエイティブで変革を促す」と表現。CX人材の育成を目指していく。

プロジェクト実践型授業を軸に3つの科目群を往還して学ぶ

 これらの考えから、4年間のカリキュラムには、プロジェクト実践型の科目「Design in Society(DiS)科目群」を軸に、実践の場での経験を意味づける考え方や方法を学ぶ「Design Studies(DS)科目群」、デザイン・アートの知識・技能を修得する「Design Language(DL)科目群」という3つの科目群を設定。それらを往還して学ぶことで、美的感性とそれに裏打ちされた様々な力を育めるよう設計されている(図)。


図 デザイン・アート学部の4年間の学び


 根幹となるのは、2年次の必修科目「デザイン学生成プロジェクト演習」を始めとしたDiS科目群だ。「学生自身が社会と接し、違和感や課題を自ら認識することを最重要視したいと思っています。そうして認識した違和感や課題に対する自分なりのアプローチ方法や、アプローチしていくうえで学ぶべきことについての気づきをDS科目群で得る。その気づきをもとにDL科目群で必要な知識・技能を修得するという構成です」と八重樫氏は説明する。

 DiS科目群では、「京都のまち全体がラーニングプレイス」をコンセプトに、京都で事業を行う企業・組織と教員が協働したプロジェクト等、複数のプロジェクトを立ち上げる計画だ。「デザイン・アートの新たな知を生み出すことが本学部の目的の一つですから、教員も、まだ取り組んだことのない新たなプロジェクトを立ち上げることとしています」と八重樫氏は話す。

 また、各科目は既存の学問体系に従い「意味」「社会」「環境」「情報」というデザインの4つの領野に分類しているが、「CX人材として既存の枠組みをどう乗り越えていくのかや、既存の分野の知識・技能を統合しながら課題へのアプローチ方法を考えてほしい」(八重樫氏)との考えから、学生達にはできるだけ各領野を横断して学ぶよう指導する計画だという。

 そして、DL科目群のうち知識群と一部の技能群の科目はオンデマンド授業とし、プロジェクトに参加しながらの履修や理解が不十分な点の再確認等を容易にした。加えて、バーチャルキャンパスの整備も進めていくという。

コンセプトに合致した高校生が受験

 取材時は1期生の総合型選抜を終えた段階であったが、コンセプトに合致した生徒が多く受験し、手応えを得ているという。「創造性を高めたい、それを社会で生かしたいという思いを持ちながら、既存の学部や学問の枠組みには収まらないと感じている受験生が多く来てくれました。そうした枠組みそのものに違和感を覚えていた層が、ここに可能性を見いだしてくれたのだと思います。多様な背景や志向を持つ学生達が出会い、互いに刺激し合うことで、より面白い学びの場が生まれていくのではないかと期待しています」と八重樫氏。

 4月からの学部運営に当たっては「まずは、ここまで立てたコンセプトを学生と一緒に育てていきたい」と話す八重樫氏。同学部の今後の動向から目が離せない。


(文/浅田夕香)





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