デジタル ×「ICT」「マネジメント」「食・健康・暮らし」で地域全体のDXを進める人材を育てる/共愛学園前橋国際大学 デジタル共創学部
【DATA】共愛学園前橋国際大学
デジタル共創学部 デジタル共創学科
入学定員:100名
群馬県前橋市

共愛学園前橋国際大学(以下、共愛)は2026年4月、開学以来初の新設学部となる「デジタル共創学部」を設置した。学生の9割が群馬県出身、7割超が県内就職と、アクティブラーニングによる地学一体の学びで地方創生を体現する注目の大学だ。
前橋市「デジ田」と一体の新学部
今回の設置について学長の大森昭生氏は、「2021年に他法人から短大の移管を受けたのをきっかけに、子ども学と栄養学という本学にない新分野を開拓・強化しようとした。四大化やキャンパス統合を検討する過程で、文科省『大学・高専機能強化支援事業(以下、機能強化支援事業)』が挑戦の後押しをしてくれた」と経緯を明かす。
これまでの文系でなく理系の学部設置に踏み切ったのには理由がある。前橋市が内閣府「デジタル田園都市国家構想(以下、デジ田)交付金事業」(2022年)に選定され、デジタルグリーンシティ構想を推進しており、デロイトやアクセンチュア等の世界的ITコンサルティングファームが前橋に進出しているからだ。共愛もこのデジ田の中核を担う存在として、地域と一体的な発想で学部構想を行うことにした。
フェーズ1の準備期間に基金を活用
2023年5月に機能強化支援事業に応募し、7月の採択時には「デジ田のニーズを踏まえた体系的なカリキュラムや学修成果の可視化等」、5項目において「特筆すべき内容」の高評価を受けている。この事業はフェーズ1の準備段階で上限3000万円の基金を活用できる珍しい事業で、2025年3月の申請に向けて「設置準備室」を開設、外部コンサルを入れての「短大・大学移転・改組推進PT」を始動し、カリキュラム・教員構成の検討、新棟設計コンペ、高2調査等を実施した。なかでもデジ田アーキテクトとして共に前橋市にコミットしてきた日本のDXの第一人者、國領二郎氏の教授就任は大きく、これを好材料に学内外から優秀な教員15名を集めることができた。
一方で最も苦労したのは学生確保の見通しだ。2025年度設置審査から調査方法が変わり、「高2夏時点の第一希望だけでは定員100名を確保できなかった」と大森氏は振り返る。そこで大学の在学生に入学前の志望度調査を行い、その結果と調査方法を結びつけ、第一・第二希望とクロス集計することで、100名を見込む数字を得た。
「これまで地元高校との関係は密に作ってきた。校長会等に出向き、県内全ての高校に協力いただいたことで一定の回答数を得られた。今後の学部設置においては地域の高校との関係が重要になる」と大森氏は助言する。
3つの分野で共愛が創るDX人材
デジタル共創学部が育成する人材像は、「デジタル技術を活用し、他者と共にWell-Beingな社会を創造できる人材」だ。DXモジュールを必修とし、「ICT」「マネジメント」「食・健康・暮らし」の3分野のモジュールを設計した。
前国際社会学部長で、デジタル共創学部長に就任した村山賢哉氏によると、群馬県の産業構造の約3割を製造業が占め、うち1位は(株)スバルを筆頭とする輸送業、2位は食産業だという。これまでにも食は世界の潮流と考え、国際社会学部のバーチャルカンパニーという授業を通じて、県内10社以上の食産業企業と商品開発協定を結んできたが、新学部では食分野のDXを学べるようにした。
食だけでなく、各モジュールは地域の産業構造とリンクしており、「ICT」は情報系企業でICTを開発する人材、「マネジメント」は一般企業でDXを進める人材、「食・健康・暮らし」はデジ田と一体となって暮らしをDXで変える人材の育成を、前橋から発信したいと考えた。これまでどおり他者と共に社会を創る共愛の学びは変わらず、「共愛が創るDX人材」を改めて高校生や保護者に伝えたいと、デジタル共創という学部名を選んだ。
「デジタル×モジュール+共通科目」で学びをミックス
本学部は理系分野の学位として、各モジュールに対応した工学、経済学、家政学で認可を受けた。共通分野の「DXモジュール」は全員必修とし、2年次以降に自分の進みたい分野のモジュールを選択する(図表1)。なお卒業要件の単位の半分は、共愛の特徴と評価の高い共通科目を再構成した。

モジュールの狙いについて村山氏は、「仮にコース制で縦の壁を作ってしまうと『デジタル技術×食』という越境的な学びが阻害される恐れがある。国際社会学部で学びをミックスして生まれる相乗効果をずっと体感してきたので、デジタルの分野でも行いたいというのが、モジュールの一番のモチベーション」と説明する。
さらにデジ田と連携する企業からの実務家教員登用も特徴だ。共通教育のアントレ教育科目では、アクセンチュア(株)の人材育成部門統括者を客員教授に招聘し、学生のキャリアプランニングを行う。専門教育科目では、大手通信企業の客員教授によるデータ収集・分析の実践的プログラムも計画されている。
新学部の学びの拠点となるのは新6号館(KYOAI COINNOVATION HUB)だ。フロア中央の共有スペースの周囲に、「教室」や「実験室」、「キッチンスタジオ」、3DプリンタやVR・ドローンを扱う「Fab-Lab」等を配置。学生が縦横無尽に館内を行き来することでコラボレーションの触発を狙った。集中的にプロジェクトに取り組むための「プロジェクトブース」や学生と教員が同居できる「研究室」も用意した。
デジタルの力で入試のあり方を見直す
入試制度については、デジタルを扱う学部なので数学の素養は必要と考え、全入試に数学を課し、独自入試も設けた。
総合型選抜(定員10名)は、WEB学習教材atama+を使って数学の指定単元を修得し、出願資格を得るまで何度も挑戦できる入試だ。「一度きりの試験で進路が決まってしまう日本の入試のあり方を見直そうというチャレンジングな取り組みを、デジタルの力で行う大きな改革」と大森氏は意欲的だ。
公募型推薦(同5名)は、「数学の評定を基軸としつつ、デジタルと地域社会を共愛で学びたいと思う高校生に来てもらうマッチング入試」(村山氏)であり、指定校推薦(同35名)は、群馬県のDXハイスクール25校の生徒から第一志望に選ばれる進学先でありたいと期待を込めた入試となっている。
デジタルと融合した共愛のチャレンジングな取り組みから今後も目が離せない。
(文/能地泰代)
【印刷用記事】
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