「恐竜」「産業」等、福井の資源を活用した2学部を新設。既存学部と総合して実社会で活躍する人材を育成/福井県立大学 恐竜学部/地域政策学部
【DATA】福井県立大学 恐竜学部 恐竜・地質学科、地域政策学部 地域イノベーション学科
入学定員:恐竜学部 30名、地域政策学部 70名
福井県永平寺町(永平寺キャンパス)※ 2年次より恐竜学部は勝山キャンパス(勝山市)、
地域政策学部は福井まちなかキャンパス(福井市)

福井県立大学は、2025年4月に恐竜学部を、2026年4月に地域政策学部を新たに開設した。いずれも、県の地域資源を活用して教育・研究を行う学部である。両学部の設置背景と狙い等について、岩崎行玄学長に伺った。
福井の資源を用いて学ぶ、2つの学部
まずは、両学部の概要を紹介する。恐竜学部は、国内有数の恐竜化石の産地である福井県で30年以上継続的な発掘・研究を行ってきた成果と、日本の自然史の理解に重要な自然遺産が集積する福井県の環境を最大限に生かし、恐竜を含む古生物学、地質学、古環境学、古気候学等の自然科学に加えデジタル技術等幅広い分野を学び、現代の地球科学の諸問題に対応するべく協働的・自主的に課題を探求・解決できる人材の育成を目的に設置された。
また、地域政策学部は、福井の「産業」「観光・文化等」「行政」を素材にしたフィールド演習や地域データ分析を通じて課題研究や課題解決の普遍的なアプローチを学び、地域産業の高度化やグローバル化、新たな産業や企業の創出、持続可能な地域社会の構築に貢献し、地域独自のイノベーションをもたらす主体性と実行力を身につけたリーダー的人材の育成を目的に設置された。
実社会で活躍する人材を育成
これら2学部の設置は、同大学の第3期中期計画(2019年度~2024年度)に基づく。「県立大学には地域社会の持続可能性を支える人材育成が求められている」との認識のもと、地域産業の振興や地域課題の解決に貢献できる人材の育成を目的に2学部2学科1研究科の新設を計画。生物資源学部における創造農学科、海洋生物資源学部における先端増養殖科学科、そして健康生活科学研究科の新設に続き設置されたのが両学部であった。
新設する2学部を「恐竜」「地域政策」とした経緯を岩崎氏は次のように話す。
「恐竜学部については、これまでの恐竜化石の発掘・研究の蓄積や福井県立恐竜博物館の世界的な評価等による『恐竜王国 福井』の認知度の高まりから、恐竜博物館を中心とした福井の恐竜化石研究を高い学術レベルで支える大学をという機運がステークホルダーの中で高まっていたことが発端です。ただ、博物館を支えることだけを目的にすると学生の進路が限られてしまうため、当該学問分野の教員の招聘を進めながら、学部での学びがどのように社会的要請を満たすことができるか検討を進めました。具体的には、地質学の知識をもとに土木・建設、測量技術等の分野へ、古環境から現在や将来の環境を見通すという観点で気象や環境の分野へ、さらに、化石の分析に用いるCTスキャナ等の画像解析技術を発展させてIT分野へ、そしてもちろん研究者や学芸員、教員の道にも進むことができるだろうと可能性を整理した結果、学生の出口も保障できるという見通しが立ち、設置認可申請に至りました」。
こうした観点から、「恐竜学部に関しては、恐竜という福井の資源を最大限に生かして全国に打って出る学部として、『恐竜を学ぶ』だけでなく、『恐竜で学ぶ』をキーワードにカリキュラムを設計。海外の著名な大学・研究所から客員教授を招聘し、グローバル感覚も醸成します」と岩崎氏は説明する。
一方、地域政策学部については、文系志望の高校生の県内での進学先の選択肢を拡充することが第一の狙いとしてあったという。「18歳人口の減少が進んでいる状況において、若者に対して地域は生きるに値するところであることを伝える場がなければ、皆、大都市圏に行ってしまいます。地域政策学部では、福井という地域に軸足を置き、地域と連携して福井の文化や産業、行政の仕組みを学ぶことで若者の県内定着や県内企業の人材確保に貢献していきます。ただし、全国からも学生に来てもらえるよう、福井を題材に、国内外のどの地域に行っても適用できる普遍的なアプローチを学ぶというコンセプトで教育を設計しています」と岩崎氏は説明する。地域でのフィールドワークだけでなく、単位互換協定を締結した国内の大学で学ぶ国内留学制度、海外でのフィールドワーク、コーオプ教育(就労体験型学習)の機会も設け、実践的な学びを深めていく。
学部ごとに個性を出しながら地域との関わり方を考えることが特色化の鍵
2025年4月に入学した恐竜学部の1期生の入試では、総合型選抜(定員6名)に63名、(志願倍率10.5倍)、一般選抜前期日程(同15名)に109名(同7.3倍)、後期日程(同3名)に82名(同27.3倍)が出願。続く2026年4月入学者の総合型選抜の志願倍率も10倍を超える等、「全国から高い関心が寄せられている」(岩崎氏)状況にあるという。1期生34名中28名が県外出身者で、全国に打って出る狙い通りの結果だ。また、地域政策学部についても、2025年夏に実施した説明会等で高校生から良い反響を得ているという。
地域の大学において、学生募集を見据えた特色化は大きな課題だが、その鍵を岩崎氏は「全ての学部が地域密着を狙うのではなく、学部ごとに色や濃淡を出しながら全体で見たときに活気ある大学となるようバランスを意識することが重要」と話す。
「本学の場合、恐竜学部は県外からの流入を狙って教育内容を設計する一方、地域政策学部は地域での学びを中心とするカリキュラムを組む等、『この学部は地域密着、この学部は外から学生を呼び込む』等の濃淡をつけながら学部ごとの顔つきを考え、全学部を見たときにバランスが取れた構成になるようにすることは常に意識しています。全ての学部を金太郎飴のようにすると負けだと思います」と岩崎氏。今後は、両学部の運営を着実に進めていくとともに、既存の経済、生物資源、海洋生物資源、看護福祉学部のミッションの再定義を進めていくという。「学部ごとに、どの部分で地域に貢献していくか。その個性と地域との関わり方の濃淡を再度確認し、6学部を合わせて新たな価値の創造と実社会で活躍する人材の育成を目指したデザインを描いていきます」とこれからを見据えている。
(文/浅田夕香)

恐竜学部の科目「デジタル古生物学概論」の授業イメージ。
恐竜骨格を3Dスキャンし、デジタルデータ化する。

恐竜学部の科目「地球科学フィールド実習」の様子。
現場での活動を重視し、得られた情報を適切に判断・対処できるスキルの習得を目指す。

地域政策学部が2年次より学ぶ「福井まちなかキャンパス」(写真左奥)。
福井駅(写真右)に隣接する、地域に関わりやすい立地で学ぶ。
【印刷用記事】
「恐竜」「産業」等、福井の資源を活用した2学部を新設。既存学部と総合して実社会で活躍する人材を育成/福井県立大学 恐竜学部/地域政策学部
