将来の大きな社会変化の潮流を見据えた意思決定が学部・学科改革の要諦に(カレッジマネジメント Vol.248 Apr.-Jun.2026)

 今号の特集は、毎回大きな反響を頂いている「学部・学科トレンド分析」である。企業が販売する商品・サービスには、発売開始から市場を開拓し、成熟し、停滞し、撤退するまでの共通のサイクルがあるとされている。この一連の流れを、プロダクト・ライフサイクルと呼んでいる。大学の学部・学科は、大学が提供する商品・サービスに当たることから、社会の変化に応じて似たような動きがあるのではないかと考え、リクルートが長年蓄積してきた入試実態調査の学科データを分野ごとに集計し直し、募集定員と志願者という2つの軸の掛け合わせによってライフサイクル図を作成し、分析している。これを特集としてまとめたのが2008年。その後、定期的に学部・学科トレンドとしてまとめ、過去7回にわたって特集を組んできた。

 大学の学部・学科のトレンドでは、学部・学科の動向を企業の商品・サービスのように市場動向として分析している。新しい分野をある大学が新設し、新たな市場、いわゆる「ブルーオーシャン」を開拓する。その後、他大学が参入して定員数・志願者数共増加する『成長期』を迎える。その後も市場追随型大学の分野参入は続く。この時期は募集定員が増加するものの、志願者はそれほど増加しない『成熟期』を迎える。この市場を競合のいない新たな市場を開拓する「ブルーオーシャン」に対して、激しい競争環境を意味する「レッドオーシャン」と表現する。その後、意思決定の速い大学はこの市場から撤退し、他の分野を開拓する、あるいは分野と分野を掛け合わせた新たな複合分野を開拓し始める。その結果、定員数、志願者数共に減少する『撤退期』となる。しかし、社会環境の変化によって一撤退期を迎えた分野の志願者が増加に転じることがある。これを『再成長予兆期』と名付けた。近年はこのライフサイクルの回転が早まっており、本文中では〇〇期という表現を使用していないが、トレンドを読み取る際の参考にしていただきたい。

 こうした、学部・学科の分野別トレンドを長年見ていると、社会環境の変化を大きく受けていることが分かる。その変化とは、学生が就職や社会に出た後の働く環境である。一般的に景気が良いときは「文高理低」、景気が悪くなると「理高文低」と呼ばれてきた。しかし、学部・学科トレンド分析を見ると、もう少し細かく時代の変化の影響を受けていることが分かる。2013年以降の動向分析については、特集記事のサマリ(P7)をご覧いただきたい。特に近年は、あらゆる分野でデジタル化やAI技術の進化への対応、グローバル化や女性のキャリア意識の変化への対応、少子高齢化や労働環境の変化等、様々な環境変化への対応が求められている。新たな社会課題の複雑化に対応するため、分野を掛け合わせた複合分野が徐々に拡大し、全体の3割以上に達している。

 近年、社会環境の変化スピードが一段と速まっていると感じるのは、私だけではないだろう。今回の特集では、学部・学科の新増設における大きなトレンドを3つ紹介し、そこに取り組んでいる大学を取材した。社会環境の変化を読み、マーケットをしっかりと把握し、将来を見据えて意思決定を行うことは、誰も経験したことのない超少子化時代に対峙しなければならない大学にとって、従来に増して重要になってくるだろう。

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リクルート進学総研所長・カレッジマネジメント編集長

小林 浩

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