高校の進路指導・キャリア教育に関する調査

高校の「進路指導やキャリア教育の現状」を明らかにするため、全国の全日制高校を対象に、進路指導の困難度合い、キャリア教育の推進状況、高等教育機関等への期待などに関する調査を実施しています。

【2017.1.30 リリース】高校教員「進路指導が困難」9割以上
要因は「入試の多様化」がトップに

■91.9%の教員が、進路指導を「難しい」と感じている。前回調査(2014年)から引き続き高止まり。

■困難の要因(上位3項目)は「入試の多様化」がトップ(前回4位から上昇)

・難しさを感じる要因は、前回調査4位の「入試の多様化」(25.7%)がトップ。

・前回調査1位の「進路選択・決定能力の不足」は3位、2012年調査1位の「家計面について」は5位。景況感については回復の兆しを感じさせる結果である一方で、入試制度の多様化が進路指導に影響を与えている。

■大学・短期大学などに期待することは、「入試の種類の抑制」「わかりやすい学部・学科名称」で変わらず、「実際の講義・研究に触れる機会」が増加。

・大学・短期大学などに期待することについては、1位が「入試の種類の抑制」(39.3%)、2位には「わかりやすい学部・学科名称」(36.6%)が入り、入試制度や学部・学科の種類が増加・複雑化している現状が進路指導にも影響していることが明らかとなった。

■生徒の進学先として重視する点

・トップは「学びたい学部・学科・コースがあること」。高校生の重視する点(進学センサス2016)と比較すると、1位は共通だが、2位は教員は「学生の面倒見の良さ」(高校生29位)、高校生は「校風や雰囲気の良さ」(教員16位)を重視。

■将来社会で必要となるにもかかわらず、現在高校生に備わっていないと感じている能力は、“主体的に行動する力”。一方、実際に持っている力としては、「規律性」「傾聴力」など、”チームで働く力”が高い。

・生徒が将来社会で働くにあたり、必要とされる能力 1位:主体性(60.3%) 2位:課題発見力(44.1%) 3位:実行力(35.3%)

・生徒が現在持っていると思う能力 1位:規律性(51.6%) 2位:傾聴力(32.3%) 3位:柔軟性(22.4%)

「アクティブラーニング型授業」9割以上の高校で実施
組織的な取り組みが約4割

■アクティブラーニング型授業の実施状況

・アクティブラーニングの視点による授業を実施している高校は全体の92.9%。取り組みの主体者別にみると、学校全体や教科で組織的に取り組んでいる学校が41.7%。

※参考 前回調査(2014年)と比較すると、アクティブラーニング型授業の実施率は約2倍に増加(2014年47.1%→2016年92.9%)。学校全体・教科で取り組んでいるケースも2倍に増加(2014年20.7%→2016年41.7%)。(アクティブラーニングの概念の変化に伴い、設問文を変更しているため参考値)

■高大接続議論に対応した取り組み

・32.4%の高校が、高大接続議論を踏まえた取り組みを実施。

・高大接続議論を踏まえた取り組みを実施している高校は全体の32.4%。「今後取り組む予定がある」(45.6%)が、実施を上回った。

・対応を進めるうえでのハードルのトップは「大学入学希望者学力評価テスト(仮)の内容がまだ具体的ではないので対策が取れない」(51.2%)。

■グローバル社会への対応

・34.4%の高校が、グローバル社会を意識した教育の取り組みを実施。前回調査(2014年)より10.2ポイントの上昇。

※参考 アクティブラーニングの視点からの授業とは(平成28年8月1日文部科学省中央教育審議会教育課程企画特別部会資料より抜粋)
「アクティブ・ラーニング」の視点は、学校における質の高い学びを実現し、子供たちが学習内容を深く理解し、資質・能力を身に付け、生涯にわたってアクティブに学び続けるようにするためのもの。「学び」の本質として重要となる「主体的・対話的で深い学び」の実現を目指す授業改善の視点が、「アクティブ・ラーニング」の視点。
①学ぶ意味と自分の人生や社会の在り方を主体的に結びつけていく「主体的な学び」
②多様な人との対話や先人の考え方(書物等)で考えを広げる「対話的な学び」
③各教科等で習得した知識や考え方を活用した「見方・考え方」を働かせて、学習対象と深く関わり、問題を発見・解決したり、自己の考えを形成し表したり、思いを基に構想・創造したりする「深い学び

創設が検討されている「専門職業大学・専門職大学(仮称)※」
高校教員の認知は65% 課題は、専門学校との違いの明確化

■高校教員の64.6%が専門職業大学・専門職大学(仮称)※を認知。うち、20.9%が名前、内容ともに認知している。

・大短進学率別に見ると、進学率が高い方が認知率が高く、大短進学率70%以上の高校は69.1%、40%未満の高校では56.7%と、12.4ポイントの差がある。

■創設による成果が期待できると考える教員は33.6%。最も多いのは「どちらともいえない」47.6%。

・「期待できない」と考えているのは17.0%で、期待できると考えている層を下回る。

■期待できる点のトップは「実践的な教育内容で技術が身につきそう」(41.1%)

1位「実践的な教育内容で技術が身につきそうである」(41.1%)
2位「現在の社会ニーズに対応した人材育成ができる」(26.6%)
3位「進路選択の多様化」(25.7%)

■懸念される点のトップは「現状の専門学校との違いがわからない」(52.2%)

1位「実践的な教育内容で技術が身につきそうである」(41.1%)
2位「現在の社会ニーズに対応した人材育成ができる」(26.6%)
3位「進路選択の多様化」(25.7%)

※専門職業大学・専門職大学(いずれも仮称)
企業で即戦力となる人材の養成を目指して、中央教育審議会の特別部会により創設が検討されている、職業教育に特化した新たな高等教育機関。専任教員の4割以上を企業などでの勤務経験が5年以上ある「実務家教員」とすること、卒業単位の3~4割以上を実習科目にし、企業での実習(4年制なら600時間以上)も義務づける。
卒業要件は大学・短期大学と同水準で、修業年限は2~4年、「学士」「短期大学士」相当の学位を授与することなどが適当とした。文科省は2019年度の開設を目指して必要な法改正をする方針。

調査概要
調査項目
進路指導の困難とその要因/進路指導の取り組み状況/進路指導における数値目標/キャリア教育の実施状況/キャリア教育の認識/キャリア教育の評価/高大接続議論を受けての対応状況とそのハードル/高大接続・連携への期待/高専接続・連携への期待/アクティブ・ラーニングについて/専門職大学について
調査時期
2016年10月
調査方法
郵送調査。進路指導主事宛に調査票を送付
調査対象
全国の全日制高校

※本調査は、2018年(第20回)から高校の教育改革の実態を明らかにするため
「高校教育改革に関する調査」に改訂して実施

「高校教育改革に関する調査(2018年~)」はこちら