関東難関私大のイメージをポジショニングマップで比較――「リクルート進学ブランド力調査」※より

本誌177号第2特集では、関東・東海・関西エリアに所在する全大学を対象に.....

リクルート「進学ブランド力調査」とは
高校生の大学選びの動向を明らかにするため、年に1回、高校3年生を対象として行っている調査です。大学の志願度、知名度の他、大学に対する50項目にわたるイメージを調べています。

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 本誌177号第2特集では、関東・東海・関西エリアに所在する全大学を対象に、「機能的価値を表すイメージ項目」27項目についてのポジショニングマップを作成し、リーマンショック前の2008年と2012年を比較した。各エリアで、高校生が大学を見る軸が5年前と今では変化していたことは記事のとおりである。

 ここでは、関東エリアと関西エリアのそれぞれの難関私大に対して、5年前と今で高校生がどんなイメージを持っているのか、今度は「感性的価値を表すイメージ項目」(15項目)で比較してみたい。

※感性的価値を表すイメージ項目
・自由な            ・のんびり          ・明るい
・親しみやすい   ・個性的な         ・多様な
・力強い            ・おしゃれな       ・先進的な
・厳格な            ・落ち着いた       ・まじめ
・自慢できそう    ・知的な             ・上品な


■ポジショニングマップで位置を比較

 まず、関東エリアの難関私大、いわゆる早慶上智MARCH(早稲田大学、慶應義塾大学、上智大学、明治大学、青山学院大学、立教大学、中央大学、法政大学)8大学のポジショニングマップを見てみよう。

※クリックで画像拡大
関東難関私大 2008・2012年

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 マップ上に、軸1、軸2に注目して頂きたい。この軸は、2008年と2012年でそれぞれ、高校生が対象校に対して、15項目のイメージがあるかないかを回答したスコアにより、最も相反性の高い(遠い)イメージ項目同士を対極に並べている。例えば2008年の軸1では、「親しみやすい」とイメージされた大学は、「上品な」というイメージからは最も遠いと思われていることを示している。そして、この軸は軸1、軸2、軸3…と無数に存在し、その中から、対象校の中で対極するイメージの距離が最も遠かった軸を軸1、次に遠かった軸を軸2として、マップ上に示している。

 こうして作成した2008年と2012年の軸を比較すると下記の通りとなっている。
2008年・・・・・軸1【親しみやすい/自由な】⇔【上品な】          軸2【のんびり/おしゃれな】⇔【厳格な/力強い】
2012年・・・・・軸1【親しみやすい】⇔【上品な/おしゃれな】     軸2【のんびり/明るい】⇔【まじめ/厳格な】

 見たところ、2008年と2012年の軸は概ね変わっていないので、この8大学に対する高校生のイメージは5年間でさほど変化がないようだ。細部では、「おしゃれな」が軸2から軸1へと移っているので、おしゃれなイメージが高まっている大学があるようだ。また、軸2が「力強い」から「まじめ」に変わっているので、まじめなイメージをより強く持たれるようになった大学があることが推察される。

 個別大学のポジションに注目すると、「上品でおしゃれ」なイメージを持たれているのは5年前も今も青山学院大学、立教大学のようだ。ちなみに、最近バンカラからおしゃれにイメージチェンジしたと言われる明治大学はというと、2012年のマップの右端にポジショニングされ、「親しみやすく明るく自由な」イメージを持たれており、この8大学の中では、どちらかというと、マップの左側の「上品でおしゃれな」系統よりは、マップの右側の法政大学、早稲田大学、中央大学と同じ系統に見られていることが分かる。

 2008年に「上品で厳格な」イメージだった上智大学、慶應義塾大学は、2012年には「上品で知的で自慢できそう」なイメージになった。この2大学より「厳格でまじめ」なイメージが高まったのが中央大学だ。2008年ではマップ右上にポジショニングされ、「明るく自由な」イメージだったのが、2012年にはマップの右下にポジションを変えている。

■イメージレーダーチャートでスコアを比較

 マップ上の変化を見たあとに、この8大学に対して実際にどのくらいのイメージスコアを得ていたか、レーダーチャートで示し、2008年と2012年で比較してみたい。

イメージレーダーチャート関東2008年・2012年比較画像印刷用PDF

 まず、早稲田大学と慶應義塾大学だが、2008年でイメージスケールも波形もともに似ていた両大学。共通するのは「知的な」「自慢できそう」が他の項目に比べ高いことだ。
 5年比較では、2008年よりも2012年のイメージスケールが全体的に小さくなっている。イメージスコアが下がっているということなので、両大学の持つ個性やイメージが弱まっているという見方もできる。

 個別項目では、慶應義塾大学の場合、「おしゃれな」イメージが強まった一方、「まじめ、厳格」や「先進的、多様な、力強い」イメージが下がっている。ちなみに「進学ブランド力調査2012」の自由回答を見ると、慶應義塾大学は「憧れ、私立でトップレベル、就職に強い」などの意見が多かった。
 早稲田大学は、レーダーチャート右上部分の「自由な、明るい、力強い」のイメージが全般的に下がっている。「おしゃれな」「多様な」のイメージも下がっているようだ。自由回答では、「憧れ、私立のトップレベル、政経の最高峰、就職に強い」などが目立った。自由回答の内容も非常に似ていた。

 次に、上智大学、立教大学、青山学院大学について見てみる。2008年では早慶に比べイメージスケールが一回り小さかった。2012年ではイメージスケールがかなり小さくなってしまった。
 相対的に青山学院大学の「おしゃれな」が群を抜いている。「のんびり」のイメージも高い一方、「まじめ、厳格な、先進的な」イメージは下がった。自由回答では、「おしゃれ、キャンパス・校風・雰囲気が良い、交通が便利、英語が学べる」などだった。
 上智大学も「おしゃれな」イメージがアップした一方、「まじめ、厳格な、個性的な、力強い」などの項目で下がっている。自由回答は「レベルが高い、国際的、英語が学べる」などの意見が多かった。
 立教大学は「知的な」イメージが低下している一方、「親しみやすい」イメージが増えている。自由回答では、「校風・雰囲気が良い、カリキュラムが魅力的、観光、外国語を学びたい」などが目立った。

 明治大学、中央大学、法政大学を見ると、これまでの5大学に比べ、イメージスケールがあまり小さくなっていないので、個性や存在感を維持していると見ることもできそうだ。
 明治大学は、「知的な、まじめ、自慢できそう」のイメージが低下したが、「明るい、多様な、個性的な」といったイメージが増加した。自由回答は、「自分に合っている、伝統、就職に有利、人気があるから」などだった。
 中央大学は前述の通り、「知的な、まじめ、厳格な」イメージが増えている一方、チャートの右上部分の「親しみやすい、自由な、明るい」などのイメージが低下した。伝統ある司法試験をはじめ、国家試験合格率の高さがイメージされるのであろう。自由回答にも「資格取得、国家試験に有利」などの意見が目立った。
 法政大学はスケール、波形ともに大きな変化はない。「自由な、力強い」のイメージがやや低下し、「まじめ、落ち着いた」のイメージがアップしている。自由回答は「独特の学部がある」など特定の学部・学科名を挙げる声が多く、「将来の仕事につながる」などの意見もあった。

 最後に、自由回答でこの8大学に共通のキーワードとして、「有名」「ブランド・評判が良い」「MARCHだから」など、他人軸(ブランド志向)のコメントが挙げられていたほか、総合大学のメリットとして、「学びたい学部・学科がある」の意見も多かった。

→関西編につづく

カレッジマネジメント編集室 能地泰代 (2012/11/27)

  
   

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