【進学ブランド力調査2012追加分析】関西難関私大のイメージをポジショニングマップで比較――「リクルート進学ブランド力調査」※より

リクルート「進学ブランド力調査」とは
高校生の大学選びの動向を明らかにするため、年に1回、高校3年生を対象として行っている調査です。大学の志願度、知名度の他、大学に対する50項目にわたるイメージを調べています。

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■ポジショニングマップで位置を比較

 関西エリアの難関私大、いわゆる関関同立産近甲龍(関西大学、関西学院大学、同志社大学、立命館大学、京都産業大学、近畿大学、甲南大学、龍谷大学)8大学のポジショニングマップを見てみよう。

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関西難関私大 2008・2012年

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 2008年と2012年の軸を比較すると下記のとおりだ。
2008年・・・・・軸1【自由な/のんびり】⇔【上品な/知的な】  軸2【おしゃれな】⇔【多様な】
2012年・・・・・軸1【自由な/のんびり】⇔【上品な】              軸2【落ち着いた】⇔【多様な】

 まず軸の変化だが、2012年には軸1から「知的な」が消えているので、この8大学に対して、知的なイメージが弱まっている可能性が考えられる。また2012年には軸2の上部が「落ち着いた」に変わったことで、各大学のポジションが少しずつ変わっている。

 個別大学のポジションでは、2008年には同志社大学、立命館大学が、「知的で自慢できそう」なイメージにポジショニングされていた。同志社大学は「上品な」イメージ寄り、立命館大学は「先進的な」イメージ寄りだ。2012年での「知的で自慢できそうな」イメージは立命館大学になり、関西学院大学は「おしゃれな」イメージ寄り、同志社大学は「上品でまじめな」イメージ寄りである。

 マップの右下部分を見ると、2008年は「自由な、明るい、多様な」といったイメージを持たれるグループとして、関西大学、近畿大学が、ずっと離れた右端に京都産業大学がポジショニングされていた。2012年はというと、この3大学の距離が近づき、よりイメージが似てきているようだ。

 最後に右上部分だが、2008年は、右上端に甲南大学がポジショニングされており、「おしゃれでのんびり」のイメージを持たれていた。龍谷大学はどの項目もバランスよくイメージされたため、マップの中央付近にポジショニングされている。2012年には軸2が変わり、甲南大学は「落ち着いた、のんびり」のイメージに変わったようだ。龍谷大学は「個性的」なイメージが強まったように見える。

■イメージレーダーチャートでスコアを比較

 次に、実際のスコアを示したイメージレーダーチャートで、2008年と2012年を比較してみよう。

イメージレーダーチャート関西2008年・2012年比較画像印刷用PDF

 関関同立と呼ばれるグループでは、2008年は、立命館大学、同志社大学、関西学院大学のイメージスケールが拮抗していた。3大学とも波形は似ているが、それぞれ、立命館大学は「先進的で自慢できそう」、同志社大学は「知的で自慢できそう」、関西学院大学は「明るく自由で親しみやすくおしゃれ」なイメージをより強く持たれていた。志願度1位を維持する関西大学は、実は最もイメージスケールが小さいことにも気づく。

 2012年になると、4大学とも、イメージスケールが小さくなっている。
 拮抗していた3大学のうち、立命館大学がイメージスケールが最も大きくなり、存在感で頭一つ抜きんでた。「先進的、知的な、多様な、自慢できそう」のイメージ項目で最もスコアが高い。自由回答は、「レベルが高い、将来の可能性が広がる、資格が取れる」などだった。
 同志社大学は「落ち着いた」のイメージ項目が4大学中最も高い。自由回答は、「伝統がある、偏差値が高い」などだった。
 関西大学は「自由でのんびり明るい」イメージで、「厳格、先進的、まじめ、多様な」イメージが低下した。自由回答では、「憧れ校、クラブ活動が盛ん、活気がある、自宅から通える」などだった。
 関西学院大学はやはり「おしゃれな」イメージが高いが、5年前よりスケールが大幅に小さくなっているのは気になる点だ。自由回答は、「憧れ校、校風が良い、外国語が学べる」などだった。

 次に産近甲龍と呼ばれるグループでは、2008年は甲南大学、近畿大学のイメージスケールが他を圧倒して大きかった。甲南大学は右上と左下に伸びる波形で、「自由でのんびり明るく親しみやすい」「おしゃれで上品で自慢できそう」なイメージを持たれていた。近畿大学は右側に伸びる波形で、「明るく多様で知的で自慢できそう」なイメージだ。京都産業大学の波形は右上に集中しており、「自由で明るく親しみやすく多様な」イメージ、龍谷大学は「上品な」が低い波形で「のんびり明るく親しみやすい」「知的で力強く自慢できそう」というイメージだ。2008年はそれぞれの持つ個性がはっきりと認識されていた印象を受ける。

 しかし2012年になると、4大学ともイメージスケールが小さくなった。
 最も強くイメージスケールが大きくなったのが近畿大学だ。波形は星形になり、それまでの項目に加え「自由な、先進的な」イメージも高まり、「落ち着いた」のイメージも下がっている。自由回答は、「大規模で楽しそう、魅力的、農学部・水産学部を志望」など特定の分野名を挙げる声も多くあった。
 京都産業大学は、「自慢できそう、知的な」のイメージが強まり、「自由な、明るい、多様な」などのイメージが低下した。自由回答には、「国際的、外国語が学べる」などの意見があった。
 これと似た波形を持つのが龍谷大学。2008年より「自由な、個性的な、上品な」のイメージが増加し、「のんびり、親しみやすい、力強い、知的な」などのイメージが低下した。自由回答には、「学費が安い、資格が取れる、新設の農学部に興味がある」などがあった。
 2008年に1、2を争うイメージスケールの大きさだった甲南大学が、2012年には存在感を大幅に下げている。特徴的だった「明るい、親しみやすい、おしゃれな、自慢できそう」などのイメージが大幅に低下し、「のんびり、落ち着いた、上品な」が4大学中最も高くなった。自由回答では、「偏差値や校風が自分に合っている」という意見がみられた。

 自由回答でこの8大学に共通のキーワードは、「有名」「就職に有利」「頑張れば手が届きそう」などや、関東と同様に「学びたい学部・学科がある」の意見も多かった。


 今回は関東難関私大、関西難関私大のポジショニングマップとイメージレーダーチャートを使い、各大学のイメージを見てきた。特にイメージレーダーチャートでは、2008年より2012年のほうが全体スケールが小さくなる一方で、2012年もイメージスケールを維持できている大学もあった。つまり、全体的に各大学に対するイメージを高校生が区別しづらくなっている中で、存在感を維持できている大学と二極化が起こっていることもわかった。高校生に、各大学の個性を伝えられるかどうかが、18歳人口が減少する今後、選ばれる大学になるためには不可欠であるようだ。

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カレッジマネジメント編集室 能地泰代 (2012/11/27)

  
   

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