【卒業時満足度調査2015追加分析】大学生のキャリア観と大学での経験

今回は、『大学生の卒業時満足度調査2015』(※)より、大学生のキャリア観に対して、大学での経験がどのように影響しているのかについてみていきたい。 


■大学で学んだことが将来のキャリア形成に役立ったと回答しているのは全体の55%

まず、「将来のキャリアを考えるに当たり、大学で学んだことが役に立った」と答えているのは全体の55%とほぼ半数であった。(図1)  文系理系別で見てみると、理系が文系を上回っている。さらに男女でみると、理系は男女の差があまりないのに対し、文系は男女で約10ポイントの差がついており、文系男子については5割を切っている。

【図1 将来の就職や仕事、キャリアを考えたり決めたりするうえで、在籍した大学で学んだことや経験は役に立ったか(役に立ったと回答した人の割合)】

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役に立った理由としては、「卒業研究を通して、目標を立てて何かに取り組むことを学べた(理系女子)」「幅広い価値観の人に出会えた(文系男子)」「人生で初となる就職活動は、イメージしにくく大きな不安を抱くもので、それに対する基本姿勢や心構えを提示してくれる講座やセミナーが多く開催されていたことは、非常に役に立った(文系女子)」など、講義や研究を通じた成長、人との出会いやキャリアサポートの充実が挙げられている。

一方、役に立たなかった理由としては、「文系だと特に、大学で学ぶのは所詮アカデミックなものであるから(文系女子)」「専攻していた学部とは違う分野で就職したため(理系男子)」「希望していた就職先の業界が大学ではあまり就職実績がなく、自分の力で道を切り開かざるを得なかった(文系女子)」など、大学の学業とキャリアの方向性が異なっていたことが挙げられている。


■キャリア観に影響を与えたのは、

文系は「友人との関わり」、理系は「専門分野の勉強・研究」

では、実際に大学でのどのような経験が、彼らのキャリア観に影響を与えているのだろうか。(図2)

【図2 キャリア観に影響を与えた大学での経験(影響を受けたと回答した人の割合)】

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全体でみると、影響を受けた経験トップは「学校の専門分野の勉強・研究」と「友人との関わり」で、5割を超えている。  文系理系別にみると、それぞれトップ3は以下のようになっている。

文系 1位「友人との関わり」(53.1%)    

    2位「アルバイト」(47.9%)   

    3位「学校の専門分野の勉強・研究」(47.4%)

理系 1位「学校の専門分野の勉強・研究」(62.0%)  

    2位「友人との関わり」(52.3%)  

    3位「学校の先生・教授との関わり」(45.9%)

特に、「学校の専門分野の勉強・研究」に関しては、理系が文系を約9ポイント上回っており、「学校の先生・教授との関わり」についても理系のほうが影響を受けている。

「ゼミの先生の専門領域と自分の興味分野が一致していたため、先生の経験や意見を聞くことで、その分野に対する理解や将来のキャリアについて具体的に考えることができた(理系女子)」「グループワークが主体の授業なので、色々なテーマをめぐり、問題解決に向けてチーム一丸となって討議やプレゼンテーションを行う中で、意見を述べることやチームとしてまとめることができるようになった(理系男子)」など、理系は学業においても教授との関わりが深く、内容もキャリアと直結しやすい傾向にあるからだろう。

一方、「アルバイト」は文系が理系を5ポイント近く上回っている。

「社会に関わることの大切さ、大変さ、裏方でも誰かの役に立っているという実感を感じることができた(文系男子)」「最も自分の考えで動く機会が多かった(文系女子)」など、実際に社会に出て多様な人とかかわる経験に影響を受けたと考えている学生が多いようだ。

リクルート進学総研研究員 牧田綾子 (2016/06/30)

※大学生の卒業時満足度調査2015 調査概要

・調査目的 : 卒業時における大学生の学校満足度・入学前の期待・卒業時の評価および卒業後の学び継続意向を把握する。

・調査時期 : 2015年2月27日(金)〜3月26日(木)

・調査方法 : インターネット調査 ・調査対象者 : 2015年3月に学校を卒業する予定の大学4年生・大学6年生(18〜25歳)。