【進学ブランド力調査2015追加分析】関東難関私大のイメージポジショニングマップ

本誌194号(2015.09発行)では、特集「進学ブランド力調査2015」において .....

 本誌194号(2015.09発行)では、特集「進学ブランド力調査2015」において、関東・東海・関西エリアに所在する全大学を対象に、各学校の (1)知名度 (2)興味・志願度 (3)イメージ を報告した。

 今回は(3)イメージ(「機能的価値を表すイメージ項目」35項目と「感性的価値を表すイメージ項目」15項目)について、ポジショニングマップとイメージレーダーチャートを作成し、各エリアで、高校生が大学を見る軸が変化しているのか2010年と2015年を比較してみたい。ここでは、関東エリアのそれぞれの難関私大に対して、5年前と今で高校生がどんなイメージを持っているのかを報告する。

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■ポジショニングマップで位置を比較

 まず、関東エリアの難関私大、いわゆる早慶上智MARCH(早稲田大学、慶應義塾大学、上智大学、明治大学、青山学院大学、立教大学、中央大学、法政大学)8大学の機能的価値イメージポジショニングマップ(図表1)を見てみよう。

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 マップ上の、軸1、軸2に注目して頂きたい。この軸は、2010年と2015年でそれぞれ、高校生が対象校に対して、35項目のイメージがあるかないかを回答したスコアにより、最も相反性の高い(遠い)イメージ項目同士を対極に並べている。例えば2010年の軸1では、「教授・講師陣が魅力的」とイメージされた大学は、「偏差値が自分に合っている」というイメージからは最も遠いと思われていることを示している。そして、この軸は軸1、軸2、軸3…と無数に存在し、その中から、対象校の中で対極するイメージの距離が最も遠かった軸を軸1、次に遠かった軸を軸2として、マップ上に示している。

 こうして作成した2010年と2015年の機能的価値を表すイメージ軸を比較すると下記の通りとなっている。
2010年・・・軸1【教授・講師陣が魅力的】⇔【偏差値が自分に合っている】
              軸2【国際的なセンスが身につく】⇔【クラブ・サークル活動が盛ん】
2015年・・・軸1【将来の選択肢が増える】⇔【偏差値が自分に合っている】
              軸2【国際的なセンスが身につく】⇔【学費が高くない】

 2010年と2015年の軸の変化を見てみると、軸1は「教授・講師陣が魅力的」から「将来の選択肢が増える」に、軸2は「クラブ・サークル活動が盛ん」から「学費が高くない」に変わっている。この5年間でこの8大学において、「将来の選択肢が増える」「学費が高くない」イメージをより強く持たれるようになった大学があることが推察される。

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 続いて、感性的価値を表すイメージのポジショニングマップをみていきたい(図表2)。2010年と2015年の感性的価値を表すイメージ軸を比較すると下記の通りとなっている。
2010年・・・軸1【おしゃれな】⇔【力強い】            軸2【親しみやすい】⇔【厳格な】
2015年・・・軸1【おしゃれな】⇔【厳格な】            軸2【親しみやすい】⇔【上品な】

 2010年と2015年の軸の変化を見てみると、軸1と軸2が入れ替わり、「厳格な」が軸2→軸1に変わっているので、おしゃれなイメージをより強く持たれるようになった大学があることが推察される。

 個別大学のポジションに注目すると、「上品でおしゃれ」なイメージを持たれているのは5年前も今も青山学院大学・上智大学のようだ。ちなみに、立教大学は親しみやすいイメージよりおしゃれなイメージを持たれるようになり、青山学院大学と近い「おしゃれで明るく自由な」イメージを持たれるようになったようだ。

 2010年に「親しみやすく力強い」イメージだった、法政大学、明治大学、中央大学は、2015年には「厳格で親しみやすい」イメージになった。この3大学で「親しみやすい」イメージが一番高まったのは中央大学であった。

■イメージレーダーチャートでスコアを比較

 マップ上の変化を見たあとに、この8大学に対して実際にどのくらいのイメージスコアを得ていたか、レーダーチャートで示し、2010年と2015年で比較してみたい(図表3)。

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 まず、早稲田大学と慶應義塾大学だが、2010年でイメージスケールも波形もともに似ていた両大学。共通するのは「知的な」「自慢できそう」が他の項目に比べ高いことだ。
 5年比較では、2010年よりも2015年のイメージスケールが全体的に小さくなっている。イメージスコアが下がっているということなので、両大学の持つ個性やイメージが弱まっているという見方もできる。

 2大学を比較すると、2010年は慶應義塾大学が早稲田大学より高かった項目は8項目(15項目中)だったが、2015年には4項目と半減している。特に、「知的な」「まじめ」「自慢できそう」で早稲田大学が大きくスコアを伸ばし、慶應義塾大学のスコアを抜いた。またイメージの総和(全項目スコア総計)を比較してみると、2010年は慶應義塾大学の方が約40%高かったが、2015年は早稲田大学の方が高くなっており、高校生から持たれるイメージの総和は早稲田大学が大きくなっている。
 早稲田大学の自由回答では、「憧れ、私立のトップレベル、政経の最高峰、就職に強い」「国際的に活躍できる」「受入留学生数日本一でグローバルな視野で学べる」など、2010年にはほぼなかった“グローバル”に関する自由回答が目立った。2012年に掲げたWaseda Vision 150のもと打ち出している教育改革が高校生にも伝わっているとみることもできる。

 次に、上智大学、立教大学、青山学院大学について見てみる。2010年では早慶に比べイメージスケールが一回り小さかったが、2015年もイメージスケールの変化はほぼなかった。3大学においては、大学の持つ個性やイメージは概ね維持されている見方ができる。
 相対的に青山学院大学の「おしゃれな」が群を抜いている。「自慢できそう」「明るい」「自由な」のイメージも高い一方、「上品な」イメージは下がった。自由回答では、「おしゃれ、校風・雰囲気が良い、都会で立地がよい、英語が学べる、駅伝が強い」などだった。2013年に人文・社会科学系7学部を神奈川の相模原キャンパスから青山キャンパスに集約し、4年間同一キャンパスで学べるようになった影響もあってか、“おしゃれ、都会、立地がよい”という自由回答が増えている。
 立教大学は「自由な」イメージが低下している一方、「おしゃれな」「上品な」「厳格な」イメージが増えている。自由回答では、「校風・雰囲気が良い、カリキュラムが魅力的、観光、外国語を学びたい」などが目立った。

 明治大学、中央大学、法政大学を見ると、イメージスケールが小さくなっている。高校生から見た個性やイメージの総和が若干は小さくなっていると言えそうだ。

 最後に、自由回答でこの8大学に共通のキーワードとして、「有名」「ブランド・評判が良い」「MARCHだから」など、他人からの評価(ブランド志向)のコメントが挙げられていたほか、総合大学のメリットとして、「学びたい学部・学科がある」の意見も多かった。

リクルート進学総研研究員 池内摩耶 (2016/04/05)

  
   

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