【入試実態調査2014追加分析】定員800人の分岐点が変わるとき

 リクルート進学総研による「入試実態調査」2014年度版の集計がまとまった。まずは直近20年の状況を振り返りたい。18歳人口は、ピークの1992年度(205万人)から今年度は118万人になり、この20年余りでほぼ半減した(図表1)。一方で、大学進学率(過年度含む)は26.4%から51.5%と約2倍になり、人口減を大学進学率の上昇で補てんしてきたという見方もできる。

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 志願者数を設置者別に見ると、国立の志願者数は1994年以降減少し続け、20年間で約10万人減少した。公立は2003年に最も多い15万9000人になってからは減少傾向であったが、2008年のリーマンショックのあと再び上昇し、今年度には15万7000人にまで増加してきている。総志願者数の8割超を占める私立もやはり18歳人口減に伴い減少していたが、2000年から2004年の5年間で臨時的定員の恒常的定員化が認められたこともあり、志願者も再び増加した。さらに、2004年度以降は大学設置認可における届出制度が導入されたことで学部・学科の新設が相次ぎ、募集定員数も1992年の46万人から今年度は53万人と7万人増加した。またこの間、大規模私立大学を中心に全学部統一入試やWEB出願(ネット割、併願割)、地方入試などの入試改革も進んだため、のべ志願者数が増え続け、2014年度には340万人と1997年度の水準に達している。

 ではここからは、増加し続ける私立大学の志願者動向について、日本私立学校振興・共済事業団のまとめから、特に規模に注目して見ていきたい。

 最初に志願倍率だが、定員「200人未満」から「500人以上800人未満」では、志願倍率は3倍台で推移しているが、「800人以上1000人未満」からフェーズが変わり5倍台となっている(図表2)。この800人の分岐点は、後述の定員充足率とも連動することになる。そして定員規模が大きくなるほど、志願倍率も高くなり、「3000人以上」ともなれば11倍台にも上っている。

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 次に志願者の規模別分布を見ると、「3000人以上」の大学への志願者が全体の44.4%を占めていることがわかる(図表3)。次に高いのが「1000〜3000人未満」(37.0%)で、この2つが志願者全体の約8割を占めている。大規模大学に志願者が集中していることを示している。

 続いて定員充足率では、志願倍率で触れた800人に着目すると、定員規模が800人以上なら定員充足するが、それ未満では定員割れを起こしている(図表4)。私立大学では入学定員が800人未満の場合に未充足の割合が高くなる傾向が以前より指摘されてきたが、800人以上ならば安泰かというと、今年の場合はそうとも言えない状況になっている。「800人以上1000人未満」は昨対2.8ポイント減の101.1と、定員充足ギリギリまで落ち込んでいるのである。昨年より定員充足率が改善したのは「3000人以上」のみで、大規模大学に志願者が集中する構造はさらに進みつつある。とりわけ、2014年度は前年から一気に5万人近く18歳人口が減少したこともあり、大学全体に占める未充足校の割合は前年より5.5ポイント上昇して45.8%にのぼっている。今後のさらなる人口減少を考えると800人の分岐点も移行する可能性が否定できない。

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 社会が求める大学の役割が変わり、大学を卒業するときに何ができるようになっているか、学習到達目標(ラーニング・アウトカム)で大学教育を評価する時代に移ろうとしている。リーマンショック後には、専門学校の進学率が上昇し、今年4月には専門学校と産業界が連携した教育課程「職業実践専門課程」がスタートした。教育再生実行会議第5次提言でも、「高等教育には社会のニーズに応じた職業人教育が望まれるため、質の高い実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関の制度化が求められる」といった、新たな学校種の案も浮上している。

 2018年から2025年までに、18歳人口は109万人にまで減少すると推計されている。今より約9万人減るということであり、図表5で全体の約58%にあたる、定員500人未満の私立大学333校の入学定員数に匹敵するのだ。既に、2015年入試で募集を停止する大学も2校現れた。大学は10年後も、選ばれる存在であり続けることができるであろうか。

 リクルート『カレッジマネジメント』編集部 能地泰代 (2014/9/19)