【入試実態調査2014追加分析】入試改革のトレンドがもたらすインパクト

 旺文社がまとめた2014年度私立大学一般入試結果調査(533大学集計、志願者300.4万人)では、近畿大学が初のトップとなった(図表1)。以下、要因を独自に分析したい。
 創設以来、理系学部に強いブランド力を持つが、2010年に総合社会学部を設置したことで女子の志願者数が増加。近大マグロの新聞広告、つんく♂氏プロデュースの入学式など、最近は話題も多い。特に、“地球環境に優しく(エコロジー)、受験生の経済的負担も減らす(エコノミー)「近大エコ出願」”を2013年度入試から開始したのが大きく、志願者は前年比120.7%の伸びとなった(小誌180号)。Web出願は、紙で行う出願をWebで行うものだが、近畿大学は紙の出願を廃止し、完全ネット化とし(2014年度)、受験料割引も行った。同じWeb出願でも、受験料割引のない場合はそれほど志願者が増えなかった中、「近大エコ出願」はWeb出願そのものの認知度も上げた。
 ちなみにランキングにはないが、エコノミーに敏感に反応したのが関西エリアの受験生。龍谷大学と京都産業大学も2013年度からWeb出願を導入し志願者を増やしてきている。龍谷大学の「インターネット出願」は、入試日程(同一出願期間)単位において、受験料総額から5000円を割引。京都産業大学の「ネット割」も、1出願につき5000円割引、一般入試で併願するとさらに割引やパック価格を設定している。

 志願指数に着目して、前年より志願者数を増やした大学を見ると、2014年度入試から、新たに統一入試を導入したことで志願者数を増やしたのが、日本大学と法政大学だ。日本大学は、2014年度一般入試から「N方式第1期」を新設。一度の受験で複数学部(学科)だけでなく、同一学部内の複数学科への併願も可能とし、併願2学科目から入学検定料を2万円割引とした。日本最大級の統一入試というふれこみで、全国の主要都市16か所に地方試験場を設置している。法政大学は、2014年度入試から、全国10都市で、学部間併願「T日程(統一日程)」を新規に実施。学部間のみ併願可能で、2学部目からは入学検定料を2万円割引としている。

 立命館大学はキャンパス移転効果が志願者増に結びついた。2015年4月に開設する大阪茨木新キャンパスに、経営学部と政策科学部を移転する。特にびわこ・くさつキャンパスから移転する経営学部で、2014年度の志願者数が増加している。

 志願者を増やした大学がある一方、早稲田大学、明治大学、関西大学などで志願者数が減少したのも今年の特徴。これは、来年の2015年度センター入試から新課程入試に移行するため、浪人できないと思った層が、難関校を敬遠したためだと見られている。

 さて、Web出願や統一入試などの入試改革は志願者増にダイレクトに響くが、あくまで受験機会を増やしたことにより、「延べ志願者数」が増加しているだけ。入学者も同様に増加しているわけではない。仮に、一人が3学部併願すれば、志願者数は3人とカウントされるが、実際には1人しかいない。日本私立学校振興・共済事業団の調べでも、合格者のうち入学者を示す「歩留率」は年々低下の傾向にある(図表2)。特に18歳人口が5万人減少した2014年は歩留率がガクンと落ち、4割を切った。さらに規模別で見ると、大規模になるほど歩留率が悪く、3000人以上では33.9%と、合格者の3人に1人しか入学していない状況だ(図表3)。

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 なぜ大規模ほど歩留率が悪くなるのか。全学部統一入試は学内併願による受験機会の拡大が狙いなので、学部数の多い大規模大学ほど導入するメリットがある。地方入試も行うことのできる体力のある大学となるとなおさらだ。
 また、Web出願も検定料割引と学内併願割引をセットにするケースが多いので、さらに学内併願が増える。小誌180号の取材でも、志願者数が多い大学ほど、願書の印刷、発送、データ化等のコスト削減でスケールメリットが大きいので、大規模大学がWeb出願に積極的だった。さらに、Web出願の導入割合はどんどん増えている。2013年度入試においてWeb出願を導入している私立大学は、全国で1割強だったが、今年9月に旺文社が実施した調査では、Web出願を「2014年度以前から実施」している私立大学は18.1%、「2015年度からの導入を決定」は12.8%と、毎年約1割増しで増え続けている計算になる。2015年度には、私立大学の3分の1にまで普及する見込みだ。

 こうした入試改革のトレンドが、大規模大学への延べ志願者数の集中と歩留率の低下を起こしている。併願が増え歩留が読めなくなった大学は、合格者数を増やす傾向にある。図表1でも合格指数が増え、実質倍率も下がっていた。実際に、私立大学の合格者数を見ると、2012-2013年度で3万人増、2013-2014年度で5万人増となっている(図表4)。こうなると非効率は否めないが、18歳人口減で少ないパイを奪い合わなければならない大学の試行錯誤は続きそうだ。

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リクルート『カレッジマネジメント』編集部 能地泰代(2014/10/20)

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