【学部学科トレンド2012】志願者減の分野を改組する動きが活発に
本誌179号特集では、今後の学部・学科開発に関して参考となるよう、20年間の学科系統ごとのマーケット・トレンドをライフ・サイクル図に見立てて分析した。
→参考記事「学科のライフ・サイクルとマーケット・トレンド(全国国公私立大学)」
WEB特集企画の1月号では、近年の新増設・改組についての申請大学数、申請学科件数の推移について考察を行った。
ここでは、全国の2008年から2012年の志願者が増加した分野と志願者が減少した分野と、同時期に行われた首都圏と東海と関西地区において実際に設置された学部・学科改組の関連性について考察したい。
1. 2008年〜2012年 【全国】 志願者の増減分野トップ10(図表1 図表2)
2008年以降リーマンショックの景気影響を受け、社会科学系に代表される分野が大幅に志願者を減少させた反面、資格によって生涯就職を安定させたいというニーズが強く働いているため医療資格系、教員資格系などの分野が志願者を増加させてきた。
分野のライフ・サイクルと学部・学科改組は、表裏一体の関係にある。そこで以下では2008年から2012年に行われた改組を例に考察したい。
2. 2008年〜2012年 改組の事例考察
学部・学科改組ごとにその改組の特色を抽出してみると以下になった。
1. 志願者減少分野を志願者増加分野へ改組
商学部(商学科、会計ファイナンス学科) | → | 人間社会学部(人間スポーツ学科) |
現代ライフ学部(経営マネジメント学科) | → | 地域医療学部(医療スポーツ学科) |
経済学部(経済学科)、経営学部(経営学科) | → | スポーツ健康科学部(スポーツ健康学科) |
人文経営学部(国際経営学科) | → | リベラルアーツ学部(人間心理学科) |
経営情報学部(ファイナンス学科、ビジネス情報学科) | → | 情報社会学部(情報社会学科) |
国際学部(国際学科) | → | 国際学部(こども学科) |
文学部(英文学科) | → | 心理学部(教育発達学科) |
このように、志願者が減少している商学、経済学、法学、国際関係学などを、志願者が増加した 「医療技術学」「スポーツ学」「保育・児童学」「心理学」「社会学」などの分野へ改組する動きが実際に認められる。
2. より志願者が増加している分野へ改組
薬学部(医療薬学科) | → | 看護学部(看護学科) |
福祉総合学部(福祉総合学科) | → | 看護学部(看護学科) |
人間福祉学部(人間福祉学科) | → | 人間福祉学部(こども心理学科) |
現代福祉学部(現代福祉学科) | → | 現代福祉学部(臨床心理学科、福祉コミュニティー学科) |
人文学部(社会福祉学科) | → | 心理・福祉学部(社会福祉学科) |
総合福祉学部(社会福祉学科) | → | 総合福祉学部(教育福祉学科) |
文学部(総合人文学科) | → | 人間健康学部(人間健康学科) |
人間文化学部(文化学科) | → | 人間科学部(情報メディア学科) |
体育学部(体育学科) | → | スポーツ科学部(スポーツ教育学科) |
体育学部(健康科学科) | → | スポーツ科学部(スポーツ健康科学科) |
大幅に志願者が減じているわけではないが、大きな学部改編を加えずにより志願者増が見込める看護学、心理学、教育学、スポーツ+健康科学の分野への改組の動きがある。
3. 統合改組
さらに、志願者が減少した分野の学科を縮小し、統合することで効率化を目的とした改組や伝統的学部・学科名称への変更が進められている。
商学部(経営学科、流通学科、ファイナンス学科) | → | 商学部(商学科) |
経済学部(経済学科、経営学科) | → | 経済学部(経済経営学科) |
現代経営学部(現代経営学科、医療福祉マネジメント学科)、 人文学部(心理学科、社会文化学科) |
→ | 心理学部(現代応用心理学科) |
経済学部(知的財産学科)、 会計ファイナンス学部(会計ファイナンス学科)、 マーケティング学部(マーケティング学科) |
→ | 商学部(会計ファイナンス学科、マーケティング学科) |
文学部(英語英米文学科、日本語日本文学科、歴史学科、真宗学科、哲学科、仏教学科) | → | 文学部(臨床心理学科) |
情報文化学部(PR学科、情報メディア学科) | → | 情報メディア学部(情報メディア学科) |
人文学部(人間関係学科、国際文化学科、観光文化学科) | → | 学芸学部(英語学科) |
12/24のWEB限定月次特集でも取り上げたように、文部科学省は、来年4月以降、(1)看護師や理学療法士などの「保健衛生学関係」の目的養成分野と、(2)複数の学位の分野が含まれる「学際領域」について、届出設置制度を見直す方針を出すなど、学部・学科設置のさらなる厳格化を進めている。各大学は、より入口・出口ニーズの高い分野への転換を十二分に検討したうえで、学部・学科改編を行っていくことが必要とされるだろう。
寺裏誠司 リクルート進学総研 客員研究員 (2014/02/27)
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