【学部学科トレンド2012】大都市圏の学科のライフ・サイクル分析【関西版・前編】

 本誌179号特集では、今後の学部・学科開発に関して参考となるよう、20年間の学科系統ごとのマーケット・トレンドをライフ・サイクル図に見立て分析した。→参考記事「学科のライフ・サイクルとマーケット・トレンド(全国国公私立大学)」

 ここでは、関西エリア(大阪、京都、兵庫の2府1県とする)の大学の20年間の学科系統のライフ・サイクルについて分析を行いたい。

 関西エリアの大学の学科系統のライフ・サイクルを表したものが図表3-1から図表3-12bである。また、分野ごとの増減率の程度を比較参考とする目的で、志願倍率5倍ラインの補助線を破線で示した。

1 文化・地理・歴史系統(図表3-1、3-1a)

 歴史学(図表3-1)は、1996年から撤退期に入っていたが2004年から再成長予兆期に転じ、2008年から成長期になった。文化人類学(図表3-1)は、2000年から衰退期から再成長予兆期に転じたものの、2004年から大幅な撤退期となった。教養学(図表3-1)は、2004年から成長期に転じており志願倍率5倍のラインで成長している。地理学(図表3-1a)は、非公表の年度があり推移が見られないが、志願倍率は高い。考古学(図表3-1a)は、2004年まで成長・成熟期であったが、再成長予兆期に転じ、2008年に撤退期に転じ大幅に縮小した。日本文化学(図表3-1a)は、2000年には志願倍率5倍ラインを下回り2004年まで撤退期が継続しいったん成熟期に転じていたが、2008年に衰退期に転じた。言語学(図表3-1a)は、2008年に非公表の時期があるが、志願者の増減に留まっている。

図表3-1
図表3-1a

2 芸術・文学・表現系統(図表3-2、3-2a、3-2b)

 外国文学(図表3-2)は、1996年から一貫して撤退期であるが、2008年から志願者の減少が加速している。美術(図表3-2a)は、撤退期、衰退期を繰り返し、2000年に志願倍率5倍ラインを下回り2004年に少し成長期に転じたものの、2008年に再度撤退期に転じた。デザイン(図表3-2a)は、長らく衰退期を継続していたが、2004年に成長期に転じたものの2008年に再度衰退期に転じ志願倍率5倍ラインを下回った。日本文学(図表3-2a)は、2004年まで大幅な撤退期となっていたが、成長期に転じ志願倍率5倍ラインを超えている。音楽(図表3-2b)は1996年から衰退期となっており、2000年に再成長予兆期に入ったが、2004年以降は、撤退期を継続している。児童文学(図表3-2b)は、一貫して撤退期が継続し、2012年には、該当学科がなくなった。文芸学(図表3-2b)は、大きく変動し2004年に成長期に転じているが、2008年から再び撤退期となった。
図表3-2
図表3-2a
図表3-2b

3 数学・物理学・化学系統(図表3-3)

 数学は、2000年から撤退期に転じ志願倍率5倍ラインを下回った。2004年には再成長予兆期となり、2008年から成長期に転じた。物理学は、1996年から大きく成長期に入ったが、2000年から撤退、成長、再成長予兆期と大きな変化がなくなった。化学は2004年まで撤退期となっていたが、成長期に転じた後、2008年に再成長予兆期となった。
図表3-3

4 法律・政治・経済系統(図表3-4、3-4a)

 法学(図表3-4)は、2000年まで大幅に志願者を減じた後、再成長予兆期に入ったものの2004年から衰退期が継続している。経済学(図表3-4)は、2000年まで大幅に志願者を減じた後、撤退期に転じ2008年に衰退期に転じた。経営学(図表3-4)は、2000年まで大幅に志願者を減じた後、衰退期に入り、2004年から再成長予兆期に入ったものの2008年に衰退期に転じた。商学(図表3-4)は、2000年まで大幅に志願者を減じた後、衰退期に入り、2004年から成長期に入ったものの2008年に撤退期に転じた。政治・政策学(図表3-4a)は、2000年まで大幅に志願者を減じ、その後再成長予兆期に入ったものの2008年に衰退期に転じた。総合政策学(図表3-4a)は、成長期が継続し2008年から成熟期に入っている。
図表3-4
図表3-4a

5 家政・生活系統(図表3-5、3-5a)

 栄養・食物学(図表3-5)は、1996年、2004年に衰退期に転じているものの20年間で見ると成長している。服飾・被服学(図表3-5a)は、大幅に撤退してきたものの、2008年から成長期に転じているが志願倍率が低く予断を許さない。住居学(図表3-5a)は、非公表を含むため割愛する。生活科学(図表3-5a)は非公表の2000年を除くと、撤退期→衰退期→成長期→再成長予兆期とライフ・サイクルの逆回りの展開となっている。
図表3-5
図表3-5a

6 生物系統(図表3-6)

 生物学は、ライフ・サイクル通りの展開をしている中、2004年に成長期に転じたものの再度2008年から撤退期になっている。生命科学は、2000年から大幅に成長期となっており生物系統の分野で最大の募集定員・志願者数となった。農学は、1996年から2000年まで撤退期が継続していたが、2004年にいったん成長期へ転じた。しかし、2008年に募集定員が減ったこともあり、再び撤退期となった。森林科学・水産学および獣医・畜産学は、ほぼ一定の募集定員数を維持し志願者数の確保ができている。
図表3-6

 来月の関西版・後編では、社会・マスコミ系統以降の解説を行いたい。

  
   

寺裏誠司  リクルート進学総研 客員研究員 (2013/09/25)

  
   

【大都市圏の学科のライフ・サイクル分析 関西版】

・文化・地理・歴史系統(3-1、3-1a)
・芸術・文学・表現系統(3-2、3-2a、3-2b)
・数学・物理学・化学系統(3-3)
・法律・政治・経済系統(3-4、3-4a)
・家政・生活系統(3-5、3-5a)
・生物系統(3-6)
・社会・マスコミ系統(3-7、3-7a)
・人間・心理・教育・福祉系統(3-8)
・地球・環境・エネルギー系(3-9)
・国際・語学系統(3-10)
・スポーツ・健康・医療系統(3-11、3-11a、3-11b)
・工学・建築・技術系統(3-12、3-12a、3-12b)

→ライフ・サイクル図首都圏版を読む

→ライフ・サイクル図東海版を読む

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