編集長 小林浩コラム(巻頭言)

入学者選抜 改革はどこまで進んだか?(カレッジマネジメント Vol.207 Nov.-Dec.2017)

入学者選抜改革は教育改革
入学した学生の育成を同時に考えることが重要

入学者選抜改革は高校教育改革と連動

  2012年中央教育審議会に高大接続特別部会が設置され、高校教育、大学教育、大学入学者選抜の一体的な改革について、議論が始まった。あれから5年。今年の7月には、「大学入学共通テスト」実施方針が策定され、「平成33年度大学入学者選抜実施要項の見直しに係る予告」が決定された。そして、今年度中には高校の新学習指導要領が発表される。いよいよ高大接続改革が本格的に動き始めたと言えよう。

 そうしたなか、「大学入学者選抜の改革」について、現在どこまで進んでいるのか。その最新の動向をお伝えしようという思いで、今号の特集を企画した。では、そもそもなぜ入学者選抜を変えなければいけないのだろうか。2016年3月高大接続システム改革会議の最終報告には、その基本的な考え方として「大学入学者選抜が、『学力の3要素』の育成に向けて、高等学校における指導の在り方の本質的な改善を促し、また、大学教育との質的転換を大きく加速し、改革の好循環をもたらすものとなるよう、個別大学の入学者選抜と大学入学者選抜における共通テストの双方の在り方について改革を進める」と記されている。次の高校の学習指導要領の改訂では、「総合的な学習」「探究型の学習」「言語学習」が強化される予定である。つまり、細かい“重箱の隅をつつくようなこと”を受験のために覚えるのではなく、総合的・俯瞰的に物事を把握したうえで、探究的な学習(主体的で、対話的で、深い学び)を進め、そしてそれらを自分の言葉でまとめて説明できる、記述することができる生徒を育成しようとしているのである。

学力の3要素の何をどのように評価するか

 そのため、大学入学共通テストには、記述式が導入される。その一環として、使える英語力を育むために、「読む」「書く」「聞く」「話す」の4 技能を強化し、それを評価することができる民間の検定試験を「認定試験」として導入することが決定した(2023年までは大学入学共通テストと併用)。こうした状況を受けて、これまで国立大学では、全体の4割しか記述式の入試が導入されていなかったが、全ての国立大学の2次試験で記述式を導入するとの方針を国立大学協会が発表している。

 個別選抜も大きく変わる。こうした高校教育改革を受けて、大学入学者選抜は「AO入試(総合型選抜)・推薦入試(学校推薦型選抜)・一般入試(一般選抜)全ての入試区分で、各大学のアドミッション・ポリシーに基づき『学力の3要素』を問う入学者選抜に変えていく」ことになる。今回公表された実施要項は、2021年(平成33年度)、つまりオリンピックが終わった年、現在の中学3年生が対象となる入学者選抜である。しかし、すでに個別選抜は大きく動き始めている。カレッジマネジメント197号の特集「相互選択型の入学者選抜」で、大学が理念や求める人材像(メッセージ)を示し、学生が呼応するマッチング型の入学者選抜の導入について、その動向をお伝えしたが、今回はさらに取り組みが進んでいることが確認できた。学力の3要素のうち、その評価が課題となっている主体的に学ぶ力の測定についても、政府の後押しを受け、徐々にではあるが確実にその研究が進められつつある。

3つのポリシーを具現化するAPになっているか

 重要なのは、新しい入試を導入することではなく、卒業認定・学位授与方針(DP)、教育課程編成・実施方針(CP)、入学者受け入れ方針(AP)の3つの方針を具現化した形での入学者選抜となっているかである。そのためには、入学した学生が、入学後にどのように成長しているかの検証とセットとなっている必要がある。それを実現しようとするために、大学全体ではなく、まず一部から始めて、その成果を検証しながら、徐々に広げていっている大学が多い。京都大学の特色入試は、2016年100名で始まったが、検証しながら2018年度入試では155名まで広がった。九州大学の21世紀型プログラムは、26名の学部横断型プログラムであったが、その実績をもとに2018年度に共創学部としてより発展した形で生まれ変わる。上智大学も4技能入試を導入しただけでなく、TEAP型入試で入学した学生について、入学後の成長を他の入試分の学生と比較検証しているところが重要なポイントである。

入学者選抜改革は教育改革

 それを実現するためには、まずDPについて育成する人材像や身につけるべき資質・能力について学内で摺り合わせができていないといけない。そこから、CPを編成する。その上で、どのような学生に入学してきて欲しいのか、入学した後の教育に入っていくためにはどのような準備が必要なのか、それをどのような方法で評価するのかをAPに表現しなければならない(図)。これは入試センターだけでできることではなく、全学的な議論が必要になってくる。そして、文部科学省もAPについて「大学関係者だけでなく、高校教員、保護者、受験生といったステークホルダーにも理解しやすい文章表現であること」が重要であると記している。重要なのは、入学者選抜を変えるということは、入学後の教育、そしてどのような学修成果を実現するかといった卒業までを見据えた一貫した教育マネジメントが求められるのだ、ということを強く意識することではないだろうか。

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リクルート進学総研所長・カレッジマネジメント編集長

小林 浩

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