データで見る 高校生の今[7]大学進学のメリットは約10年間でどう変わった?
「やりたいこと重視」の強まりと就職への強い期待
第7回「データで見る高校生の今」では、リクルート進学総研が高校生の進路選択プロセスを明らかにするための調査『進学センサス』を実施している。今回は『進学センサス』の調査結果から「大学に進学することのメリット」について2011年から2022年までの5回分の調査を比較し分析していくと、以下の2つの特徴が読み取れる。
1.自己実現に対する価値観の変化
2022年はコロナ影響で各項目の割合が低下しているが、「自分の目指す仕事・職種に就ける」や「自分のやりたい専門分野の勉強に集中できる」が大幅にランクアップしており、相対的に見て高まっていることが分かる。これは以前にも本コラムで紹介したように、高校生の価値観が「やりたいこと」重視に変わりつつあることが背景にあると推察される。
2.卒業後の就職先に対する強い期待
2019年までは「将来の選択肢が広がる」が1位だったが、2022年は「少なくともどこかに就職できる可能性が高くなる」が1位となり、同時に「有名企業や大手企業に就職できる可能性が高くなる」もランクを上げている。これは特に2011年の上位のラインアップと比べると顕著で、高校生の意識が“大学生活を楽しむ”よりも“確実性高く就職する”ことに移っていることが分かる。これは同年にリクルート進学総研が実施した『高校生価値意識調査』の質問「社会の将来は明るいと思うか?」に対し「明るい」「やや明るい」が53.2%から50.9%に微減していることや、2022年がコロナ禍という特殊事情を考慮しても、将来に対して不安を抱える高校生が増えている様子が窺える。
2024年現在、大卒就職は売り手市場となっている。学生の興味関心は2022年調査時の“確実性高く就職する”ことよりも、“どこに就職できるか”、“仕事を通して何ができるか”に移っていると考えられる。近年は「配属ガチャ」というワードも生まれ、せっかく就職しても直ぐに辞めてしまう若者も増えている。大学には将来の仕事を具体的にイメージでき、学生の幅広いキャリアパスをサポートできるようなプログラム等への期待が高まりそうだ。
(文/岡田 恵理子)