高等教育の最新事情

<寄稿>全国学生調査について








文部科学省 高等教育局
高等教育企画課 高等教育政策室


1. 検討の背景

 令和元年11月7日、同年11月25日~12月20日に実施する令和元年度「全国学生調査(試行実施)」を発表し、現在まさに調査実施中だが、本稿では、この「全国学生調査」の概要や今後の展望について紹介したい。

 まず、検討の背景については、平成30年11月に取りまとめられた中央教育審議会答申「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン」が出発点となっている。

 同答申は、社会経済の大きな変化の中で、高等教育機関が求められる役割を真に果たすことができるよう、これからの時代の高等教育の将来構想に関する総合的な検討結果を示しており、予測不可能な時代に必要とされる人材を育成するためには、「学修者本位の教育への転換」、つまり、「『何を教えたか』から『何を学び、身につけることができたのか』への転換」が必要であると説いている。

 この「学修者本位の教育への転換」を軸として、同答申では数々の提言がなされているが、学生調査の実施については「Ⅲ.教育の質の保証と情報公表-「学び」の質保証の再構築-」において、以下の通り記述されている。大学教育の質の保証については、多くの改善の努力が進められているが、大学全体として十分な信頼が得られているとは言い難いと指摘しており、積極的に説明責任を果たしていくという観点から、大学による取り組みに加えて、国による全国的な調査の実施が求められている。

Ⅲ.教育の質の保証と情報公表-「学び」の質保証の再構築-
(大学が行う「教育の質の保証」と「情報公表」)

(中略)各大学が地域社会や産業界等の大学の外部からの声や期待を意識し、積極的に説明責任を果たしていくという観点からも大学全体の教育成果や教学に係る取組状況等の大学教育の質に関する情報を把握・公表していくことが重要である。(中略)また、社会が理解しやすいよう、国は、全国的な学生調査や大学調査を通じて整理し、比較できるよう一覧化して公表すべきである

(参考)「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン(答申)」(平成30年11月26日中央教育審議会)【文部科学省ホームページ】
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/1411360.htm

2. 第1回試行実施(令和元年度)の概要

 答申を受けて、文部科学省において具体的な制度設計の検討を開始した。高等教育局長の下に、国内外の学生調査の実態に知見のある有識者を委員とした会議体を設け、具体的な調査目的、対象学年、実施方法、質問項目、結果の取り扱いなどについて意見交換会を行い、制度設計案を検討した。

 制度設計案の検討後、中央教育審議会大学分科会教学マネジメント特別委員会への報告・意見交換を経て、全大学に対して第1回試行実施への参加意向を確認する調査を実施するとともに、大学や関係団体から寄せられた意見は真摯に受け止め、可能な限り反映できるよう検討したところである。

 なお、質問項目の策定に当たっては、実際に学生が回答できる内容になっているかどうかを確認するため、全国大学生活協同組合連合会学生委員会にご協力頂き、学生にコメントをもらう等のサンプル調査を実施している。ご協力頂いた学生の皆さんにはこの場をお借りして、御礼を申し上げたい。

 最終的に、現在実施している第1回試行実施の概要は以下の通りだが、今後、本格実施に向けて調査結果の評価・検証を行うことにしており、国・大学双方において、結果を評価・検証するためにも、参加大学の協力と、より多くの学生からの回答を期待したい。

第1回試行実施(令和元年度)の概要

(1)調査目的

 学修者本位の教育への転換を目指す取り組みの一環として、学生の学びの実態を把握することにより、①各大学の教育改善に活かすこと、②わが国の大学に対する社会の理解を深める一助とすること、③今後の国における政策立案に際しての基礎資料として活用すること、を目的とする「全国学生調査」の本格実施に向けて、適切な調査方法や設問項目等を整理・検証する。

(2)調査対象

 「全国学生調査(試行実施)」に協力する515大学に在籍する全ての3年生(約41万人)
 ※標準修業年限が5年及び6年の場合は4年生。
 ※短期大学(短期大学部を含む)及び通信教育課程に在籍する学生は対象外。
 ※764大学に対して意向等を確認した結果、67.4%の大学から参加意向の回答。

(参考)令和元年度「全国学生調査(試行実施)」参加大学リスト【文部科学省ホームページ】
http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/chousa/__icsFiles/afieldfile/2019/11/07/1422343_1.pdf

(3)調査方法

 インターネット(WEB)調査

(4)質問項目

※クリックで画像拡大

(5)調査結果の取り扱い

 ①文部科学省

 全体の調査集計・分析結果や調査実施上の課題点等を文部科学省及び国立教育政策研究所のホームページで公表する。参加大学に対して、当該大学に在籍する学生の回答結果を一覧化したもの及びその集計結果を公表前に提供する(調査項目 問7は除く。)。このほか、集計結果をベンチマーキングに活用するための分析資料の提供を検討する。

※今般の試行実施においては、全体の集計結果として、有効回答者数・有効回答率のほか、調査項目ごとの回答割合・平均値を公表するが(調査項目 問6及び問7は除く。)、学生の回答結果を一覧化したもの及び参加大学・学部ごとの集計結果の公表は行わない。

 ②参加大学

 対象学生を含め自大学内において、調査結果の共有を図るとともに、自大学の教育改善に活かすよう、努めるものとする。試行実施の目的に鑑み、文部科学省から提供を受けた自大学に在籍する学生の回答結果を一覧化したもの及びその集計結果については、原則当該大学内の活用にとどめ、公表は行わない。

(参考)「全国学生調査」について【文部科学省ホームページ】
http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/chousa/1421136.htm

3.今後の展望

 第1回試行実施は、年明けから学生の回答結果の集計を行い、令和2年4月以降、調査実施上の課題等とともに、全体の集計・分析結果を公表する予定である。その結果は、第2回試行実施(令和2年度実施予定)、そして、その先にある本格実施の制度設計に活かしていきたいと考えている。

 本格実施では、調査結果を大学・学部ごとに公表することを念頭に置いているが、対象学年は3年のままで良いのか、質問項目に過不足はないか、公表基準は適切か、より多くの大学が参加しやすい仕組みはないか等、第1回試行実施を踏まえて様々な検討を行っていく必要がある。

 「2040年の高等教育のグランドデザイン」に謳われている「学修者本位の教育への転換」を目指して、全国学生調査の制度設計はまだ始まったばかりであり、意見・要望がある場合には以下の担当宛に連絡頂きたい。

【本件担当】
文部科学省 高等教育局 高等教育企画課
高等教育政策室 企画審議係
 TEL:03-5253-4111(代表)(内線:3332)
 E-mail:koutou01@mext.go.jp
※メールで連絡頂く際には、氏名(団体の場合は団体名)・所属・連絡先(返信先)の記載をお願いします。

(2019/12/10掲載)