フルオンラインだからこそ実現する豊かな学修体験が 若者ニーズに合致/サイバー大学

サイバー大学 学長 川原 洋 氏

 移動に囚われない学び方の一つである通信制大学。通信制高校の活況を見てもその可能性は極めて大きい。近年10代の入学者数を大きく伸ばしているサイバー大学の川原 洋学長に、その要因や現状について伺った。

4年間で24歳以下の入学者が1.9倍に

 サイバー大学は、2007年4月に開学した株式会社立の通信制大学である。IT総合学部IT総合学科の1学部1学科から成り、IT活用力、ビジネス応用力、コミュニケーション力を身につけた高度IT人材の育成を教育目標に、テクノロジーとビジネスの両面を学べることを基本コンセプトとしている。学生の履修登録や日々の受講、試験、成績確認等は全て、同大学が独自に開発したeラーニングプラットフォーム「Cloud Campus」にて行い、通学不要、授業は全てオンデマンド形式のフルオンラインの学修環境を提供している。


Cloud Campus画面

 開学以来社会人が学びやすい環境を整備してきたが、近年は10~20代前半の入学者が増加。24歳以下の入学者数は、2018年度の463人から2022年度は863人に増加し、在学生に占める10代の割合は2023年11月時点で17.0%と、2021年の11.2%と比べても増加傾向だ。

 背景として、川原氏は志願者本人とその保護者の変化を挙げる。「オンラインで大学に進学することへの精神的な障害がなくなりつつあると感じます。保護者の方々も、『子どもが望むなら通信制もありだな』という気持ちで積極的に支援されていることが窺えます」(川原氏)。かつては通信制高校出身者が多かったが、今では通学制高校出身者も増え、2022年度の24歳以下の入学者においては、通学制出身者が通信制出身者を上回っているという。

 職務経験のない高校新卒者の入学増に伴い、2021年にはキャリアサポートセンターを設置し、就職・キャリア支援の体制を整えた。また、高校訪問や学校単位での説明会の実施等、24歳以下への訴求を目的とした広報を強化している。志願者には、「大学の学修と並行して趣味やボランティア活動に打ち込みたい等、時間を有効に使って自分の人生を豊かにしたいと考える人が多い」と川原氏は話す。働きながら学びやすい社会人向けの仕組みが、やりたいことをやりながら学びたい若者のニーズにフィットしたと言えそうだ。

専門学修と学びの継続を強化する
マイクロクレデンシャル制を導入

 通信制で学ぶ場合、期日までに受講を進めていく自律性が求められるが、同大学では2学期目履修継続率において91.1%(※)という高い水準を実現している。その要因の一つが、Cloud Campusの受講進捗機能だ。ログインする度に直近で受講すべき科目や提出課題の期限等が表示されるという。さらに、履修が滞っている学生に対しては、メールや電話等で手厚く支援を行っている。

 2024年4月からは、従来の学位プログラムを維持しながら、複数の科目を専門分野ごとの難易度別にグループ化し(以下「クラスター」)、それらの科目全てに合格して身につけた学修成果をマイクロクレデンシャル(学習内容をより細分化した単位ごとの履修証明)として認定する制度を導入。取得したマイクロクレデンシャルごとに、その知識・スキルをデジタルで証明する「オープンバッジ」の発行も行っている。

 制度導入の狙いとして川原氏が挙げたのは、専門学修の強化と、高度IT人材であるために必要な学びの継続である。従来は、選択必修ないし選択科目が多く、卒業研究の前提となる科目を未履修のままゼミに入る学生がいる等、能力のばらつきが課題であった。それを、卒業研究を最上位のプラチナバッジとし、卒業研究を行うために必修となるクラスターと履修のステップをブロンズ、シルバー、ゴールドバッジという形で明確に体系化したことで、フェーズに応じた学生の能力が揃うようになり、指導しやすくなったという。また、IT技術の日進月歩の進化に伴い学ぶべきことが増えている現状において、卒業後に科目等履修生として再入学し未取得や更新されたオープンバッジを取得すること等も想定している。

 カリキュラム体系も、「メインテーマとして『AI』のプラチナバッジを目指し、サブテーマとして『経営』のゴールドバッジを目指す」文理二刀流型。あるいは「『ソフトウェア』のプラチナバッジを目指しながら、テクノロジー系の他のゴールドバッジを卒業までに全て取得する」テクノロジーマスター型、というように学生の多様な関心や卒業後のキャリアの多様性に対応できるよう設計している。あたかも主専攻・副専攻で学びを設計するリベラルアーツ・カレッジのようだ。「多様な個に応じたカリキュラムを構築できる仕組みで、かつ修得能力が可視化されます。そして、ITを軸足に複数分野にブリッジを架けることができる人材は、企業にとっても極めて貴重です」と川原氏は述べる。


オープンバッジの効果、オープンバッジマップ

今後強化するのは企業法人における人材育成

 「われわれは『デジタルでどのような学修体験ができるか』を常に追求し、自分達で教育システムを作ってきました。エンジニアとして必要な知識や、それを応用するビジネスパーソンとして必要なスキルを議論し、カリキュラムに乗せ、常に更新しています」と話す川原氏。実務家教員が多数を占め、企業目線で大学と企業との接続を考えた学修内容を突き詰める強みを発揮しながら、次に取り組むのは「企業法人における人材育成」だ。

 「様々な企業がDX人材の育成に悩んでいます。大学として、また、二百数十社を超える企業にもCloud Campusやコンテンツを提供する事業者として、次はそこが大きなマーケットではないかと思っています」と川原氏。「単なるコンテンツ提供ではなく、現場の方々のITスキルをどのようにアセスメントし、その結果をもとにどのようにリスキリングすればより実務的な高度専門人材として育成できるのか、企業と共に分析し実践していきたい」とさらなる進化を見据えている。

(文/浅田夕香)


  • 2021年度秋学期~2023年度春学期の4学期に入学した学生のうち、翌学期も履修継続した学生の割合



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